【お菓子博 お菓子の物語】 piece of cake!

 
_piece of cake!の物語_
 
元々、私たちのチーズケーキは貨幣だった。
出産のためにドイツから日本に帰国した私たち夫婦は、バックパック2つとギターだけの、仕事も家もない無一文状態だった。その当時、「仕事もねえ!家もねえ!」と「俺ら東京さいくだ」のパロディを歌っては笑っていた。今考えると、間も無く子どもが産まれるというのに呑気に笑っている場合ではない。
新しい家が見つかるまでの間、無理を言って田舎の祖母の家に住まわせてもらうことになった。計画性のない夫婦を快く受け入れてくれた祖母には感謝しかない。
しばらく祖母の家に住んでみて気がついたことがあった。祖母の住む田舎には物々交換の文化があった。とれたての鯛、上等品のかまぼこ、庭の畑で採れた野菜、次々に物が集まってくる。
私たちは住まわせてもらっているせめてものお礼にと、チーズケーキを焼いた。野菜をもらったお礼にチーズケーキを送り、またそのお礼に何かをもらう。物々交換の連鎖は止まらない。無一文の私たちは気がつくとチーズケーキを貨幣にしていた。
私たちは、毎日チーズケーキを焼いているうちに、「これを本業にしよう!」と閃いた。それからの私たちは早かった。出産と同時に準備を始め、産後1ヶ月で開業した。その当時は大真面目だったが、今考えるとめちゃくちゃなスケジュールだ。初めての育児に初めての起業、我ながらよく頑張ったと思う。
あれから約1年が経ち、本格的に本業として始めたチーズケーキは当時貨幣として使っていたチーズケーキからかなりブラッシュアップされた。
祖母の田舎に帰る際は、その当時お世話になった方達に成長したチーズケーキを今度は貨幣としてではなく贈り物として持って行こうと思う。
 
 
 

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