へいじつのよみきかせ「きょうだいの育て方」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「きょうだいの育て方」をテーマにお送りします。
 
梅雨の足音が聞こえてくる季節になりました。朝晩の気温差に体がついていかないこともあるでしょう。体調を崩さないように、自分のことも家族のこともいたわりながら過ごしていきましょうね。
 
「下の子のほうががかわいいと感じる」
「つい男の子のお世話をやいてしまう」
といったように、きょうだいの子育てをしていて難しいなと感じることはないですか?
ひいきをしている気持ちはないのですが、いつのまにか接し方に偏りが出てくることもあると思います。
 
「同じように育てていてもきょうだいでぜんぜん違う」…とつい思ってしまいますが、きょうだいが同じように育つわけはありませんね。たとえ一語一句同じように伝えたとしても、その子によって言葉のキャッチボールには様々なパターンがあります。とらえ方も環境も違います。同じ子どもが2人いないのは、そういうことなんだと思うのです。
性格が似ていても、親はそれぞれが個性を持った別々の子どもであることを理解し接していく必要があります。子どもに合わせた育て方をしていけばいいんですね。お兄ちゃんにはできても弟にはできないなんてことは当たり前にあるのですから。
 
親も子も人間です。性格も様々ですから、気が合う、合わないはもちろんあります。
親子だから、必ず分かり合えるの…そうでもないと私は思っています。
私は、お兄ちゃんとは気が合うけど下の子とはいつもぶつかってしまう、なんてことはしょっちゅうでした。他人なら、気の合わない人とは関わらずにいればいいのですが、親子だとそうはいかないことが多いですね。ちゃんと向き合わないといけないと思うからこそ余計にしんどかったのかなと、今考えるとそう思うのです。
 
私のようにならないためには、どちらの子どもが好きとか、どちらが言うことを聞いてくれるというよりも、「接し方の切り口」を見つけてみるのはどうでしょうか?
例えば、いつも部屋が散らかっている姉妹がいたとします。
同じように「かたづけなさい!」といっても、お姉ちゃんは何から手をつけていいかわからず、 取りかかりが遅い。妹は怒られたら、とりあえず勢いで片付ける。同じように言ったのに、困ったことに全然違う行動に出るのです。私の親目線で言うと、妹のほうが好きなタイプですね。少々雑でもささっと手早く終わらせることができる性格なので、この子には手は出さないでおきます(口は出しますが)。
一方この姉に対しては、「これをここにまとめて」とか「頻繁に使わないものは奥にしまったらいいんじゃない?」と、いろいろ手も口も出してしまいそうです。
親がそれぞれの子どもに違った切り口で接したとしても、最終的に部屋が片付いたのならそれでいいと思いますし、「母は散らかった部屋を見たら怒る」ということがわかっているのなら、部屋が散らかったら片付けようかと少しずつでも習慣化してくれたらそれでいいのです。
目標は同じですが、手段を変えて子育てをしませんか?それぞれの性格や、好きそうなことをリサーチしながら、あの手この手で子どもにやる気を出させるのは、面倒くさいし大変です。でもそれが、いわゆる「おかあさんは妹ばっかりかわいがっている」というようなひがみや嫉妬とは無縁の子どもに育つ秘訣なのではないでしょうか。
そしてそれは、それぞれの子どもに大切に愛情を注ぐことになるのだと思います。
 
「同じように育てること」が、親は一番ラクです。でも同じようにならないから、子育てはおもしろい!だから、あえて同じように育てないでいましょう。
 

【今月のおすすめ絵本】
『ピーターのいす』
E・ジャック・キーツ 作 きじまはじめ 訳 偕成社
 
 
[あらすじ]
あかちゃんが産まれ、ピーターのものだったベビーベッドや食事用のいすは、ピンク色に塗られていきます。すっかり拗ねてしまったピーターは自分の大切なものをかき集めて、家出をしてしまいます(といっても玄関の外!)。ピーターはどんなふうに、あかちゃんを受け入れることを決めたのでしょうか?
 
[読みどころ]
上の子どもの葛藤と成長の様子が、子育ての面白さを教えてくれます。貼り絵で制作されたこの絵本はレトロ感が可愛らしく、今読んでもとても素敵な作品です。貼り絵の中には和紙も使用されているそうなので、日本人の私たちにとっても、どこか温もりを感じるのはそのせいかもしれません。ぜひ探してみてくださいね!

 
 
【プロフィール】
宮本陽子(みやもとようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。

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