へいじつのよみきかせ「ちいさな手に、ちいさな絵本」

 
Kidsコンシェルジュが提案する絵本を軸とした親と子の過ごし方。
今回は「ちいさな手に、ちいさな絵本」をテーマにお送りします。
 
梅雨が明けると、夏本番です。水分や塩分を適度に摂りながら熱中症に気を付けて過ごしたいですね。そして、今年も元気に、楽しい夏の思い出を作りましょう!
 
最近、というか何年か前からよく見かける光景があります。
それは、ベビーカーに乗っている小さな子どもがスマートフォンの動画をじっと見ている姿。
確かに、お出かけの最中に機嫌が悪くなってぐずったり大泣きをされると、せっかくのお出かけが残念な気持ちになってしまいますね。買い物の間だけ、機嫌よくいてもらいたいと思います。だから、ついつい子どもにスマートフォンを渡してしまいませんか?もし子どもが誤って落としてしまったら…想像するだけで恐ろしいですね。
 
私は絵本が好きなので、子どもにはスマートフォンではなくぜひ絵本を持たせてあげてほしいなといつも思っています。
ご存じでしょうか?ベビーカーに付けることができる布絵本や子どもの手にぴったりサイズのちいさな絵本の存在を…。名作とよばれるものから、1歳~2歳の子どもが喜ぶ絵本、車や動物などの写真絵本までその種類は様々で選ぶのもとても楽しいですよ。小さな子どもにとって、絵本は「お家の人に読んでもらうもの」です。
しかし、絵本のジャンルというのはたくさんあって、子どもが好きなものの世界に入り込んで一人の時間を楽しむことができる絵本というものもあるのです。ベビーカーに乗っているときはぜひそういった、子どもの手におさまるくらいのサイズの絵本を手渡してあげたいですね。絵本は少しくらい落としても大丈夫。スマートフォンは落とすと壊れます。とても大きな代償が待っています。
 
子どもにとって、ベビーカーに乗って大好きな人とお出かけすることはとても楽しい時間です。でも長時間だと、動きたい、眠たい、お腹すいたなどいろんな欲求が出てきたときはもうぐずって大変ですね。
しかし私たち大人は、ネット注文や宅配の利用をしていたとしても、生活に必要な物の買い出しは必要不可欠です。子どもがベビーカーでいい子にしてくれれば行きたいところに行ってショッピングを楽しむことができるのに…
私もベビーカーを引いていた頃は、よくショッピングで発散していました。外出するほうが子どもの気がいろんなものに向いて機嫌も良いからです。でもそれが長時間になると、子どもは退屈に決まっていますね。だから、スマートフォンを渡せば子どもは1日じっとその画面に見入っていい子にしていてくれているのかもしれません。しかし、最近問題になっているブルーライトが目に健康被害をもたらすことや、スマホを使用する年齢が低年齢化している問題を考えると、私はやっぱり絵本をおすすめしたいのです。絵本ではすぐに飽きて結局ぐずってしまうというのもわかります。スマートフォンの中の動画は、ストーリーも映像も勝手に動き流れてくれますから、子どもにとっては魅力的です。
でも、よく考えてみてください。子どもがぐずったら、親はそれに反応し、声をかけたり、抱っこしてあやしたり、違うことに気持ちを向けられるような関わりを持つ。それが親子に必要なふれあいの時間ではないでしょうか?その役割をスマートフォンにお願いするのは、私は違うと思います。
 
ベビーカーには、年齢、月齢に合わせた形(A型B型)があります。最近は、いろんなタイプのおしゃれなデザインだったり、用途に合わせて変形したりするものもあり便利だなと思います。子どもを乗せるシートの向きが、月齢や年齢に合わせてお家の人の顔が見える内向きか外向きに切り替えができます。
A型に乗っている0歳~1歳くらいの子どもは、生理的な欲求を満たしてあげると機嫌がよくなることが多いので、スマートフォンを渡す親は少ないと思います。
B型のベビーカーは好奇心が芽生えはじめた1歳を過ぎたあたりから使用するので、子どもは目の前に広がる景色すべてに興味芯々です。それなのに、じっとスマートフォンを見つめているだけなんて、残念じゃないですか?買い物のときだけだから大丈夫でしょと思われているかもしれませんが、子どもはとても賢いです。もしスマートフォンを渡してもらえなかったとしたら、スマートフォンが欲しくて逆にぐずってしまうという悪循環に。
 
これは賛否両論がありますし、とてもむつかしいテーマだと思っています。ベビーカーに乗ったらスマートフォンを欲しがる子どもに、今更それをやめさせることは正直とても難しいことです。それなら、始めからそれをしないでおくということが後々大変なことにつながらない一番簡単なことだと思います。
子どもがぐずらない方法を考えるよりも、子どもがぐずった時にどんなふうに接すると子どもの機嫌が直るのかということの引き出しを、大人がたくさん持っているほうが子育てはラクです。その引き出しの1つに、絵本を手渡してもらえたら私は嬉しいです。
 

【今月のおすすめ絵本】
『きんぎょがにげた』(おでかけ版)五味太郎 / 福音館書店
『はらぺこあおむし』(愛藏ミニ版)エリック=カール 作 もりひさし 訳/偕成社
『おばけのてんぷら』せな けいこ/ポプラ社
『はじめてえほん こいぬ じどうしゃ 』永岡書店
 
 
安全で耐久性のあるボードブックは、指先を器用に動かすことができるようになる1歳前後から楽しむことができます。写真絵本も、子どもの身近なものが載っているので魅力的です。
子どもは知っている絵本であれば、大人が読んであげなくても絵を見てストーリーをインプットしていますので、「ベビーカーに乗った時だけ手渡してもらえる絵本」という位置づけも、子どもにとって特別な絵本になり良いと思います。
ぜひ、お子さまのお気に入りを見つけてみてください。
 
 
【プロフィール】
宮本陽子(みやもとようこ)
Kidsコンシェルジュ
保育科卒業。保育士として広島市の保育園に勤務。
21年勤続の後、保育士時代に毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を、リアルタイムに子どもたちそして親たちへ伝えられたらと思い、2017年広島 蔦屋書店に入社。入社してからも「へいじつのよみきかせ」で平日は毎日1日1回、ほぼ毎日絵本を読んでいる。
「0歳から就学前の子どもたちの好きな絵本」、「親が子どもにぜひ読んであげてほしい絵本」、「おとなの気持ちを癒す絵本等」等、多様な児童書というジャンルのなかでも特に「絵本」が持つ魅力を提案し続けている。
 
 

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