広島 蔦屋書店が選ぶ本 vol.1

【蔦屋書店・丑番のオススメ 『ぼくなりの遊び方、行き方 :横尾忠則自伝』】 

 

広島蔦屋書店では、1号館1F文芸・文庫コーナーにて、『自伝・評伝を読む』と題したフェアを開催しています。一遍聖人から漢 a.k.a gamiまでの44人の自伝・評伝を生年順に並べています。自伝・評伝というつながりだけで、時代も場所も活動内容も異なるひとびとの本が並ぶ様は、壮観です。鎌倉時代の一遍聖人の評伝とラッパーの漢a.k.a gamiの自伝が同じフェアで展開されているんです!どの本も、とにかく、読み物として面白いということは共通しています。今回はそのフェア中の1冊、あまりにも面白すぎる自伝『ぼくなりの遊び方、行き方 :横尾忠則自伝』をご紹介します。

 

本書は、1936年生まれの、グラフィックデザイナー・イラストレーター・画家の横尾忠則の自伝です。糸井重里は、横尾忠則のことを30世紀まで名前が残る唯一の現存の日本人と評されています。

 

そんな偉大な横尾忠則も、60年代初頭には、ひとりの悩める青年でした。

田中一光が率いる、憧れの日本デザインセンターに入社した横尾青年は悩みます。「ハラチョとドラ(後輩たち、引用者注)も若いのに自分のスタイルを持っていたが、ぼくにはスタイルがなかった」。「作品が外部に発表されるとき、なぜかぼくの名前が記されず、チーフの名前で発表された。」「ぼくのアイデアや意見にはクライアントは耳を傾けようともせず無視した。そのくせぼくのアイデアをチーフが提案した時はいとも簡単に採用された」。

 

写真家の細江英公と歌人の寺山修司との出会いが横尾青年に大きな啓示を与えます。「ぼくは創作と生き方の問題を切り離して考えている自分に気づいた。二人共お互いに芸術と人生を分けないで考えている人間だった。」「この隙間を埋めるためには創作と人生を平面化して、両者を接合させる必要がある」。「デザインを芸術化させるなら、根本的にデザインの存在自体を疑い、それを否定するところから出発しなければ、ならない」。

 

これを契機として、自分のスタイルをみつけた横尾忠則は、「興奮と狂乱。そして祝祭的なあの伝説の1960年代」を象徴する人物となっていきます。

ポスターデザインの世界に革命を起こし、雑誌『平凡パンチ』に毎週のようにとりあげられ、レコードをリリースし、大島渚の映画に主演します。60年代の横尾忠則は、デザイナーの枠を越えたある種のポップスターでした。

 

本書には、錚々たる人物たちが登場します。

三島由紀夫、田中一光、和田誠、宇野亜喜良、細江英公、寺山修司、赤瀬川原平、唐十郎、高倉健、一柳慧、アンディ・ウォーホル、大島渚、ジャスパー・ジョーンズ、オノ・ヨーコ、そしてジョン・レノン。これらの人物との交流もよみどころのひとつです。

 

もし、この自伝に欠点があるとすれば、もっとひとつひとつのエピソードを掘り下げて知りたいということかもしれません。約400ページのボリュームを持つ本書ですが、そう思わせてしまう魅力にあふれています。しかし、その欲求は、別の本で補うことが可能です。

 

あらゆる本には、関連する本があり、一冊の本は、別の本を連れてきます。とくに自伝・評伝はひとりの人物の人生を描くものなので、関係する人物・時代・場所についての本が数多くあります。一冊の本から広がる世界を旅すること、その過程でもともと興味のなかった本を手に取ることもあるでしょう。本が広げる世界。本から広がる世界。それこそが、本を読むことの愉しみです。

 

 

『ぼくなりの遊び方、行き方:横尾忠則自伝』から広がる本

 

『東京ミキサー計画』赤瀬川原平 ちくま文庫

『横尾忠則全ポスター』横尾忠則 国書刊行会

『絵草紙「うろつき夜太」復刻版』柴田連三郎、横尾忠則 国書刊行会

『完全版 平凡パンチの三島由紀夫』椎根和 河出書房新社

『銀座界隈ドキドキの日々』和田誠 文春文庫

 

 

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