へいじつのよみきかせ〜親と子の時間〜「絵本の選びかた」

Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「絵本の選びかた」をテーマにお送りします。

絵本って、挿絵とファンタジックなストーリーに引きずり込まれ、人の心を豊かにする素晴らしさを持っているといつも感じています。絵本を子どもへ、お孫さんへプレゼントしたいなと思う方はたくさんいらっしゃると思いますが、どんな絵本をプレゼントしたらいいかわからないという相談をよく受けます。
そこで、どんなふうに絵本を選んだらいいのか悩んでいる方へ、少しでも手助けになればいいなと思っていますので参考にしていただけると嬉しいです。
 
 
○年齢に合わせた絵本より、その子に合わせた絵本を
 
よく、「3歳の子の絵本はどこにありますか?」と聞かれます。確かに絵本の後ろにはよく「3歳~」という表記があるものが多いですね。もちろん参考になりますし、基準があると選びやすいです。しかし、これはあくまで基準です。まだその絵本に興味を示さない3歳の子どもはたくさんいますし、身近な生活環境によって子どもの興味は大きく違ってきます。そして、絵本をいつも見ているのか、あまり好きではないのか、全然興味を示さないのか。それによっても選ぶ絵本はだいぶ変わってきます。
例えば、あまり虫に触れたり観察したりする経験をしたことがない子どもに、『はらぺこあおむし』を読んであげても、そんなに関心を示さないかもしれません。最後にどうしてちょうちょうが出てくるんだろうと疑問に思うかもしれませんね。なので、子どもにはまず、自分の生活に身近なものが登場する絵本を読んであげると、絵本が好きになるきっかけになるかなと思います。
また、普段あまり絵本を見ない子どもへのファーストブックは、やはり3歳であっても少しストーリーのやさしいものを選んであげるのがいいと思います。まず、せっかく絵本を贈るのですから絵本というものを好きになってもらいたいですね。そこから自分の好きな世界をみつけることができれば、自分の好きな絵本が見つかるかもしれません。
絵本の世界は見る人が感じとったことがすべてだと思うのです。それを他の誰かが「それは違うよ」なんて言えないのですから。いろんな絵本をたくさん読んであげることで、子どもの心がたくさん揺れ動いてくれることを願っています。
しかし、年齢に合っていない絵本がすべてダメなのかということではありませんね。様々なことに興味関心を持つ年齢になっていると、知らないことへの学習意欲が高まり良い刺激になることもあります。今は難しくても、もう少し大きくなったら楽しめる内容かもしれませんし、今の年齢でちょうどいい内容のストーリーだとしたら、来年はもう飽きてしまっているかもしれません。
「今贈りたい絵本はどんな絵本なのか」そんなことを念頭に置きながら、子どもやお孫さんへ贈る絵本を選んでみてはどうでしょうか。

 
 
〇「子どもが好きな絵本」と、大人が「子どもに読んでほしい絵本」は必ずしも同じではありません
 
子どもに「絵本買って!」と言われたとき、どんな絵本を買いますか?
SNSで人気のある絵本、メディアで紹介されていた絵本、親御さんが子どもの頃好きだった絵本、子どもが保育園や幼稚園で「おもしろかった!」と言っていた絵本…
どれも正解だと私は思います。だって誰かがその絵本を読んで、心を動かされたのですから。
子どもは、大人と同じで流行に乗ったり、何かにハマったり、友達と同じものが欲しかったりします。大人はついつい「そんなんじゃなくて…」と思ってしまうんだけど、子どもだって「それじゃないのに」と思っているんです。
子どもにとって、自分で選んだお気に入りの世界観はとても大切な存在ですから否定はしないでほしいのです。受け止めつつも、そればかりでは絵本の良いところが子どもに伝わらないのが残念なので、「読んでほしい」絵本をぜひセットでお子さんに選んであげてほしいと思います。絵本にはそれぞれの役割がありますから、日常の中で使い分ければいいんです。自分で楽しむ絵本、お家の人に読んでもらう絵本、クリスマスなどの特別なときに見る絵本…というように。
ロングセラーといわれる絵本はどうして時代を経て今の子どもたちに読み継がれているのでしょうか。そしてそれを子どもたちに読んでほしいと感じるわたしたち大人の思い。それは一言では言い表せないけれど、やっぱり「心豊かに育ってほしい」「創造力や感受性を養ってほしい」そういったメッセージが、これらの絵本には込められているからなのではないでしょうか。
「子どもが好きな絵本」と「子どもに読んでほしい絵本」はぜひセットで!が良い解決法かなと思います。
 
 
〇与える時期は考えすぎないで
 
それを間違えてしまったとしても、絵本には賞味期限がありません。時期が来れば読んであげればいいだけで、ロングセラーといわれるステキな絵本であればそれをぜひ大切に寝かせておいてください。
もし万が一、少し幼い絵本を選んでしまったとしても、自分で読める時期が来た時に練習用に与えてあげるのもいいですね。また、いつもいつも難しい絵本を読んでいては子どもも疲れてしまいます。子どもが、小さかった頃見ていた懐かしい絵本を手に取るという心理は心を休めるためでもあります。絵本は心を開放できる場所なのですから。
先にも伝えましたが、いずれその子の役に立ってくれる知識を養ったり心が豊かになる経験ができるのが絵本です。その子がその絵本に向き合うことができるようになったら、読んであげたらいいんです。
長く読み継がれている絵本というのは、大人の私たちにとっても心のよりどころですから、そんな絵本との出会いを大切にできる1冊をぜひ子どもたちへ贈ってあげてほしいと思います。
 
 
【わたしのおすすめ絵本】
『きょうはなんのひ?』
瀬田貞二 作/林明子 絵/福音館書店
 
 
【あらすじ】
おかあさんは、朝、まみこに言われたとおりに、赤いひものかかった手紙を読みました。手紙に書かれた場所に行き、赤いひものかかった手紙をさがして読んでいくと…。まみこの心のこもった手紙のサプライズは、会社にいるお父さんのポケットの中にも。最後は、家族みんなが笑顔になれる嬉しいことが待っていました!そしてまみこが赤いひもの手紙の中で伝えたかったこととは…
 
家族の温かい場面を切りとったようで、大好きな絵本の1つです。わたしの愛しい子どもたちに大切な家族ができたとき、贈りたいと思っている絵本です。ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
 
 

 
 
宮本 陽子(みやもと ようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日2回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 

SHARE

一覧に戻る