【5周年】19人のコンシェルジュ 濱崎[写真]
私と本、私と梅田 蔦屋書店
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸われし
十五の心
空に吸われし
十五の心
石川啄木の有名な短歌です。私にとって本とは、この短歌のようなものです。
心が自由でのびやかで、それでいて、つかみどころのない不安もないまぜになって想像力を膨らませてくれるものです。
本好きが皆そうであるように、私は幼いころから本を読むことが好きでした。
父の書棚にあった吉川英治全集の「三国志」や「宮本武蔵」などは、文字通り寝食を忘れて読みふけりました。昔の本なので、独特の匂いや、ときにはちいさな紙魚がいたりしましたが、その手触りは今でもよく覚えています。また、碌にわからない思想書を友人と青臭く語り合ったことも。このような時間は、想像力が無限にひろがっていく気がしたものです。
しかし、「本を読むことが好き」だけでは、仕事にはなりません。
私は写真コンシェルジュですが、若いころに体験した、手触りや人との出会いを日々たいせつにしています。特に写真集は、さまざまな本のなかでも、このふたつが重要な要素です。梅田 蔦屋書店には、このふたつが溢れています。
私は写真コンシェルジュですが、若いころに体験した、手触りや人との出会いを日々たいせつにしています。特に写真集は、さまざまな本のなかでも、このふたつが重要な要素です。梅田 蔦屋書店には、このふたつが溢れています。
心が吸われるような写真集との出会いを、多くの方にしていただきたいと思っています。
梅田 蔦屋書店の5年間
「この1年で写真集を買ったことがありますか?」
この問いかけに、どれだけの方がイエスと答えてくれるでしょうか?よく書店を利用される方でも、写真集を買うことはまれではないでしょうか。
この5年間は、いかに写真や写真集に触れることが楽しいかを知っていただくことに、悪戦苦闘する日々でした。間口を広げるべく、スマホ撮影ワークショップを開催したり、テレビで話題になった写真家のフェアを開催したり・・・。写真家の直のことばに触れていただくトークイベントも毎回好評をいただいておりますが、過去には参加お申込みが10人を割るということもありました。そのときは自分の至らなさに落ち込みましたが、ある参加者がこう言ってくださいました。
「ここに来てイベントに参加したり、棚を眺めたりするたびにいつも新しい出会いや発見がある。今日もこのイベントを開催してくれてありがとう」。
今でも私が大事にしている言葉の財産です。これからも、人や写真集との新しい出会いや発見をたいせつに育み、そして、1年に1冊でもいい、手に取ってじっくりと眺めたいと思える写真集に出会っていただけるよう、その魅力を伝えていきたいと思います。
梅田 蔦屋書店を代表する一冊
書籍名:『明星』
著者:川島小鳥 出版社:ナナロク社
著者:川島小鳥 出版社:ナナロク社
台湾の人、動物、風景が(ちょっとヘンな)可愛さ全開で撮られた写真集。造本も凝っており、手にとって眺めたいナンバーワンの本でもあります。常に写真集の売上げ上位にあるだけではなく、著者の川島小鳥さんは、当店でのトークイベントの開催実績が2回あり、その意味でも梅田 蔦屋書店を代表する写真集といえます。
私を代表する一冊
書籍名:『Diane Arbus: An Aperture Monograph』
著者:Diane Arbus 出版社:Aperture
著者:Diane Arbus 出版社:Aperture
フリークスや、小人、巨人などを日常のなかでとらえた、モノクロのポートレイト作品集。人間の「普通」とは、「尊厳」とはなにかを写真をとおして初めて考えさせられた、もっとも大切な写真集のひとつです。LGBTなど現代の社会問題にも通じる普遍的な問いかけもあり、写真の持つ力を知ることができます。
コンシェルジュプロフィール
文学部美学科を卒業後さまざまな職を経たのち、2001年より大型書店に勤務し芸術書を担当。家族ができたことをきっかけに、写真を撮ることや写真集を見ることに夢中になる。ダイアン・アーバス、ロバート・フランク、植田正治、鬼海弘雄らの写真集に感銘を受け、写真や写真集の魅力を広く知っていただきたいと考え、梅田 蔦屋書店の写真コンシェルジュに。以降は、素晴らしい写真家たちとの出会いや言葉に触れていただくためのトークイベントを50回以上開催しつつ、一方で、書籍はもちろん、写真展示やグッズ、ワークショップ開催などをとおして、写真という面白ワールドへの垣根を低くしていく提案もおこなっている。
写真家としての顔も持ち、2015年には写真集『あと乃あと』(冬青社)を出版。2018年には大阪のgallery176で個展を開催し、同年TAIWAN PHOTOにも参加。現在も、二眼レフや大判などのフィルムカメラをお伴に作品を制作している。
比較的年齢を経てから写真の虜になった経験から、写真の伝道師となるべく日々奮闘中。
写真家としての顔も持ち、2015年には写真集『あと乃あと』(冬青社)を出版。2018年には大阪のgallery176で個展を開催し、同年TAIWAN PHOTOにも参加。現在も、二眼レフや大判などのフィルムカメラをお伴に作品を制作している。
比較的年齢を経てから写真の虜になった経験から、写真の伝道師となるべく日々奮闘中。
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