広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.355『踊る菩薩―ストリッパー・一条さゆりとその時代』小倉孝保/講談社
蔦屋書店・飯田のオススメ『踊る菩薩―ストリッパー・一条さゆりとその時代』小倉孝保/講談社
令和3年、中国地方唯一のストリップ劇場、広島第一劇場は46年の歴史に幕を閉じた。最盛期には日本全国で400館以上あったというストリップ劇場は、今や10数館程度となっている。
日本のストリップは独自の進化を遂げてきた。ストリップショーには物語があり、そこでしか味わえない舞台劇がある。美しく華やかな女性演者が音楽に合わせて衣装を脱ぎ、新たに作り出されていく世界に観客は魅了され癒されてきた。
同時にストリップは性を扱うショービジネスでもある。それゆえ常に取り締まりの対象とされ、昨年の11月にも大阪の天満東洋ショー劇場が大阪府警に公然わいせつ罪として摘発されたことは記憶に新しい。この事件に対し地元住民や有志がストリップは芸術として結束して、処分停止の書名活動を行った。わいせつ、芸術、公権力との戦いだけでなく、戦後の男社会とウーマンリブなどストリップ劇場には数々のドラマがある。そんな歴史の中に伝説と呼ばれたストリッパーがいた。彼女の名前は一条さゆり。本書の主人公である。
昭和47年、ストリッパーとして人気絶頂だった一条さゆりは大阪で引退公演を行った。そして、その引退公演の最中に公然わいせつの現行犯として大阪府警に逮捕される。彼女はひたすら自分の芸に打ち込み、そしてストリップを楽しむ観客に優しかった。まさにステージに身を捧げてきたのである。しかし昭和の男たちを喜ばせて生き抜いてきた彼女は、その男たちの社会によって裁かれることになる。そんな彼女の生き様は芸能関係者だけでなく、学生や労働者、フェミニストたちの心に響いた。彼女は一躍、時代の人になるも、それは転落の人生の始まりでもあり、ちょうど昭和から平成への時代の移り変わりといっしょでもあった。
一条さゆりの人生は、生まれてから亡くなるまで、貧困にアルコール依存、男性関係、虚言癖に苦しみ、けっして幸せだったとは言えない。しかし、ステージ上では観客を魅了し続け、男たちは彼女の秘部にいつの間にか手を合わせていたという。死後においても彼女を知る人は皆、微笑みながら彼女の話を懐かしむ。不幸ながらも、ストリップショーに生きて、慈しみ、癒してきた一条さゆりは、もしかしたら昭和に現れた本物の菩薩だったのかもしれない。
日本のストリップは独自の進化を遂げてきた。ストリップショーには物語があり、そこでしか味わえない舞台劇がある。美しく華やかな女性演者が音楽に合わせて衣装を脱ぎ、新たに作り出されていく世界に観客は魅了され癒されてきた。
同時にストリップは性を扱うショービジネスでもある。それゆえ常に取り締まりの対象とされ、昨年の11月にも大阪の天満東洋ショー劇場が大阪府警に公然わいせつ罪として摘発されたことは記憶に新しい。この事件に対し地元住民や有志がストリップは芸術として結束して、処分停止の書名活動を行った。わいせつ、芸術、公権力との戦いだけでなく、戦後の男社会とウーマンリブなどストリップ劇場には数々のドラマがある。そんな歴史の中に伝説と呼ばれたストリッパーがいた。彼女の名前は一条さゆり。本書の主人公である。
昭和47年、ストリッパーとして人気絶頂だった一条さゆりは大阪で引退公演を行った。そして、その引退公演の最中に公然わいせつの現行犯として大阪府警に逮捕される。彼女はひたすら自分の芸に打ち込み、そしてストリップを楽しむ観客に優しかった。まさにステージに身を捧げてきたのである。しかし昭和の男たちを喜ばせて生き抜いてきた彼女は、その男たちの社会によって裁かれることになる。そんな彼女の生き様は芸能関係者だけでなく、学生や労働者、フェミニストたちの心に響いた。彼女は一躍、時代の人になるも、それは転落の人生の始まりでもあり、ちょうど昭和から平成への時代の移り変わりといっしょでもあった。
一条さゆりの人生は、生まれてから亡くなるまで、貧困にアルコール依存、男性関係、虚言癖に苦しみ、けっして幸せだったとは言えない。しかし、ステージ上では観客を魅了し続け、男たちは彼女の秘部にいつの間にか手を合わせていたという。死後においても彼女を知る人は皆、微笑みながら彼女の話を懐かしむ。不幸ながらも、ストリップショーに生きて、慈しみ、癒してきた一条さゆりは、もしかしたら昭和に現れた本物の菩薩だったのかもしれない。