へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜「イライラ育児どうする?」

Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「イライラ育児どうする?」をテーマにお送りします。
 
「子どもに対してイライラする」
これは、育児の悩みは何ですか?という質問の中でいつも上位を占める回答の1つです。
子どもに対してみなさんはどんなイライラを抱えていますか?よくあるイライラの場面の意識を少し変えてみることで、子育てをする親御さんが少しでもラクになれたらいいなと願いながら書いてみます。
アドバイスというよりも、「子どもってこんなふうに思ってやってるのね」ということを知ることができればイライラを半減できるんじゃないかなと思うのです。
 
 
○子どもが言うことを聞かない
 
仕事や家事で忙しく、時間がないのに子どもが言うことを聞かない…
そんなイライラが一番多いのではないのでしょうか。
子どもってとても賢いですよ。大人が暇そうにしていると、全然寄ってこないんです。
大人が忙しくバタバタしているときに限って、遊んでほしがったり、「なんで今言うん?」みたいなお願いをしたり、グズグズ言ったりするんです。思い当たる節はありませんか?
そういう場面は、疲れているとなおさらイライラしますね。
子どもは、大人が自分のほうを向いていないことをわかっています。いつも自分のことを見ていてほしいんです。なんて可愛いんですかね!しかしそうはいかないのも現実。
子育てに「合理的」という言葉は存在しません。
忙しい時に限ってグズグズいう、片づけたと思ったらすぐに散らかす、こぼしたと思って拭いたらまたすぐこぼす…
子どもは、同じことを何度も繰り返しながら成長していきます。なぜだかわかりますか?
生きていくための「練習」だからです。子どもはいつも課題をクリアしながら発達を繰り返し、成長していきます。だから「またそんなことする!やめてって言ったでしょ!」というのは子どもには通用しません。これをすると怒られるということを習得するまでにも繰り返しの経験が必要になります。ましてや、同じシチュエーションなんて大人の世界でもなかなか経験できることではありませんから、その都度子どもたちにとっては「初めて」に近い感覚といっていいでしょう。
同じことを繰り返していると思っているのは、大人だけなのかもしれませんね。
子どもは大人の思い通りになんて動いてはくれないのです。
 
 
〇子どもに対して「してあげたい」と思っているのに、時間がなくて育児ができなかった
 
こんなふうに感じてしまう人は、とても誠実に子どもと向き合っている人。してあげられなかった自分にイライラしてしまうんですね。私もどっちかっていうとそんな感じでした。
保育士だったこともあり子育ての知識は豊富でしたから、自分の思いが強く子どもに接している自分のやり方が正解だと考えていました。子どももそれを喜んでくれているとも感じていました。私は子どものためにこれをやっているんだと。子どものために頑張る自分
に自惚れていたなあと、今になってみると少しだけそう思います。
しかし、子育てをするのは自分ひとりではありません。パートナーやおじいちゃんおばあちゃんに託すことがあってもいいのです。それは、ダメな自分ではないんですよ?自分の「こうしたい」「こうするべき」という思いを少し封印してみてはどうでしょう?「今日はラクをして、代わりに子どもと一緒にたくさんあそぼう」「今日できなかったから、明日すればいいじゃん」そんな感じで自分を解き放つことも大事です!いつも自分が作っているご飯を、例えば他の人に作ってもらうとするとそれは少し違った味付けや形状になったりしますね。それを食べることは、子どもにとって1つの経験なのです。子どもが経験を増やしていくことは嬉しいことですね!そう考えると、「常に自分が」と気を張らなくても大丈夫な気がしませんか?
 
