【フェア】
ソーシャルメディアとデジタルテクノロジーを考える

人文
1号館1階 湘南 蔦屋書店 2022年02月12日(土) - 04月10日(日)

今世紀に入り形容できないほど急激に私たちの日常に影響力を及ぼすようになった
ソーシャルメディアとデジタルテクノロジー。
いま私たちの身体や思考、そして社会や文化にどんな影響と問題が生じているのか
「深く」読んで考えるため、5つのテーマで各4冊ずつ選書しました。

紹介している書籍は、オンラインショップ(湘南 蔦屋書店ヤフー店)にてご購入いただけます。
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テーマ 1
明暗と功罪

ソーシャルメディアの生態系
オリバー・ラケット(著/文), マイケル・ケーシー(著/文), 森内 薫(翻訳)

 

「ホロン」と「ミーム」というキーワードを用いて有機生命体とのアナロジーでてソーシャルメディアの「進化論」を見事に描き出しています。もちろん「進化」というものは本作で繰り返し指摘されているように、必ずしも私たちに利益をもたらす「進歩」になるとは限りません。ソーシャルメディアの全体像を知るためにはまずこれから。

操られる民主主義
ジェイミー・バートレット(著/文), 秋山 勝(翻訳)

 

もともと脆弱であり、成熟しているとはとても言えないデモクラシーがソーシャルメディアとデジタルテクノロジーの影響のもと崩壊の危機に瀕している。生態系としての全体像を俯瞰するのではなく、眼前にある事実に目を向けるならこうした診断が妥当である。『ソーシャルメディアの生態系』とセットで読むことをおすすめします。

GAFA next stage
スコット・ギャロウェイ(著/文), 渡会 圭子(翻訳)

 

ベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者スコット・ギャロウェイ氏の続編。コロナ後に対する説得力に満ちた予測と的確な社会状況への批判を通じてGAFAと現代社会の明暗を切り分け、今後の課題を浮き彫りにする。

ele-king臨時増刊号
仮想空間への招待──メタヴァース入門

ele-king編集部(編集)

 

あらゆるジャンルの有識者たちによって、現在最も多角的にメタヴァースに関して語られている一冊です。まさにメタヴァースを語る上でこれ以上ない条件で編まれています。数年後にエポックメーキングな一冊として懐古されることは間違いないでしょう。

テーマ 2
操縦と隷属

監視資本主義
ショシャナ・ズボフ(著/文), 野中 香方子(翻訳)

 

監視資本主義の成功の歴史がそれをもたらした諸要因とともに詳らかに描かれる。それは民主主義の理念の政治哲学的、法哲学的、道徳哲学的な実質的崩壊である。本書ではその悪魔的な「成功」の諸要因が人類にとって必然的でも不可避なものでもなく、そこから利益を得る者によって巧みに誘導され作られたものあることが確認できる。まさに必読書です。

プライバシー・パラドックス
データ監視社会と「わたし」の再発明

武邑 光裕(著)

 

急速なデジタル化に対して個人のプライバシーをどう定義し、尊重し、保護するのか。人びとはまだそのことに関して何も準備ができていない。プライバシー概念の歴史をたどると、それが自己決定や自律と深い関係にあることの重要性を痛感する。そしてそれゆえの現代的問題も。監視社会におけるプライバシー、自律、所有権とは。

格差の自動化
ヴァージニア・ユーバンクス(著/文), ウォルシュ あゆみ(翻訳), 堤 未果(解説)

 

公的扶助受給者に対する偏見、差別、誤解を招く虚偽の情報によって、限られた資源をめぐるゼロサムゲームを戦わなくてはならないと考えるよう仕向けられる状況は日米に共通している。効率を高め、不正を防ぎ、より多くの人道援助を成すとうたう福祉制度のデータ化とプログラム化は、貧困の懲罰化と生の選別でしかなくなる。「生政治」の実態を現場から報告。

僕らはそれに抵抗できない
アダム・オルター(著/文), 上原 裕美子(翻訳)

 

依存症の人がその事実を「否認」する、ということは周知の事実ですが、自分のことになるとやはり「否認」するのが人間です。誤解の多い依存症のメカニズムを解明しつつ、現代のメディア技術に由来するあらゆるタイプの依存症を紹介。依存症全書という感じで、読み物として単純に楽しめます。

テーマ 3
逃走と抵抗

デジタルで読む脳 × 紙の本で読む脳
メアリアン・ウルフ(著/文), 大田直子(翻訳)

 

原題はREADER, COME HOME. 「読者(読み方)、わが家へ帰ろう」。またcome home to 人で「胸の奥に響く」という意味もある。ある作家の言葉を引き「本はわが家だ――あなたが愛し、大切にできる、現実の実体なのだ」と訴える。奥深い読書体験にはフィジカルな物理的次元が脳科学的にも不可欠なのだという。デジタル媒体の最大の被害者である子どもたちを救うことはできるのか。

退屈とポスト・トゥルース
SNSに搾取されないための哲学

マーク・キングウェル(著/文), 上岡 伸雄(翻訳)

 

