【広島 蔦屋書店】ふれるアート つなぐアート vol.3 「イメージとことば」

フェア・展示
2号館1F アートスラットウォール
アート平台 2023年04月19日(水) - 06月20日(火)
ふれるアート つなぐアート
イメージとことば

 
心に浮かんだイメージを伝えるとき、具体性を求められる日常がある。
だがしばしば、受け手の心をつかんで離さないのは、伝わりにくいアートという抽象的な表現ではないだろうか。
ある人は絵画や彫刻で、ある人は音楽で、踊りで、そしてある人は詩で。
そこには表現者と受け手をつなぐ、自由な心と身体があるだけなのだ。

3回目を迎えた「ふれるアート つなぐアート」では、「イメージとことば」をテーマにフェアを開催します。
今回、ご紹介する3名の作家は、時には具体性を持ったことばすら解体し抽象的なアート作品を生み出します。そして、アート作品とともに手に取っていただきたい詩や短歌を選び展開しています。詩や短歌もまた、ことばのアート作品と言えるのではないでしょうか。目に見えるものだけではない作家の心を、それぞれが自由に感じて欲しいのです。
 
広島 蔦屋書店 アートコンシェルジュ 犬丸
 
 
 
今回のフェアに合わせ「アートをもっと好きになってほしい」という思いから、おすすめの本を1冊ずつ選んでいただきました。 作家の皆さんがどんな本選んでくれたのか、それぞれのお勧めコメントとともにフェアでぜひご覧ください。
 
作家紹介
入江 早耶 IRIE Saya
Instagram|@iriesaya
古川 諒子 FURUKAWA Ryoko
Instagram|@ryoko_furukawa_
亀川 果野  KAMEGAWA Kano
Instagram|@kano_kamegawa

 
特設オンラインストアはこちら
 
 
インタビュー
 
作家の皆さん自身と生み出される作品について、もっと知りたいと思いインタビューをいたしました。
フェアに展示されているアート作品を、もっと好きになっていただけそうです。
 
入江 早耶
IRIE Saya
 
(1)作品を制作しはじめたきっかけを教えてください。
ダストシリーズは2006年ごろから作り始めました。
平面から立体へ、次元を移動できるような作品を考えていたのがきっかけでした。
もともと日常的な素材を扱うことに関心があったのですが、どういった表現方法が一番良いのか試していく中で、絵を消しゴムで消すと二次元に描かれていたものが消えて、三次元の世界に消しカスとして出てくるということに着想を得て、この一連のシリーズを制作しています。

(2)出展されている作品について教えていただけますか?
《薬魔地蔵ダスト》は古い薬袋を消しゴムで消し、袋の絵柄から消しゴムのカスと治癒の願いを抽出して魔像のカタチを造形したものです。
魔像は疫病をばらまく邪神をあえてまつることにより、疫病退散を願った江戸時代の伝承からインスパイアされたものです。
《薬魔地蔵》は、立体化した薬魔地蔵たちを御札風の版画にしました。
いずれも2020年から続くコロナ禍という現代性に応答した作品です。

(3)作品制作で大切にしているポイントはありますか?
一言でいうと、「輪廻転生」がポイントになるのではないかと思います。
動植物や鉱物にはそれぞれの寿命があり、それは宇宙が始まってから現在までの理だと思いますが、私はかたちを失ってもそのものに宿った命には終りがないと考えています。
姿を変えながら目に見えないところで存在し続けているという思想が私のコンセプトであり、作りつづける力になっています。

(4)入江さんの作品におけることばとイメージの関係性について教えてください。
私にとって二つの関係性は、具体的にコンセプトとビジュアルということになります。
作品が成立するために切っても切り離せないものだと思います。
これまでコンセプトは背景にあることがほとんどでしたが、最近では短編小説を作品の一部として書くこともあるので、ことばの重みをより感じているところです。
 
 
 
古川 諒子
FURUKAWA Ryoko
 
(1)作品を制作しはじめたきっかけを教えてください。
言葉への憧れが大きな動機となっています。
例えば「りんご」という文字があると、赤いりんご、青いりんご、齧りかけのりんご、兎型に切られたりんごと、人によって思い浮かべるイメージは違うことと思います。しかしりんごの絵を描こうとすれば、そのどれを描くか選ばなくてはなりません。そうする度に私は、人から想像する機会を奪っているような気がしてなりませんでした。そこから制作のプロセスの言葉を取り入れ、2020年ごろから現在の手法に辿り着きました。
 プロセスとして、英単語帳や扇風機の説明書、ピアノの教本など身の周りにある本をハサミで切り刻み、文章を入れ替えて再構成した言葉を作り、それをもとに絵を描くという方法です。最初は自分で考えた言葉(玄関、新聞記者、走る等)をランダムに選び制作していましたが、モチーフの繰り返しに気づき、他者が書いた文章を使用するプロセスに変えました。そうすれば自分が描くはずがなかったモチーフを描く契機となり、言葉と絵画の相互関係を考察できるのではないか、と考え制作しています。

