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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.306『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン、櫻井祐子 訳/サンマーク出版

蔦屋書店・小野のオススメ『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン、櫻井祐子 訳/サンマーク出版
 
 
自己紹介の時に大抵こう言う「趣味ダイエット。特技リバウンド。」
愛読しているジェーン・スー著作タイトル「貴様らいつまで乙女でいるつもりだ」如くいつまでも「乙女」への願望、執着はなくならない事は否めない。
「たったこれだけ」とか「〇日でこんなに」…という本を何冊買ったことだろう。そう!本を買ったところで実行しなければ結果は出ない。いやある程度やっても早急な結果が欲しいだけの私は、本を所有したことによって(スポーツもウエアから入るタイプ)「理想の自分」が勝手に脳内で出来上がってしまい、調子乗って本を片手にお菓子食べている。(ふりだしに戻る)結局は「食欲」に打ち勝てない。薄々気が付いていたものの、意志の弱さに自己嫌悪を上塗りしてきて半世紀だ。
 
ちょうど糖質制限ダイエットに成功し二桁の体重が減ったと思ったら、見事に元通り貯金ゼロになり途方に暮れている時にふと本とタイトルと黒と黄色(危険警告色)に目が取られた。
「食欲人」というタイトル、そして何より帯の文言に目が止まった(帯の効果はやはり絶大なることを実感)帯にこうある。

 
「タンパク質欲しさに貴方はペンキまで食べる!?」
間髪入れずに
 
「あぁ私食べるかもペンキ」
 
すんなりとそう思った。
思ってしまったのだ。
そのこと自体かなりやばい。かなりやばい。
ペンキを食べてしまう前に何としてでも真実を知りたい!冒頭の昆虫をターゲットに進んでいく話に、虫嫌いゆえゾワゾワしながら読み進めたもののペンキ食回避の情熱と、矢継ぎ早の驚きと納得の連続にあっという間に読破できた。
 
著者は栄養生態学教授デイヴィット・ローベンハイマー氏と、生命環境科学部教授スティーヴン・J・シンプソン氏。
何ヘクタールもの畑の作物を食べ尽くすバッタ。そんな過食とも思われるバッタに太ったバッタがいないという冒頭に「なんで?なんで?なぜバッタは太らない?」とグイグイ読み進めることができる。
他の生物の事例に対しても何をどうやって、どれだけ食べているのか、そこに条件を与えるとどう変化するのかと言う地道で膨大な作業を紹介ししている。
彼ら、彼女らは誰に教えられたわけで無く、目の前にある物を食べ適切な栄養価、適切な量を摂取している。好きなものを食べ完璧な栄養状態にいるのだ。「太っている」「痩せている」ということで悩み、食事をコントロールしなければいけないのは私たち「人間」だけなのだと。
頭をハンマーで殴られるような生物学的事実が次々と仮定され検証実験が進んでいく。

 
栄養学は「生物学」であるというお二人の執拗な「何をどう食べたらどうなるのか」という事のみへのアプローチは、昆虫からマウス。マウスから人へ。ありとあらゆる生物への調査は50種を超え、研究に費やした時間は延べ35年。被験者を極端な条件のグループにわけて徹底的に両者の差に迫る。検証結果によって、今まで自分のしてきた闇雲な糖質制限や断食などの「選択」がなぜ効果が無かったのか、「欲」を打ち消す事ができなかったのかが分かる。故にこれからの「選択」が今までよりはeasyには思えてきた。(これが本当にeasyだとしたらここまで悩んではいないが)生態上必要な体型はその生物各々によって違う。太っているバッタいないし、痩せているオラウータンはいない。それはその生態各々に必要な「選択」をしているからに他ならない。
「太っている、痩せている」ではなく「太っていない、痩せていない」なのだ。「選択」が重要であること。近代の食糧事情や物流と小売のプロパガンダに体重増加の起因の一端であることは、ウエイトコントロールに苦戦している私にとって(罠に引っかかりやすいタチであるという事は一旦置いといて)「自身の過失だけが原因では無い」と思わせてくれるのには都合が良い情報だ。とはいえ安堵することなく「ペンキ食」回避のために、若干easyと感じる事ができる今。「鉄が熱い」内に、昆虫や動物たちの栄養摂取の「選択」を「私」という被験者で著者さながらの検証実験をし、経過観察していきたいと思う。
 
 
 

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