【広島 蔦屋書店】境界線

フェア・展示
2号館1F 広島 蔦屋書店 2019年04月05日(金) - 05月19日(日)
隔てるもの

はじまりは1冊の雑誌だった。

多民族が歌い奏でる力ある表紙と境界という文字に目がとまった。

境界線とはどのようなものだろう。国と国、人と人、思考と思考、あらゆるものとものの境目に境界線は存在するのか。あるいはしないのか。とても興味深く大切なテーマに出会ったように思い、皆で境界線について考えてみた。そして様々な境界線を取り上げて本を選んだ。

それぞれの境界線とはどのようなものだろうか。

 

                                      

 

社会学者の岸政彦さんに「マイノリティとマジョリティの境界線」をテーマに選書していただき、境界線についてコメントいただきました。

 

境界線はどこにでもある。それは人と人とを隔てるものである。だから、できればそれは、ないほうがよい。そして実際に、誰もがそれを越える可能性を持っている。
しかしまた、境界線を越えてしまうという暴力、もまた、存在するのである。
だからせめて、それについていつまでも考え続け、悩み続けたいと思う。
ここにあるのは、そんな本たちである。境界線とともに生き、そしていつか遠い未来に、それを乗り越えるために。

岸 政彦
 

 

言葉は世界を分節する。言葉を用いて、わたしたちは考え、語らい、行動する。

言葉と言葉のあわいにあるもの。定義しえないもの。両義的なもの。越境するもの。

そのあわいを表現するために、わざわざ、一冊の本が書かれ、わたしたちはそれを読むのかもしれない。

現実に境界線は存在する。しかし、言葉と言葉の境界線はあいまいだ。

それならば、言葉によってかたちづくられたこの世界もまた。

境界線ついて考えることは、言葉について、表現について、世界のありようについて考えることだ。      

広島 蔦屋書店 丑番

 

 

この世の中にあるとされる様々な境界線を探して、それについて考えてみた。境界線はたくさん見つかったのだが、不思議なことに、それについて考えれば考える程、境界線がぼやけてくるようだった。結局のところ境界線など本当はどこにも無いのではないか、というのが私の今回の結論である。

広島 蔦屋書店 江藤

 

 

境界・境界線など、本当は、どこにも、ない。根っこは一つ、同じだ。

日常的に、受動的にも能動的にも、我々は何かの壁をつくり、何か(あるいは誰か)を区別して生活している。そう、境界、または違いを認識することで安心している。でも、それは長い歴史の中で人間がつくりだした妄想と自己保身の蜃気楼にすぎない。そろそろここから抜け出さなければ。

「境界線フェア」が我々を縛るこの蜃気楼を消し去り、遮るもののない広い世界を創造する一歩になれば、と。

広島 蔦屋書店 神埼

 

 

まず私自身の境界線があいまいです。

「そのまんまでいいじゃん」

「違うなら違うでいいじゃん」

なんて思っちゃいます。

実はすごいシンプルな世界を複雑に切り分けて問題を作る、人間独特の不思議な癖なのかもしれませんね。

広島 蔦屋書店 花村

 

 

わたしと他者には、差異がある。横たわる境界線だ。自分の位置や角度を変えるたび、現れる様々な種類の境界線だ。ある時、わたしはマイノリティだが、ある時はマジョリティ側に立つ。

境界線を考える、それは境界線を無くすことではない。

境界線があるからこそ、境界線まで赴き、境界線を自覚し、語らなければいけないのだ。

 

これからも、わたしはあらゆる境界線を引きずりながら、それを自覚し、それについて思考するのだ。

広島 蔦屋書店 犬丸

 

 

人はあらゆる場面で境界線(隔たり)を感じて生きている。

全く同じ人間などおらず、人と人の間に差異が生じるのは当然で、人の数だけ境界線はあるといえる。その差異が故に人は人を羨み、妬み、憎み、愛するのだと思う。しかし人は皆孤独な個人で向き合うべきは自分自身だ。これは希望でもあるが、孤独な個人として自分と向き合い、境界線の上に仁王立ちになり、おごることなく、しかし恐れずにその隔たりを眺め、時には越えて行きたいと思う。

それがわたしの想う「あなたとわたしの境界線」だ。

広島 蔦屋書店 河賀

 

 

 

岸 政彦(きし まさひこ)

1967年生まれ。社会学者。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。研究テーマは沖縄、生活史、社会調査方法論。著作に、『同化と他社化―戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞)、『愛と欲望の雑談』(雨宮まみとの対談、ミシマ社、2016年)、『質的社会調査の方法―他社の合理性の理解社会学』(石岡丈昇・丸山里美との共著、有斐閣、2016年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年、第156回芥川賞候補、第30回三島賞候補)『はじめての沖縄』(新曜社、2018年)など。

 

 

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  • 期間 4月5日(金) - 5月19日(日)
  • 場所 2号館1F 広島 蔦屋書店

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