「退屈」は「欲望」を生み出す「創造」の源泉でもあるのだが、しかしスクロールやスワイプの絶えざる繰り返しは、欲望が満たされる可能性自体を否定する。こうしたインターフェースが生み出す永続的に先延ばしにされる「退屈」を「ネオリベラル的退屈」と筆者は名付ける。「つながりっぱなし」の現代社会から人間の生を問い直し、現代の危機をあらわにする。

何もしない
ジェニー・オデル(著/文), 竹内 要江(翻訳)

 

「人間であることへの最後の賭け」として著された本書。
これ以上は何も説明しません。
とにかくおすすめです。

天然知能
郡司ペギオ幸夫(著/文)

 

何でも調べればわかるネット空間になぜ私たちは本屋にいるときのようにワクワクしないのだろうか?自然に囲まれた時のような「ときめき」を感じないのはなぜなのか?不思議に思っていましたが、これを読んで納得しました。デジタル時代のセンス・オブ・ワンダー。

テーマ 4
虚実と扇動

フェイクニュースを科学する
笹原 和俊(著/文)

 

エコーチェンバー、フィルターバブル、アテンション・エコノミーなど基礎的知識の概要や仕組みを心理学などの実証研究を参照しながらデータやグラフを用いてわかりやすく説明してくれます。メディアリテラシーを付けるために最もおすすめできる一冊。最新情報を加えての文庫化です。

アンチソーシャルメディア
シヴァ・ヴァイディアナサン(著/文), 松本裕(翻訳)

 

メディア論の歴史研究家によるソーシャルメディアの批判理論として、他とは一線を画した読み応えのある作品です。知識豊かで、示唆にあふれ、啓発的であり、知性の奥深さを感じさせる本作。類似書の数多ある中でも「まだこれほど面白いものが書けるのか」と驚嘆とともにうれしくもなってしまいます。これこそ人文学だと言いたくなる一冊です。

サイバーハラスメント
ダニエル・キーツ・シトロン(著/文), 明戸 隆浩(監訳 | 監訳), 唐澤 貴洋(監訳 | 監訳), 原田 學植(監訳 | 監訳), 大川 紀男(訳)

 

従来からある「ハラスメント」や「ストーキング」の被害はネット環境によって飛躍的に悪化する。「サイバー」という接頭辞はその事実を表している。「サイバーハラスメント」は社会に受け入れられ安心していられるという人間の尊厳を破壊しつくす。だからこそ、その告発は現在緊急に救済が求められる人間の尊厳をかけた最前線なのだ。

イメージは殺すことができるか
マリ=ジョゼ・モンザン(著), 澤田 直(訳), 黒木 秀房(訳)

 

ソーシャルメディアへの公権力による規制には強い警戒心を抱くものが多い(『退屈とポスト・トゥルース』の著者は例外的に規制派で個人的には賛成だが)。ならばどうするのか?問題となる言説やイメージの周りに、その問題を考察し語り合う「共同体」を形成する、というこの書のアイデアは唯一の有効な方法だと思う。

テーマ 5
接合と混成

技術と文化のメディア論
梅田 拓也(編集), 近藤 和都(編集), 新倉 貴仁(編集)

 

私たちの身の回りにある日常的な文化現象はあらゆる技術によって支えられている。技術に注目し文化を研究することで、私たちの日常のあらゆる場面は驚くような発見で満ち溢れていることに気が付く。しかし、技術を考察するとはなぜこんなに面白いのだろうか?豊富な文献リストも付いていて一冊は持っておきたいテキストです。

メディオーム
吉田 健彦(著/文)

 

シミュラークルとシミュレーションで世界が覆いつくされたからこそ、デジタル化以前からそうであった人間存在の本源性を「存在論的メディア論」として明瞭に描くことが可能になったのかもしれない。「他者原理」に基づいた議論が展開され「デジタル・ネイチャー」などという言葉に我慢ならない方々にとっては「スカッ」とする内容となっています。

生命知能と人工知能
AI時代の脳の使い方・育て方

高橋 宏知(著/文)

 

複雑な計算に紙とペンが必要なように、人間の思考は外部的道具と結びついたときにもっともよくその機能を発揮できる。私たちは「生まれながらのサイボーグ」なのだ。急速に発展し続ける外的補綴(ほてつ)道具の知能と私たちの知能の違いを知り、良い関係を築くことはいまや自己陶冶に不可欠なアートとなった。

あなたが消された未来
ジョージ・エストライク(著/文), 柴田裕之(翻訳)

 

効率化と生産性という価値評価が指数的に増し求められていく世界に私たちがとらわれるほど、「正常」という言葉の孕む問題は増しつつもますます見えにくくなっている。そこから漏れた存在はただ遺棄されていくばかりだ。21世紀のテクノロジーによって破廉恥なほど隠微かつ露骨になっている「生権力」の発露を私たちは自覚しなくてはいけない。

  • 会期 2022年2月12日(土)~4月10日(日)
  • 時間 8:00-21:00
  • 場所 1号館1階 湘南 蔦屋書店
  • 主催・問い合わせ先 湘南 蔦屋書店 0466-31-1510(代表)

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