フランス蚤の市
パリ・クリニャンクール蚤の市のこと
(蔦屋書店・コンシェルジュ 佐伯)
いまから30年ほど前の冬のこと。私はイタリアにいた。前職は百貨店の三越に勤めており、そこで、あたらしい売場をつくるため、商品の買付けにきていたのだ。当時の上司から「足の踏み場もないグレード感、計算された雑然性が表現された売場を作れ」という指示があり、そのために、アンティークの家具・雑貨が必要だった。古色あふれ、時代を経て残ったアンティーク家具・雑貨は、新品の商品を際立たせるということが、わかっていたのだ。以前に,家具に食器を並べて売るという試みを行ったのだが、お客様の反応もよく売上もよかったのだ。
イタリアの次にはフランスを回る予定だった。ふとテレビをつけると、多国籍軍がイラクに空爆をしているというニュースが流れていた。気になって、いま日付を調べてみると、1991年の1月17日のことだった。
フランスへの移動に不安があったが、問題なく移動することができた。(帰国時に空港に足止めを食らうことになるのだが)当時三越はパリに2つの店舗をもっており、そこの画廊担当の社員がアテンドをしてくれた。リトグラフの仕入れをまず行った。300枚ほど仕入れたが、その中でブラジリエの150万のリトグラフがもっとも高価なものだった。
その後、今回の仕入れのメインであるパリの北部クリニャンクールの蚤の市に向かった。そこでフランスのアンティーク家具や雑貨を買いつけする計画だ。腹が減っては、と思い、まず蚤の市の手前のレストランに入ったのだが、入った瞬間に驚いた。店内のテーブルや椅子、小物などに100年前以上のものと思われるアンティークの品々が使われており、それがアンティークでもなんでもない食器類と見事に調和をしていた。アンティークの品々が食器類をより魅力的にみせていた。あたらしい売場で実現する方向性がより明確になった瞬間だった。
クリニャンクールの蚤の市には、ありとあらゆるものがあった。古い書籍、地図・写真、椅子、サイドテーブル、古い旅行鞄、アクセサリー、人形、洋服、絵画(額に入っておらず、まるめた状態で無造作に筒に入っていた)。どう見てもガラクタに思えるようなものもあった。パリ国立図書館に置かれていたという高架の書籍をとるための2メートルほどの高さの階段までもがあった。そして、世界中のバイヤーや観光客であふれかえっていた。この熱気や楽しさ、にぎわいを三越の売場に取り入れたいと思った。目を皿のようにして品々を眺めた。興奮はしているが、我を忘れないようにした。あくまで目的は売場にあう商品を選ぶこと。ただ、やはり、興奮し過ぎていたのかもしれない。高さ2メートルの階段を購入してしまった。三越の店内で、そのアンティークの階段を登ると、画廊につながるということができれば、お客様に驚きを与えることができると思ったのだ(結局、消防法の関係でそのもくろみは実現できなかった)。
買付け後、アンティーク家具を配置した売場図面を書いて、売場のイメージを膨らませた。わかりやすさよりも、賑わいを重視させるため、商品を山積みにして、そこから自分の好きなものを探しだす楽しさを演出した。あたらしい売場は、賑わいのある売場となり、これまでの購買層よりも若いお客様も訪れるようになった。それから6年間、定期的に商品の仕入れでヨーロッパをたずねた。いろんな国で買付けを行ったが、やはりフランスの蚤の市に訪れるときの高揚感は変わることはなかった。
今回蔦屋書店で、「フランス蚤の市」フェアを開催することになった。パリ・クリニャンクールの蚤の市を訪れたときの高揚感・楽しさ・賑わいを少しでもお客様に感じていただきたい。
【コンシェルジュ プロフィール】
佐伯勝幸(さえき かつゆき)
広島 蔦屋書店 暮らしコンシェルジュ
百貨店の三越広島店で家具のスペシャリストとして、42年間勤務した。
家具から派生する食器などの生活雑貨全般にも造詣が深い。
日本各地の職人の方と深い関係性を持っている。
広島 蔦屋書店には、立ち上げから参画している。
【「フランス蚤の市」フェアにご協力いただいている店舗・作家さま一覧】
Re : come across(リ・カムアクロス) アンティーク家具・雑貨
広島豊栄で築80年の古い診療所を店舗に営業をしている。フランス・イギリスで見つけたアンティークの家具の販売・レンタルをしている。
コンシェルジュ佐伯のひとこと「本当のアンティークがこの安さで買えるのは驚きです。イギリスのアンティークはよく出回っているのですが、フランスのアンティーク家具がこれだけ一同にそろっているのは始めてみました。」
Charment(シャルマン) ヨーロッパヴィンテージ古着・雑貨
広島横川の古着屋さん。フランス・ドイツをはじめとしたヨーロッパヴィンテージのレディース・メンズの古着・雑貨を取り扱っている。
コンシェルジュ佐伯のひとこと「とにかく楽しいお店です。広島でヨーロッパの古着がここまで充実しているお店はないと思います」
flua
世界中から集めたヴィンテージパーツを使い、1点物のアクセサリーを製作しています。
コンシェルジュ犬丸からのひとこと「ヴィンテージパーツをリメイクしたアクセサリーは懐かしいながらも新しい息吹を感じます。」
ayako.ceramics
'身につける陶芸'をテーマにアクセサリーを制作しています。
コンシェルジュ犬丸からのひとこと「陶器で作られたパーツもとろけるような釉薬の色合いも、同じものはふたつとありません。それこそ既製品ではない証です。」
Torudo
淡水パールや真鍮、ヴィンテージパーツなどでアクセサリーを制作しています。広島の作家さんです。
コンシェルジュ犬丸からのひとこと「耳元でゆれるをイメージして作られたアクセサリーは楽しさを感じます」
https://ja-jp.facebook.com/Torudo/
チェリーテラス Jars
フランス南西部のリヨンで創設された伝統のある窯Jars(ジャス)。「実用的なものを美しく」という創業者ピエール・ジャス氏の理念、そして長年の伝統と技能を大切にしながら、美しい色と使いやすい形を伴ったストーンウェアを作り続けています
http://www.cherryterrace.co.jp/product/jars/index.php
Eurodeco(ユーロデコ) フランスヴィンテージ広告
1920年代~1950年代頃の当時のオリジナルマガジン広告をフランス各地より収集し、販売をしている。
- 期間 2月6日(火) - 3月4日(日)
- 時間 10:00~22:00
- 場所 1号館1F ギャラリースペース