広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.103

蔦屋書店・江藤のオススメ『オリジン・ストーリー 138億年全史』デイヴィッド・クリスチャン/筑摩書房

 
 
138億年間に起こった出来事をわずか18分で説明することってできると思いますか?
 
2019年も沢山の本を紹介させていただきました。
私の担当としては今年最後の本の紹介となります。
さて、どんな本を紹介しようかなと迷っていたのですが、つい最近物凄い本に出会ってしまいました。
ここにきて、今年のベスト級です。
 
本を読むということの面白さ、そして、本という物の存在意義までをもあらためて考えざるを得ない、私にとってとても重要な本となりました。
おそらくこの先、何度も読み返すことになると思います。
 
その本が、今回紹介する『オリジンストーリー』です。
 
さてこの本、一体何が書いてある本なんですか?と問われると、答えは非常に簡単です。
「宇宙の始まりから現在の人類がいる場所を経由して、宇宙の終わりまでを一気に説明した本」なのです。
 
今まで、このように全てを貫いて全てを一気に語ってしまう本を読んだことはありませんでした。
もしかするとここまで聞いたみなさんがこの本を歴史の本だと思ってしまったかも知れません。
もちろん歴史の本だとも言えます。しかし、物理学の本だとも言えます。
いやそれでは不十分です、生物学の本でもありますし、気象学、地理学、宇宙物理学、古生物学、経済学、などありとあらゆる学問が全て関わってきます。
 
私たちはこれら学問を学ぶにあたって、あまりにも細分化し過ぎてしまったのではないでしょうか。
極端な話をすれば、日本史と世界史ですら分断しているのではないでしょうか。
授業で日本史を選択したら、世界史はやらなくてもよかったり。
本当にそれでよかったのでしょうか。
全ての学問は繋がっているというのに。
 
 
ビックバンが起こりそこから宇宙が生まれたというのはおそらく間違いないのです。
だって宇宙は今でもどんどん膨張していっているんですよ、ということは時間を巻き戻したら小さく小さくなるしかない。
始まりの一点は想像できないほどの熱を持っていたはずです。
だって熱力学の第一法則によれば宇宙にあるエネルギーの総量は不変であるからです。
その一点に現在の宇宙にある全てのエネルギーが詰まっていたはずなんですよ。
 
もうここだけで、想像できないというか理解が及ばないですが、ワクワクしませんか?
 
そこから100億年ぐらいが経つと地球上に最初の生命が誕生します。
元素と元素が結びつくには様々な条件がいるそうです。
気体中では動きが早過ぎてうまく結びつかないし、個体の中では動けないので結びつかない。
液体の中だと結びつきやすいそうです。
たまたま地球には豊富な水があったし、多くの元素があったし、太陽からの距離もちょうどよかった、海底には割れ目もあり大きな熱もあった。熱こそがエネルギーです。
 
そこにDNAが生まれます。二重らせん構造を持っていてその構造の中に情報を持っています。
その情報をコピーして増やすことができるのが、その画期的なところでした。
ここで面白いのは、コピーの過程で数億回に一度の割合でエラーが起こるんです。
そのエラーが環境に適しているかどうか、というのが学習となりそれを残すことができる。
学習というところでは最強の存在が生まれます。
すなわち生命です。
 
ビックバンからしばらくのあたりは理解が及ばな過ぎて、実はほとんどわからなかったのですが、この辺りから俄然面白くなってきます。
 
次に様々な動物が生まれます。動物たちは生きている過程でどんどん学習をしていきます。
しかし、その学習には限界があります。
それが個体の死です。
せっかくの学習がリセットされるのです。
 
さて、ここでまたちょっと脱線してもいいでしょうか。
人間とチンパンジーって遺伝子的にはほとんど一緒らしいです。
しかし、人間ってチンパンジーと比べて、もちろん他の動物たちと比べても、抜きん出ていますよね。
全く異質な存在だと言ってもいいぐらいに。
 
一体何が私たちと他の動物を分けているのか。
 
詳しくは本書を読んでもらいたいのですが、ざっくり言うと言語です。
言葉を使って学習を引き継ぐことができるのが人間だけだったのです。
 
おおーーって感じですよね。それかー!って。
この辺はこの本を読んでいて特にグッとくるポイントの一つです。
これって、本の大事さというか、本にして残すことの意義の凄さを言っているように思います。
 
でもまだまだ語りは続きます。
人間は農耕を始めます、ここもすごいトピックです。
そして社会生活を送り、エネルギーを使いまくります。
争いも起こります。
 
人間が登場することで、この地球に与えたインパクトは想像以上に大きく、今まで長い年月をかけて起きてきた変化が、人間の影響で物凄い早さで進みます。
 
人間が手にしたこの力は、本当に人間が持つべき力だったのか
果たして使いこなせるのか
その答えはまだ出ていません。
 
この本で語られる時間は138億年ですが、その後のことにも触れられます。
太陽が燃え尽きるのが今から45億年後、宇宙そのものが消えてしまうのはさらに何億兆年後です。
人類が登場したのがたった20万年前なので、太陽が燃え尽きるまでの時間は想像も及ばないぐらい長いのです。
 
人類にはまだまだ時間があります。
 
この地球に、宇宙に、人類が与える影響は実はとても大きい。
その力をうまく使うことができれば、人類は今よりもっと素晴らしい世界を作り上げる可能性もあります。
そうでなく、もっと早く滅んでしまうかも知れません。
 
その鍵を握るのは、私たちや私たちの子どもたちなのです。
 
私たちも子どもたちも知らなければならない。
知るところから始まると思うのです。
この宇宙をどう生きていくべきなのかを考えないといけない。
そのために、このビックヒストリーを知らなければいけないのです。
 
 
すいません、完全に喋りすぎですね。
しかし、この本に書かれていることのほんの一握りです。
しかも私の理解が及ばないばっかりに間違っているかも知れません。
どうか本書を読んで、あなた自身で確かめてみてください。
 
とは言え、私の拙い説明でこの本をいきなり読もうと思わせるのはハードルが高かったかも知れません。
 
最初の問いに戻ります。
138億年を18分で語ることなどできるのだろうか。
 
実はそんな奇跡を私たちは目の当たりにすることができます。
この本の著者であるデイヴィット・クリスチャンが出演したTEDトークのアーカイブがネット上に残っています。
美しいスライドと語りで、たった18分で全てを語り尽くしています。
もちろん日本語訳がついているものもありますので、みなさん検索してみてください。
 
その映像を見ると、この本を読みたくて仕方なくなるはずです。
そして、読んでみてわからなくても心配いりません。
私もほとんどわかっていません。
でも、すごく面白いところやすごく読みやすいところもあります。
そこを楽しんで、わからなかったところは今後何度も読み返せばいいのです。
 
本を読むということはそういうことなのです。
 
 
また来年もどんな本に出会えるか楽しみで仕方ないです。
本を読むのも楽しいですし、本の話をするのもめちゃくちゃ楽しいですよね。
 
2020年も、「私の面白かった本」のお話にお付き合いいただけると嬉しいです。

 

 

 

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