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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.207『道具と料理』相場正一郎/ミルブックス

蔦屋書店・竺原のオススメ 『道具と料理』相場正一郎/発行  ミルブックス/発売  サンクチュアリ出版
 
 
我々人間は勿論の事、ありとあらゆる生きものにとって必要不可欠な“食べる”という行為。
基本的に皆さん食事は毎日されていると思いますが、毎日する事だからこそ惰性や義務感からではなく、自分の心や体を豊かで満ち足りたものにしてくれる様な食事をしたいと思うのは当然の事だと思う。
 
しかし一言に食事と言っても、そこには様々な要素が介在して成り立っている。
つまり、単に何を食べるかだけではなく、手元にある食材を使って何の料理をつくるか、その料理をどんな調理器具で作るか、はたまた作ったものを何に盛り付けるかであったり、その盛り付けたものをどんな箸やフォークで食べるか、あるいはどんな椅子に座って、どんなテーブルで食べるかといった具合に、食事というのはいわゆる“食べ物”という要素だけではない、複合的な要素から成り立つ面がある。
その意味で本作は、まさにそんな複合的な“食べるという事”について書かれた、食にまつわる時間の質を上げてくれる素敵な一冊である。
 
著者の相場正一郎さんは高校卒業後すぐにイタリアへ料理修行に赴き、帰国後代々木公園にほど近い場所に「LIFE」というイタリアンレストランを開店した。
以来2軒目のお店「LIFE son」を含め全国で4店舗の運営をされており、またその店々は単なる料理屋ではなく“カルチャーをつくる店”としても大評判だ。
 
そんな相場さんにはこれまでの料理人人生で、あるいは一人間として“食べるという事”に相対して来られた中で、何故か使い続けてしまう魅力的な道具の数々があり、本作はそんな思い入れのある道具たちとその道具たちとのエピソード、そしてそこから想起されるレシピが一度に味わえる何とも美味しい内容で構成されている。
エッセイ集でもなく、レシピ本でもなく、ビジュアルブックでもない。
それぞれの本が持つ良いところを凝縮した様な満足感を感じられる。
 
この本のタイトルは『道具と料理』である訳だが、私が特に好きだったのはこの本が“道具”の方を入口として料理に繋がっている(様に感じられる)部分だ。
恐らくそれは、あえて題名を『料理と道具』としなかった事からもそうなのだろうと思う。
人が愛用する“モノ”をまじまじ見ると言うのは、何だかその人の人生を垣間見る様である意味赤裸々ですらあるが、だからこそ興味が湧くし、読み応えがある。
 
皆さんにも一人一人の「道具と料理」があるかと思うが、それをまとめてみたりすると日々の“食べるという事”に対する意識が変化して来る事と思う。
 
 
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