(2)出展されている作品について教えていただけますか?
今回出展している作品は、受験期に使用していた英単語帳を使用しています。
単語用例の翻訳のため、「彼らは新しい種類の音楽を想像した」や「次の打者は誰ですか」など少し変わった文章が多いです。これらの文章をハサミで切り刻み、主語・述語・修飾語などおおまかに分け、文章を再構成します。その後、できあがった言葉を中央にすえたマインドマップを制作します。例えば「タバコ会社の人間を観察する」という言葉の場合、タバコとはどこのメーカーなのか、人間はどういった容姿なのか、観察する場所はどこなのか、想像を広げます。その中からタバコを選んだり、人間に注目したり、マインドマップの一部を選んで描いています。

(3)作品制作で大切にしているポイントはありますか?
全てをコントロールしないことです。他者の言葉を手がかりにモチーフを選んでいるので、ある分野の言葉を特定することはできません。また、私が行っているステイニングは、水を布に染み込ませて描く技法で、乾燥などを理由に季節や温度の影響を大きく受けます。よく空調の効いた部屋で描くと、少し目を離すと自分では想像できなかった染みができます。しかし、あえてそれに合わせて絵を変えることもあります。絵具が滲むのでシャープな形が作れず、、描いても描いてもモチーフが溶けてなくなっていく感覚があります。その扱えなさが最も大切で、自らの意思と関わらずに進み続けることにしています。

(4)古川さんの作品におけることばとイメージの関係性について教えてください。
これまでお話した私の制作における「文章」および「言葉」は、「タイトル」の役割も果たしています。作品が出来上がったあとにタイトルを命名するのではなく、タイトルを起点として制作することで、言葉とイメージの相互関係を探っています。無数の言葉が作られるという意味で、全ての書籍が収蔵されているという「バベルの図書館」と似ています。その無数の書籍を使って絵を描けば、同じだけ、あるいはそれ以上の絵を描くことができる「バベルの美術館」が作れるのではないかと仮定を立てています。そうすれば、この世のものを描き尽くすことができるのではないかと考えています。
 私にとって、言葉はなにより信頼できるものではありますが、同時に言葉や物語にはどうしても敵わないという、強い劣等感や嫉妬の感情があります。どのように言葉とかかわるのか、それは絵画でも成せるのか、それを一生の仕事としたいと思っています。
 
 
 
亀川 果野
KAMEGAWA Kano
 
(1)作品を制作しはじめたきっかけを教えてください。
絵を言葉で説明することにずっと違和感を持っていたことがきっかけです。

(2)出展されている作品について教えていただけますか?
絵と言葉の持つ要素を、言語的に振り直し、関係性を繋げる試みを行っています。
絵画の質感、絵肌をテクスチャと言います。textとtextureは語源に遡ると、ラテン語の「織る」=texereに由来し、両者が五感に触れて物的質感を共に有することを想起できると考えました。

(3)作品制作で大切にしているポイントはありますか?
出発地点がビジュアルから考えることが多いので、作品の方向は言語化しすぎないように考えたいと思っています。

(4)亀川さんの作品におけることばとイメージの関係性について教えてください。
相互が違った方向から対象に接近しているため、行き着く対象が同じものでも、根本的には違った質の情報であり、緊張感があって、複雑で絡まりやすいものだと感じています。
 
 
 
 
HAGW
2023年4月29日(土)~ 5月7日(日)

Hiroshima Art Galleries Week 2023(HAGW)は、今年発足したアートイベントです。
もっと身近に広島のギャラリーやアート鑑賞を楽しんでいただくために、広島市内を中心としたギャラリーが連携して多種多様な展覧会やイベントを同時開催していきます。
本企画共催のTHE POOLもHAGWに参加しています。
 
詳細はこちら
 
 
 
 
【共催】
THE POOL(プール)
THE POOLは広島市中区にある築60年の木造アパートの一室を改修したアートスペースです。
領域横断的な企画展・イベントやプロジェクトを実施し、ひらかれたアートの実践・批評の場として芸術文化のプラットフォームを目指します。
 
 
【協力】
ナナロク社
こんにちは!ナナロク社です。
ナナロク社は2008年設立の出版社です。
東京の小さな私鉄・池上線の旗の台という町で、詩集、写真集、エッセイ、マンガと、ジャンルは様々ですが、どれも「詩心」をたっぷりつめた本づくりをしています。
「本屋さんでたまたま手にした一冊が、いつか、その人にとっての特別な一冊になる。」
そんな本を作りたいと日々を奮闘しています。
 
 
「ふれるアート つなぐアート vol.1」 は こちら
「ふれるアート つなぐアート vol.2」 は こちら
 
  • 期間 4月19日(水) - 6月20日(火)
  • 場所 2号館1F アートスラットウォール
    アート平台

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