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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.258『特別じゃない日』稲空穂/実業之日本社

蔦屋書店・野津のオススメ『特別じゃない日』稲空穂/実業之日本社
 
 
このコミックには愛とやさしさが溢れています。
 
特別じゃない日常の中にある幸せが描かれたやさしさに包まれた短編集です。
老夫婦、女子高生、主婦、男子小学生、バイト青年、それぞれが主人公となって描かれており、それぞれが別々のストーリーなのに全話がきれいに繋がっています。その構成が特別じゃない人々の特別じゃない日々、私たちのすぐ近くにある日常を感じさせてくれる気がします。
 
全8話の短編の中で、私が特に好きなお話は「なりたい自分」。
コンビニで働きながら育児も頑張っている主婦友美とその母親の心温まる愛情のお話です。
母親は友美が子供のころに好きだったアニメの主人公が使っていた変身コンパクトのおもちゃを渡します。母親は毎日忙しくしている友美のことを少し心配しつつも特に何も言わず、友美と友美の子供たちの日常を見守っています。ある日その変身コンパクトがきっかけとなり、友美に自分の幼いころの母親との思い出がよみがえります。そして自分の子供にも母親がしてくれたことと同じことをしてあげたくなります。最後に母親が友美にあることをするのですが、そこを読んだ瞬間、胸がキューッとグーッとなりました。そこにはとても温かい愛情が溢れていて、私は涙を堪えることができなかったです。母親の愛情って子供が何歳になっても変わらないものなのでしょう。
このエピソードはここに描かれている家族のものですが、私にも幼いころの母の愛情を感じた瞬間がいくつもあり、母の私への愛情を改めて思い出すきっかけとなりました。
 
ほかにも、お風呂から飛び出してくる父親、新しいキャラクターが好きになったけどそれをうまく言い出せない男の子、おじいちゃんが大好きなおばあちゃんと照れ屋のおじいちゃん、猫を飼い始めた青年が登場します。みんな特別じゃないけどとても愛おしい存在です。そして、本当に身近にある日常のようで共感できるのです。
 
毎日は何気ないことの積み重ねですが、その中にちょっとしたぬくもりが必要で、そこに人は幸せを感じるのではないでしょうか。
特別じゃない、何でもない日常に特別な瞬間があるということに改めて気付かされました。毎日を大切に生きていかなきゃいけないなと感じさせてくれる、繰り返し何度も読みたくなる本です。
疲れた時にゆっくりと読んでみてください。
 
 
 

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