へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜「絵本『天女かあさん』の子育て」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「絵本『天女かあさん』(ブロンズ新社)の子育て」をテーマにお送りします。

 
夏休みが終わり、子どもたちにも日常が戻ってきましたね。
まだまだ残暑が厳しい日が続きますが、元気に乗り切っていきましょう!早く涼しくなってくれることを願って…。
さて、今回ピックアップした絵本は『天女かあさん』。作者のペク・ヒナさんは、登場するものを粘土細工で作成してそれを動かしながら撮影し、納得いかなければ何度でも撮り直し、気の遠くなるような作業を繰り返しながら絵本を完成させます。本当にすごいなあと思いますし、韓国の生活感あふれる様子が細部に表れていて親近感を覚えます。
あらすじはこんな感じです。

 
ある日仕事場に息子のホホが「熱が出た」という知らせが入ります。お母さんはまだ仕事から帰れないので、だれかにホホをお願いしたいのですがどこにかけても電話がつながりません。やっと電話がつながりホホを頼むことができたのですが…じつはその電話の相手は天女。天女さんは本当の「おかあさん」のようにホホを看病し、ホホは安心して心を委ねるのです。(関西弁なのでびっくりするくらい笑えます)
 
私がこの絵本を見て色々と想像するに、ホホとおかあさんは二人暮らし。きっと何かの時に頼れる親族はホホのおばあちゃんくらいなのでしょう。ホホのおかあさんはフルタイムで仕事をして生計を立てています。子どもが熱を出してもすぐには帰ることができないお仕事です。
絵本の中だけのことではなく、ホホの家のような家庭環境はよくあることだと思います。お母さんもホホもたくましく生きている、そんな背景が私には見えました。
私が仕事をしてきた環境はありがたいことにどの職場も子どものことに寛容で、子どもの調子が悪いとすぐに「帰ってあげて」と言っていただける上司ばかりでしたので、本当に助かっていました。保育園や幼稚園、家庭でわが子が熱を出していると聞いたとたんに、親ならだれでも不安になると思うのです。
 
困っているときに、天女かあさんのように愛情を持って看病をしてくれる人が近くにいたら…喉から手が出るほどほしいですし、どんなに心強いことでしょう。体に優しい食事を作ってくれ、部屋の湿度まで管理して温かい寝どこまで用意してくれる。本当なら自分がしてあげたいですよね。体調の悪い子どものことを1人残して仕事をしなければいけないことが、お母さんにとってどんなに不安で辛くて「ごめんね」と感じていることか。

でも、誰かに頼ることって必要なことなのではないでしょうか。頼ったとしても、「お母さんは自分のことを心配してくれている」と、子どもはきっと気づいています。そうゆうことを経験しながら、親と子は気持ちを通い合わせていくのです。
 
私の中の天女かあさんは、誰だったかな…書きながらふと思いました。きっと自分の両親だったと思います。自分の信頼できる天女かあさんをみつけて、目の前の心配事を乗り越えていっていただきたい!
子どもはあっという間に成長します。
私の子どもは遠くでひとり暮らしをしていますが、体調が悪くなってももう親に泣きついてくることもなく、お知らせだけしてきます(熱が出たよーって)。成長したな―とつくづく感じるのは、消化のいいものを食べたり、水分をたくさんとったり、ちゃんと容量を守って薬を飲んだりしているから。いつの間にかちゃんとできるようになるんですね。でもそれは、誰かに愛情深くそうしてもらっていたから。子どもは、大人の愛情や心配やおせっかいな気持ちをもらってちゃんと成長していくのです。
私の子どもたちにも「天女かあさん」がいてくれたのかもしれませんね。
 
仕事を持つお母さんは、本当に忙しい。笑っちゃうくらい毎日のように子どもっていろんなことが起こるのです。子育ては、周りの人を巻き込んで頼りましょう!親子で笑っている時間がどんどん増えていくように、応援しています。


【今月のおすすめ絵本】
『天女かあさん』ペク・ヒナ 長谷川義史 訳/ブロンズ新社
同作者の絵本『天女銭湯』もおすすめ!
 
 
[読み方アドバイス]
関西弁で楽しく読んであげてください!粘土細工の不思議な絵の感じに引きつけられるので、天女のシリーズは3、4歳から見れます。韓国の絵本作家ペク・ヒナさんの絵本は、どの作品も子育てにおいて「わかる、わかる」と感じる場面があったり、心にストンと落ちてくるような大切なことを教えてくれたりします。子どもを思う親の気持ちは世界共通ですね。

 
 


 
宮本 陽子(みやもと ようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 

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