へいじつのよみきかせ「贈りたい絵本」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は、「贈りたい絵本」をテーマにお送りします。
 
朝晩が涼しくなり、すっかり秋の気配が感じられるようになりました。秋は、子どもと一緒にたくさんの自然を楽しむことができる季節です。虫の音やどんぐり拾い、紅葉。そして雲があります。ぜひ子どもと一緒に空を見上げてみてください。夏のもくもくとした入道雲とはちがって、流れるような雲が秋の空を高く感じさせてくれます。秋の空はとてもきれいで私は大好きです。
さて、そんな「雲を」テーマにした絵本『リジ―と雲』を「贈りたい絵本」に選んでみました。
 
みなさんが、子育てが終わった!と感じるのはいつでしょうか。
子どものことを考えた栄養満点の食事作り、毎日宿題を確認し、習い事の送り迎え、それとなく学校での様子を聞いて安心し、健やかな成長をいつも願っていた日々。子どもはいつの間にか自分のことは自分でできるようになり、成長とともに親の手は少しずついらなくなります。悪く言えば投資をする手助けのみとなっていくのです。(目は離さないで見ていてあげましょうね)
私の子どもは2人とも大学生になり、県外で一人暮らしをしています。始めたばかりの頃は見えないことの不安に押し潰されそうでたくさん心配しましたが、今では2人にたくましさと尊敬さえ覚えています。まだまだお金はかかりますが、今私は「子育てはほぼ終わった!」と感じています。
来年就職する息子へ、そして成人式を迎える娘へ、絵本をプレゼントしたいと計画しています。なぜ、絵本なのか。それは、子どもたちにとって「母がたずさわってきたもの」だから。そして、「絵本」というものを子どもの頃とは違った感性で見てほしいと思ったからです。
 
絵本『リジーと雲』はこんなお話。
ある日、まるで風船のようにいろいろな形の雲が公園に売られているのを見つけます。リジーはある1つの雲が気にいって、買ってもらい大事に育てるのです。その雲には取扱説明書がついていて、いろいろとお世話をしなければいけません。リジ―は雲に名前を付け、毎日丁寧に育てます。そしてどんどん大きくなっていく雲をついに手放す時がくるのですが…
 
産まれたときからずっと一緒にいたわが子は、いつか親の元を離れ、独り立ちする日が来ます。寂しいし心配だし、ずっと私のそばにいてほしい。愛情をいっぱい注いで大切に育ててきた子どもなのだから、そう感じるのは当然です。しかし愛情いっぱいに育ててきたからこそ子どもを信頼し、自信を持って自分の元から手放すことができるのではないでしょうか。そしてリジーが大切に育てた雲のように、楽しい思い出のある場所へたまに戻ってきてくれたら、これほど嬉しいことはないですね。
 
私は、以前コラムでもお伝えしたように子育てに終わりはないと思っています。何歳になってもわが子はわが子のままです。普段からどこにいても気にかけているし、いつも思っています。忘れることはありません。この絵本を開いた時、わが子はどんなふうに感じてくれるのでしょうか。今から楽しみでしかたありません。
 
親と子フロアでは、「いつか、あなたに贈りたい本」をテーマにしたコーナーがあります。大切なひとへ、両親へ、いつか独り立ちする子どもへ、そして自分へ。みなさんも、大切な誰かに贈る絵本を選んでみませんか?
 
また『リジーと雲』は、「絵本のつなぎて」ふわはねさんが、8月に広島 蔦屋書店で開催しましたトークイベントにお越しいただいたときに「今年出会った絵本の中で1番です!」とおっしゃっていた絵本です。
ぜひ、読んでみてもらえると嬉しいです。
 

【今月のおすすめ絵本】
『リジーと雲』
テリー・ファン&エリック・ファン 作 / 増子久美 訳 / 化学同人

 
【あらすじ】
ある日、まるで風船のようないろいろな形の雲が公園に売っていました。リジーはある1つの雲が気にいって買ってもらうと、大事に育てます。その雲には取扱説明書がついていて、いろいろお世話をしなければいけません。リジ―は雲に名前を付け、毎日丁寧に育てます。そしてどんどん大きくなっていく雲をついに手放す時がくるのですが…
小学校低学年~大人
 
【贈りたい絵本】
贈りたい思いは相手にきちんと伝わります。それはその絵本が、選んだ人の思いをのせて運んでくれるから。言葉ではなかなか伝えられないことってありますよね。ぜひ絵本の力を借りて、思いを伝えてみませんか。

 
 
 
【プロフィール】
宮本陽子(みやもとようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 
 

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