マルク・シャガールの挿絵本

20世紀パリで花開いた美術書の出版文化。リトグラフで彩られた様々な美術誌や挿絵本が出版されコレクターに愛蔵されました。
シャガールは特に人気の作家で、シャガール本人も熱心に挿絵本やリトグラフの制作に取り組みました。銀座 蔦屋書店に入荷したシャガールの美しい書物たちをご紹介します。

ジャック・ラセーニュによるシャガール伝
『ジャック・ラセーニュによるシャガール伝』1957年刊
挿絵本とは
20世紀のパリでは個人が気軽に美術を楽しめるよう、リトグラフを使った美術書が盛んに出版されました。なかでも画家が表紙や挿絵を描きテキストの選定などを手掛けて作られた本は挿絵本(イラストレイテッド・ブック)と呼ばれています。挿絵本の多くにはリトグラフ版画が収録されており、画家によってデザインされた本自体の美しさも相まって、美術愛好家のコレクションの対象となりました。

シャガールはギャラリストのマーグや版画工房のムルローの協力のもと、リトグラフ入りの挿絵本を数多く刊行しました。
『ジャック・ラセーニュによるシャガール伝』(1957)、『聖書』(1958)、『ダフニスとクロエ』(1961)、『出エジプト記』(1966)、『ポエム』(1968)、『魔法の王国』(1972)、『オデュッセイア』(1974)などが有名です。

ジャック・ラセーニュによるシャガール伝
《アコーディオン弾き》『ジャック・ラセーニュによるシャガール伝』より
リトグラフとは
リトグラフは18世紀ドイツで発明され、19世紀のヨーロッパで広く用いられた印刷技術です。20世紀になってイメージの伝達という点では写真が主流になりましたが、描いた絵をそのまま複製できる特性からリトグラフはより芸術的な目的のために使われるようになり、版画の技法として認められるようになりました。平らな石板や金属板に描画し化学反応や水と油の反発力を用いて紙に転写することから「石版画」とも呼ばれます。当ページで紹介している図版は全てリトグラフです。

デリエール・ル・ミロワール No.198
左:『デリエール・ル・ミロワール No.198』1972年刊 / 右:《冬の後》 『デリエール・ル・ミロワール No.198』より

オリジナル・リトグラフとは
オリジナル・リトグラフは画家自身の手によって制作したリトグラフのことです。単体の版画作品として発表される他に、挿絵本や刊行物に付録することもあります。後者の場合には、所有者によって本来収まっていた本から切り離されて額装されることも多く、出版されたままの形でオリジナル・リトグラフが収録されている挿絵本は希少となっています。

芸術家がオリジナル・リトグラフを制作するときは自身の芸術的意図をより正確に実現するために、リトグラフ工房の職人と二人三脚で制作にあたりました。20世紀当時、芸術家から最も大きな信頼を得たリトグラフ工房がパリのムルロー工房です。ムルロー工房が担当する芸術家にはシャガールの他にピカソ、マティス、ミロらがいます。ムルロー工房は現在でもその名を変えながらもリトグラフの制作を続けています。

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左:《春の日》『デリエール・ル・ミロワール No.198』より / 中:《ダフニスとクロエ》『バレエのためのデッサンと水彩』より / 右:《白鳥の湖》『オペラ座の天井画』より

『デリエール・ル・ミロワール』“Derriere le Miroir”とは
「鏡の裏側」を意味する雑誌『デリエール・ル・ミロワール』は、第二次大戦直後にパリに画廊を開いたエメ・マーグ(Aime Maeght)が創刊した戦後を代表する美術誌です。マーグの画廊で開催される展覧会の特集や作品カタログを兼ね、1947年から1982年の最終号(253号)まで毎年3~8冊が刊行されました。
他誌が及ばない最大の魅力は、各号が特集する芸術家の版画を挿絵として収録していることです。版画を提供した芸術家にはシャガール、ミロ、ブラック、ジャコメッティ、カルダー、レジェ、ヴァン・ヴェルデ、チリダ、タピエス、ケリー、スタインベルグといった20世紀を代表する巨匠から、現代美術の大家が名を連ねています。
デリエール・ル・ミロワール No.147
左:『デリエール・ル・ミロワール No.147』 / 右:《無題》『デリエール・ル・ミロワール No.147』 より
デリエール・ル・ミロワール No.225
左:『デリエール・ル・ミロワール No.225』1977年刊 / 右:《村》『デリエール・ル・ミロワール No.225』より
デリエール・ル・ミロワール 10周年記念号
《女曲馬師》『デリエール・ル・ミロワール 10周年記念号』より

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