 
〇家族が非協力的または過干渉
 
1人で育児をするのは、大変です。それは誰の目にも明らかなので、すすんでヘルプをしましょう。パートナー、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟姉妹、保育園、ママ友など。
助けを求めることは、子育てができていないということではありません。子どもに対してイライラしないで向き合うためのヘルプなのです。だから、たくさんのヘルプをしてください。
ここで大切なのは、「自分の手伝ってほしいことは何なのかを伝える」ということ。非協力的な人であっても「これをしてほしい」ということがはっきり分かれば、それをしてくれるかもしれません。イライラする前にぜひ伝えてみてほしいと思います。イライラして爆発してしまってからでは、冷静に言葉を選べませんし、相手も怒られているように感じてしまい向き合ってもらえなくなります。女の人ってやはり我慢強いと思います。しかし我慢の限界を迎えた爆発する女の人のことを、苦手な男の人がたくさんいるのも現実。
そしてこれを伝えないでいると、おじいちゃんやおばあちゃんなんかは過干渉になってしまい、親御さんが逆にストレスを感じてしまうことになりかねませんね。
ヘルプはすべてを相手に任せてしまうことではありません。自分の子育て観をしっかり持ち、自分でしたいことはしていいのです。
あくまで、子どもに対してイライラしないで接するための手段です。そう思えば、少しだけラクになってきませんか?
 
 
〇自分1人の時間がほしい
 
普段ワンオペ育児をしている親御さんは、たまには1人の自由な時間がほしいなと思いますよね。それがたとえ限られた時間でも、日ごろの雑踏を忘れ1人で好きな時間をゆっくり過ごす。リフレッシュされて、また子育てを頑張ろうと元気になれそうですね!
でも1つ気をつけてほしいことは、子育てをしているという自覚を忘れないでいてほしいということ。「子どもと一緒にはできないことをする時間」という意識は必要です。
私にも経験がありますが、意識しないで自由な時間を過ごしていると次もこんな時間がほしいなと思ってしまいます。今度はそれが、「絶対にほしい時間」になってくるのです。そうなると、常に自分だけの時間を求めるようにしまって、子どもといる時間がだんだんしんどくなっていきました。
今思うと、それは違うんですね。よっぽどのことがない限り親は子どもとの時間の上に自分の時間が成り立つのです。それは母親も父親も同じです。子どもを後回しに考えることは、子どもを尊重できていないのと同じです。
子育てから離れて自分の自由な時間ばかりを求め、子どもを自分の思い通りに動かそうとしていた自分を反省しました。子どもと一緒にいられる時間は本当にあっという間で、ましてや子どもを抱きしめられる時間なんてもっともっと短いんです。今振り返ってみると、とてももったいなかったなと感じています。
子どもにも当然人権があります。子どもは自我が芽生えてくると、自分の思いを持って行動するようになります。それを親の思うままに動かそうとすると、反発するのも当たり前なのです。興奮すると「キーッ」と、叫んでいる子どもをよく見かけます。普段から、言葉にしたいのに思いを押さえつけられていることが多いのかなあと寂しく感じてしまいます。
子どもは大人が自由にできる存在ではありません。思いを持った1人の人間です。そのことを勘違いしている大人は案外多いのかもしれないなと思うのです。
自分の自由な時間を持つことは悪いことではありません。しかし、そのことで子どもを悲しませていいわけはないのです。そういったことを意識しながら、自分の時間も、子どもとの時間も楽しんでもらえたらいいなと思います。
 
 
こんなふうに、育児のイライラはここでは書ききれないほどたくさんあるのです。
しかし少し意識してみることで、自分もパートナーも子どももふっとラクになれたり、楽しく過ごせる。それくらいの小さなところから、イライラをなくしていきませんか?
まだはっきり言葉が出ない7、8か月の子どもであれば、大人の言っていることはちゃんと理解しているのです。表情や声色で大人の喜怒哀楽の感情を判断しています。ですからきちんと声をかけて一緒に行動するということをしながら、子どもの1人の「人」としての思いを受け止めてあげませんか?大人の思い通りにならないのが「子ども」なのですから。
 
 
 
【今月のおすすめ絵本】
『Today 今日』
伊藤比呂美 訳/下田昌克 画/福音館書店
 
 
家事や育児には終わりがありません。
日々の1ページだけを切り取ってみると、それはとても苦しくてつらい記憶なのかもしれません。しかし、子育ては終わらないのです。子どもは大人になってもいつまでもわが子です。ずっと長い目でわが子に優しいまなざしを注いでいきましょう。できなかった自分はその中のたった1ページなのですから。
家事を後回しにすることの勇気と大好きなわが子の笑顔を教えてくれる絵本です。

 
 

 
 
宮本 陽子(みやもと ようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日2回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 
 

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