【裏方のコラム】あこがれのぬか床生活

梅田 蔦屋書店の裏方スタッフが執筆する「裏方のコラム」。装飾・デザインチームを中心として、本や売場、その周りについてをお届けします。
 
 
あこがれのぬか床生活
 

料理売場を歩いて書棚を見るたびに、「いつかはやってみたい」と密かに思っていたものがありました。それは食卓の名脇役とも言える「ぬか床」でした。名脇役と言いつつも、京都出身としては四条河原町(京都の中心地)に出ると、ふらっと寄ることを楽しみにしているのが錦市場。そしてお漬物屋さんなのでした。

素材の味を楽しむことができて、彩を楽しむことができて、漬け方によって個性もでてくる。ごはんにも合うし、お茶にも合う。そんなことを思いながら、ぼんやりと考えていた「いつかやってみたい」。ぼんやりとした気持ちを実現する。「そのきっかけはいつ来るのか」、そんなことさえもぼんやりと考え続けて(たぶん)2年か3年は経っていました。

そんな不動の「ぼんやり」にきっかけを作ってくれる機会となったのが、梅田 蔦屋書店のテナントショップであるアムリターラハウスの皆さんでした。最近とても多いんです、アムリターラハウスの皆さんとお話をすることが。普段から気になっていた食べ物とか体のことを「ポロっ」と口からこぼすたび、「これがいいですよ」とお勧めをしてくれます。アムリターラハウスにないものでも、「こうしてみたらどうですか?」といつもあたたかい。そんな時間を一緒に過ごすことができることも、アムリターラハウスに行きたくなる理由の一つです。

そして、いよいよ「ぬか床」です。やってみたかった人、いるでしょう?

いつものように立ち寄ったアムリターラハウスで見かけたのが、はじめの一歩にちょうどいいぬか床。産地は飛騨高山。漬物職人・飛騨高山 よしま農園さんのぬか床です。見かけてお話をして、「やっぱりやってみたい」と「なんだかできそう?」という気持ちがふくらんで、私のぬか床生活ははじまりました。作る前になるのですが、さすがはアムリターラハウスさんということで、食材に対する安心も、たっぷりと用意されています。肥料農薬堆肥を使わない自然栽培米糠原料。私たちが普段食べているものについて、深く考えるきっかけも作ってくれるのが、アムリターラハウスだな。とも思います。

よしま農園さんのぬか床。

ぬか床を始める前に気がかりだったことがあります。それは保存の方法。毎日混ぜたり、できるのかな……と不安もありました。ただ、今回購入をしたぬか床は「はじめてのぬか床」にはピッタリ。冷蔵庫での保管で、週に一回混ぜるだけで大丈夫。ここで一歩目が軽くなりました。

そんなこともアムリターラハウスの皆さんとお話ししている間に出てきた言葉なのですが、「どうしようかな?」への後押しが端々にあって、とてもありがたかったです。

 

――自分の漬けたいものを漬けてみよう

さて。必要なものはこのぬか床と、容器だけ。そして漬ける野菜です。何を漬けるかを迷ったこともあり、漬けているという人が居ないかな?と探してみたところ、同僚のTさんがいました。その人は、なんと一日の差でまさかのぬか床デビューをしていました!それもアムリターラハウスさんのぬか床という点も同じでした。なんだか悔しい思いも胸に秘めつつも、「なにを漬けました?」と聞いてみるとキュウリに茗荷。そしてアボカド。まさかアボカドだったのです。

美味しかったのはどれですか? 答えはいちばん予想をしていなかった「アボカド」。私にとってぬか床を始めるだけでも異次元であったのに、早速のぬか床の洗礼というか、聞く人を間違えたというか……。一抹の不安を抱えながら、気持ちを切り替えて「自分の漬けてみたいものを漬けよう」と心に決めるのでした。

高まるぬか床への熱とともに、野菜を買いに行きました。訪れたのは京都の下鴨神社近くの「オーガニックベジアネックス」さん。アムリターラハウスさんで購入したぬか床ということもあり、ここはやっぱりと、オーガニック野菜を選ぶことにしました。

