へいじつのよみきかせ「自分の体は自分で守る」

 
あっという間に梅雨が明け、いよいよ夏本番です。
今、日本の夏は危険な季節。日中はできるだけ戸外に出ないことや水分と塩分の補給など、子どもたちにとって楽しい夏の遊びは、安全対策が必須ですね。日焼けも、今や子どものお肌にも大敵ですから。
そう、日常が変わってきました。
環境、生活、年齢、場所。変化に応じて対応していく順応性を私たちは持っていないといけないのかもしれません。その中で、変わらないものを「変わらず大切にする心」も忘れずに持っていたいなと思います。涼しい場所を探して、楽しい夏を過ごしましょう。
 
今回のテーマは、「自分の体は自分で守る」。
以前保育園で仕事をしていたころに出会った、園長先生の言葉です。保育士は、子どもが保育園にいる間、保護者に代わって子どもを療育し安全に安心して、過ごせる環境を整えることが基本といえると思います。この園長先生の言葉はそれに反している言葉のように聞こえますが、そうではないのです。
 
0歳児~2歳児のいわゆる3歳未満児の子どもたちは、自分の足で歩き始めたばかりで興味関心が先にたち、ここは危ないだろうなんて考えることはできません。私たち大人が危険なものを排除し安全対策をすることが大前提です。その中で、小さな子どもはどうやって「自分で自分の体を守る」のでしょうか。正解は「大人に伝える」です。言葉が話せるようになった子どもは「痛い」「熱い」「かゆい」ことを大人に伝えることができますね。0歳の子どもは「泣く」ことができます。大人は、子どもからの発信に気づき、しっかり受け止めることが大切です。
4、5歳になると安全についての意識を持ちはじめ危機管理能力が発達してきます。
予測ができるようになってきますので、「ここに入ったらダメって書いてあるから、入らない」「先生が危ないって教えてくれたから、しない」「ここでケガをしたお友達がいるから、危ない」と自分で判断できることも増えてきます。とはいえ、子どもはいつも好奇心でいっぱいですからヒヤッとすることも当然ありますね。子どもが安全に過ごせるように大人が先回りして子どもの前から危険なものを取り除くことは大事なこと。しかしそれだけでは、いつか限界がきます。「ここは危ない」「そっちに行っちゃだめ」と言葉で伝えるだけで、子どもは危険なことを本当に理解することができるのでしょうか。
ですから、「自分の体は自分で守る」ことを教えることは、とても有効だと思うのです。
それは大人が放任しているということではありません。大人はもちろん今まで通り、安全対策が必要ですし、一緒にいる時は子どもの行動をしっかり見ていることが大切です。
子どもが自分でできることは、たくさんあります。
 
・危険だと思うことはしない
・ケガをしたら、すぐに周りの大人や友達に伝える(隠さない)
・暴力をふるわれそうになったら、「やめて」と言うことで自分の体を守る
・知らない人についていかない
 
ここにあげたものは、ほんの一例ですが、どれも自分を守ることにつながります。それでも、子どもにケガは付きもの。大人は、子どもが何をしていてケガに繋がったのかを説明できるようにしましょう。スマホを見ていて、わが子がどんなふうにケガをしたのか見ていないというのは、一番残念です。たまに、病院が怖いからケガをしても言わない子どもがいます(うちの子もそうでした)。忙しい毎日の中で、子どもの異変に気づけないことは多々あります。自分を責めるのではなく、今日から子どもと一緒に、「自分の体は、自分で守る」と言ってみること、「ケガをしたら言ってね」とぜひ伝えてください。
 
安全に楽しく過ごすために、子どもたちにもぜひ協力してもらいましょう。
 
 

【今月のおすすめ絵本】
『じぶんだけのいろ』
レオ=レオニ 谷川俊太郎 訳
 / 好学社
 
 
【読み方アドバイス】
自分の色を持ちたいカメレオンは、「いつも緑の葉っぱの上にいればずっと緑色でいられる」と考えます。でも、季節の変化とともに葉っぱの色は次から次へと変わっていき…。敵から身を守り、同じ思いを共有する仲間と「二人で一緒にいること」の心強さを知ったカメレオンのお話。
5歳~
 
 
【プロフィール】
宮本陽子(みやもとようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 

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