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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.205『私のカレーを食べてください』幸村しゅう/小学館

蔦屋書店・作田のオススメ 『私のカレーを食べてください』幸村しゅう/小学館
 
 
これ読んでみたい!って思って本を手にする瞬間には、実は様々な理由が隠れているものです。
その理由というのは、わたしにとっては好きな作家や本のジャンル、または本好きの友達や知人に勧められた、というものだったりします。
または、わたしが好きなもの、例えば食、本、映画、音楽、ラジオ等だとほぼ反応してしまいます。
この作品の主人公がカレーにハマったように。
 
主人公成美は幼い頃両親が離婚、父親が引き取り手となりますが、その父親も成美を祖母に預けて行方しれずになってしまいます。
 
それでも小学校に入るまでは何不自由なく育てたられたのですがそれもつかの間、
成美に愛情を注いできた祖母には認知症の兆候が現れ始めてしまい、共に暮らすことが難しくなります。
 
児童養護施設で暮らすことになった前日の夜、荷造り等手伝ってくれたクラス担任の先生が作ってくれた料理はスパイスを駆使した本格的なカレーライス。
辛味も半端ないであろうその味にハマってしまいます。
 
入所した施設での居場所は決まって調理場でした。
そこで出会った調理員の宮さんが言うセリフは
「まずはきちんと手を洗いなさい」
そして手をマッサージしながら、
「優しい手を作ること。その手で作った料理が食べた人の栄養になって、みんなの体を大きくするんだから」
そして締めくくりは
「料理を食べる人の顔を思い浮かべなさい。そしてその人が健康で、元気で、笑顔になる料理を作りなさい」
なのです。
 
この言葉を心に受け止め調理師免許を取るためと、施設の入所は18歳までと決まりがあるため、人生初の一人暮らしを始めることになるのですが…
 
出くわす登場人物たちがこれでもかというくらいの曲者だらけなのです。
まず部屋を借りるために訪ねた不動産屋が入っているビルで弁護士をしている自称トヨエツこと豊永悦之。金色に染めた髪とピアスが目立つ調理師学校で唯一話し相手になってくれるチャラ山こと村山等。朝から晩までカレーを食べ続け、カレーの香り満載の成美も実は相当曲者かも。
 
「麝香猫」(じゃこうねこ)という変わった名前のカレー一品のみ出しているお店と、
無口なマスターとの出会いによって、ますますカレーの虜になり、オリジナルのカレーを完成させたいという夢を叶えるため邁進する姿に思わず応援したくなるのです。
そんな中、人間不信に陥りそうになったり、爽やかなイケメン男子?と恋に落ちそうになったり、順調にすすんでいたことが頓挫したり等一筋縄では行かない場面もありますが。
決して挫けず、夢を持ち続け、そのために今できることに取り組むことの大切さを教えてもらいました。
 
もちろんカレーを食べたくなることは間違いありません。

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