オーガニックベジアネックス1
どっさりと置かれた野菜たち。農家さんが笑顔で配達にくる。
 
オーガニックベジアネックス2
定番から変わり種まで。新鮮な野菜が並ぶ。

普段はスーパーで購入することがほとんどですが、野菜を見るだけで「楽しい」と感じるのは、八百屋さんや市場、専門店の醍醐味だなと思います。一つずつを吟味しながら、店主さんのアドバイスも参考にして、野菜を選んでいきました。

手に取った色鮮やかな野菜たち。
オクラ(2種)、万願寺唐辛子にズッキーニ。

おいしそうな野菜を選んで、気持ちもいっぱいになりながら、いざ調理へと帰宅をするのでした。

 

――ぬか漬けの作り方

ぬか床と野菜たち。欲張ったので、すべての野菜は漬けれず

それでは、いざ調理。始めてみて驚いたのですが、その工程は驚くほど簡単。


1. 野菜を切る。
2. ぬか床を容器に入れる
3. オクラを塩でもみ、サッとゆでる
4. 野菜を漬ける。


あっという間、本当にそれだけなのでした。

みずみずしいズッキーニは断面まで美しい。

ぬか床に入れた野菜たち。欲張ったため、ぬかから顔を出す赤いオクラ。

そして、漬けてからは半日、1日と経つたびに、経過を見ながら漬かるのを待ちました。「最初だけかもな~」とぬかを混ぜることも楽しく、漬けた野菜の具合を見ていきます。

そして2日が立った日、そろそろいいかも?(はじめてなので正解が分からない)と、とりだしたぬか漬け野菜たち。「ぬかから野菜を取り出すことが、こんなに楽しみなのか……」と思いながら、一つずつを取り出し、一つずつを丁寧に切る。野菜もじっくり選んだからか、「一つ一つ」の言葉がしっくりとくる心地のいい手間でした。じっくりと器も選んで、ぬか漬けを盛っていく。なんともいえず、とてもいい時間をすごしたなと思っています。

初めて漬けたぬか漬け。上・ズッキーニ、右・オクラ、左・万願寺唐辛子
赤いオクラはちょっと浅かったのでもう少し。

肝心の味ですが、新鮮な野菜の味や瑞々しさを残しながら、とてもいいころ合いに漬かっていました。口に運んだ最初と最後にぬかの旨味がふと現れる。「(うーん)」と感慨深く頷きながら、一粒ずつのぬか漬けを、温かいお茶でいただきました。

ぬかを仕込み、野菜を選んで、わざわざ漬ける。そんな手間暇が心地よく、初めての味はとても贅沢なものだなと、その体験自体が味わい深かく印象に残っています。

初めてのぬか床を付けたのが8月の中旬。それからというもの、ほとんど切らさず、さまざまなぬか漬けを漬け続けています。

しいたけと茗荷
出汁の染みたしいたけとさっぱりとした茗荷は相性もいい。
 
厚揚げ
ジューシーさの向こうにぬかの風味が合う。水菜を添えて。
 
胡瓜(おむすび付き)
オーソドックスな胡瓜は抜群のおいしさ。お米がすすむ。
 
カブ
ちょっと苦みを感じて3日漬けでちょうどいい。

アスパラ
1日よりも2日漬けが好み。
 
冬瓜
種の近くは少し酸っぱく、外側がすっきりとした味わいで美味しい。
 
自分でも思っていた以上に「ハマったな~」と思いながら、いまから秋の野菜はなにがあるかな?と楽しみにしています。

そんな季節も感じつつ、日々を楽しませてくれるぬか床を今日も早く捏ねたいと思うのでした。

 

コラムに関連する書籍
『野田琺瑯のレシピ 琺瑯容器+冷蔵庫で、
無駄なく、手早く、おいしく。』
野田 善子著・ 文藝春秋
『ぬか漬け帖』
有元 葉子著・筑摩書房
 
『ぬか漬けの基本 はじめる、続ける。』
山田 奈美著・グラフィック社
 

PROFILE|裏方のK
元写真コンシェルジュ。写真集や梅田 蔦屋書店が発信する日々のあれこれについてを執筆します。
 
ご感想はこちらまで:umeda_event@ccc.co.jp
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