【広島 蔦屋書店】熊本 南阿蘇 この場所から伝えたいこと
熊本地震から2年、南阿蘇から伝えたいこと
フェア開催に寄せて
ひなた文庫 中尾友治/竹下恵美
ひなた文庫は熊本県の南阿蘇を走る南阿蘇鉄道「南阿蘇水の生まれる里白水高原」駅の駅舎に週末だけ現れる古本屋です。
南阿蘇村は阿蘇山という火山がつくったカルデラの中にある村で、至る所に水や温泉が湧き、春から秋にかけては阿蘇の草原で牛や馬の放牧が行われる自然豊かな場所です。観光客も多く、近年では移住する人も増えてきました。
しかし、村には図書館も本屋もありません。村民は隣町の図書館に本を借りに行くかネットで欲しい本を注文する方が殆どです。
私たちはこの自然豊かな南阿蘇が大好きですが、図書館も本屋もないのはちょっと淋しい。
ならば、自分達でつくろうじゃないか!と二人で2015年の8月にひなた文庫を開業しました。
訪れる旅人やここに住む人、更に南阿蘇の自然を本屋というこの場所でひとつに繋げていきたい。住民にふらっと立ち寄ってもらい、旅人には思い出となる一冊を。
更にはその場に居合わせた人同士で自然と会話の輪が広がり、同じ風景を眺めそれぞれの思い出となる、そんなストーリーが生まれる地域の人と旅の人に開かれた本屋を目指しています。
開業からもうすぐ一周年を迎えようしていた2016年4月16日、熊本地震が起きました。幸い駅舎は無事でしたが自宅から駅舎までの道は寸断され約半年ほど営業が出来ませんでした。現在も南阿蘇鉄道の一部区間は線路の歪みなどの影響で一部区間が運休したままです。ひなた文庫のある駅には汽車はやって来ません。そんな状況のまま今年の4月16日で熊本地震から2年を迎えます。このタイミングで蔦屋書店広島店にてフェアを開いて頂けるのはとても感慨深いものがあります。広島は私達が学生時代を過ごした街。地震のことを忘れず、見守って下さっている方が遠く離れた広島にもいるんだ、と勇気付けられています。
今回のフェアではひなた文庫が普段から店頭に並べている本を厳選してお届けしています。作品が持つ魅力だけでなく、全体の選書を通して「村の小さな本屋」、「旅の人がふらっと立ち寄る本屋」という二面性、南阿蘇で本屋を続ける意味、も同時に感じて頂ければ嬉しいです。また、「TAKAraMORI」や「九州の食卓」の力をお借りして南阿蘇で丁寧につくられている自慢の特産品もご用意しています。南阿蘇の自然の恵みを感じて頂ければ幸いです。
地震で崩れた山肌や橋、復旧していない道路、手付かずのままの場所もまだあります。しかし以前と変わらない風景や自然もまたたくさん残っています。春になれば桜は咲き、それを愉しむ人がいて、蛙は冬眠から目覚め、田には水が張られる。南阿蘇での暮らしはそうやって過ぎていきます。
南阿蘇鉄道は今年の3月にようやく線路の復旧工事が再開されました。全線開通は4年後。ゆっくりと再生していく地域を感じ、今も私達は再び来る汽車を待ちながら営業しています。
- 期間 4月11日(水) - 5月17日(木)
- 場所 1号館1F 広島 蔦屋書店