広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.259『サンダー3』池田祐輝/講談社
蔦屋書店・江藤のオススメ『サンダー3』池田祐輝/講談社
マンガにおけるお約束、というか暗黙の了解ってありますよね。
例えば絵柄について、いわゆるストーリー漫画、ある程度長い期間を使って物語が展開していくようなマンガ、その中では登場人物などもマンガ内時間ですが、歳をとっていくようなものだと、リアル寄りな絵柄で描かれることが多いです。
一話読み切りに近いようなギャグマンガであれば、絵柄もマンガ的なデフォルメが多いものになります。また、ギャグマンガにおいてはマンガ内時間も無茶苦茶で、登場人物が歳をまったく取らないことも多いですね。
一話読み切りに近いようなギャグマンガであれば、絵柄もマンガ的なデフォルメが多いものになります。また、ギャグマンガにおいてはマンガ内時間も無茶苦茶で、登場人物が歳をまったく取らないことも多いですね。
余談ですが、あの長寿マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』においては、主人公の両さんの周りの人たちは全く歳を取りませんが、大原部長の娘さん周りだけは時間が経過していきます。初期に登場したときは女子大生だったのに、お見合いや恋愛などを経過して、結婚式も描かれ、子供も生まれます。大原部長の孫に当たる大介くんも赤ちゃんから小学生へと成長していきます。時間の流れがあらゆるところで歪んでいるのですが、マンガを読んでいると全くその違和感を感じさせないのは作者の技量なのか、読者の懐の深さなのか。。。
話を戻しますと、もちろんこの絵柄問題にも例外というか、あえてズラすことで笑いを取るという手法も存在します。
例えば『魁!!クロマティ高校』においては絵柄はリアル寄りの劇画調です。知っている人にはすぐわかると思うのですが、劇画マンガの大ベテラン、シリアス系のストーリー漫画の大御所である池上遼一さんのタッチをほぼコピーした絵柄で描いているのに、内容は高校生達の会話を中心にした脱力系ギャグマンガとなっています。
例えば『魁!!クロマティ高校』においては絵柄はリアル寄りの劇画調です。知っている人にはすぐわかると思うのですが、劇画マンガの大ベテラン、シリアス系のストーリー漫画の大御所である池上遼一さんのタッチをほぼコピーした絵柄で描いているのに、内容は高校生達の会話を中心にした脱力系ギャグマンガとなっています。
これは、マンガ世界の暗黙の了解を破る、池上遼一風絵柄であれば緊張感のあるシリアスなストーリーマンガであろうと読者は構えるのだが、実際は脱力系のギャグ漫画である、というズレによって笑いが生まれているという例のひとつですが、
これはあくまで例外的な手法となります。
他にも例えば、絵柄で定義されるマンガ内設定というものも存在します。
例えば、デフォルメされたキャラクター達は高いところから飛び降りても、体がボロボロになって絆創膏やたんこぶだらけになっても、次のコマではもとに戻ったりしています。体に深刻なダメージを受けて、その後数話は登場できない、もしくは死んでしまう、なんてことはほぼありません。リアル寄りな絵柄で描かれたキャラクター達は、怪我をしたらなかなか治らないし、なんなら死亡するリスクも抱えています。マンガ内においては弱く脆い存在であるともいえます。ギャグマンガの登場人物たち、絵柄はデフォルメされ、いわゆるギャグマンガ的身体能力を持ったキャラクターは強い存在である。シリアスマンガの登場人物たち、絵柄はリアル寄りで、現実の人間と同じように怪我もすれば命も落とすキャラクターは弱い存在である。と定義することも可能ではないかと思います。
例えば、デフォルメされたキャラクター達は高いところから飛び降りても、体がボロボロになって絆創膏やたんこぶだらけになっても、次のコマではもとに戻ったりしています。体に深刻なダメージを受けて、その後数話は登場できない、もしくは死んでしまう、なんてことはほぼありません。リアル寄りな絵柄で描かれたキャラクター達は、怪我をしたらなかなか治らないし、なんなら死亡するリスクも抱えています。マンガ内においては弱く脆い存在であるともいえます。ギャグマンガの登場人物たち、絵柄はデフォルメされ、いわゆるギャグマンガ的身体能力を持ったキャラクターは強い存在である。シリアスマンガの登場人物たち、絵柄はリアル寄りで、現実の人間と同じように怪我もすれば命も落とすキャラクターは弱い存在である。と定義することも可能ではないかと思います。
ここまでつらつらと書いてきた前提こそが、今話題のコミック『サンダー3』を読み解くための重要な要素のひとつであろうと私は考えています。
ではこのコミックの内容は、というと、ここはネタバレしたくないのですが、第一話がWebで無料公開されていますので、その範囲だけは軽く紹介させていただきます。(Web環境がある方は、ぜひ試し読みをしてみてください)
始まりはとある家族の食卓からです。絵柄はいかにもマンガ的デフォルメと省略がされたもので、藤子不二雄的なSFマンガが始まるのかなという雰囲気です。主人公たち、身長の低い仲良しな同級生3人組の男の子は、スモール3と呼ばれています。彼らは、仲の良い学校の先生、あだ名はドク、の家に遊びに行き、異世界に通じるという「ムー」の通販で買ったPS5で動作するディスクを借ります。主人公のひとりの家でそのディスクを再生すると、テレビ画面の向こうに映っているのは、今までのこのマンガでの絵柄とは全くちがう、リアルな絵柄の世界でした。その世界から、リアルなトンボがこちらの世界に飛んできます。彼らがちょっとその場を離れたすきに、小さな妹はその画面の中に入ってしまいます。戻ってきた彼らもその画面を通じてリアル世界とこちらの世界が繋がっていることを理解して、その世界に入って行きます。
向こう側のリアル世界では、彼らはマンガが動いている!と笑われるのですが、同じように存在して言葉も交わせる状態になっています。なぜか向こうのリアル世界には、みるからにヤバそうな宇宙人が普通に存在していて、妹はその宇宙人にさらわれてしまいます。
妹の危機に、慌てた主人公は驚異の跳躍力で宇宙船に飛び移り、その宇宙船から落とされてしまうのですが、ものすごい高さから落ちたはずの主人公は地面に大きな穴を空けながらも無傷でなんともありません。
あれ、僕らなら妹をとりもどせるんじゃないか?と主人公たちが気づくところで第一話は終わります。現在進行中の連載なので、この先どうなるか私にもさっぱりわかりません。ただ、連載の最新の状況を読んでいると、かなりヤバメのハードSFであることは間違いありません。
妹の危機に、慌てた主人公は驚異の跳躍力で宇宙船に飛び移り、その宇宙船から落とされてしまうのですが、ものすごい高さから落ちたはずの主人公は地面に大きな穴を空けながらも無傷でなんともありません。
あれ、僕らなら妹をとりもどせるんじゃないか?と主人公たちが気づくところで第一話は終わります。現在進行中の連載なので、この先どうなるか私にもさっぱりわかりません。ただ、連載の最新の状況を読んでいると、かなりヤバメのハードSFであることは間違いありません。
この「マンガの常識」「暗黙の了解」などのお約束に忠実であるがゆえにその常識をぶち壊してしまう奇妙なズレを持ったこのマンガ。
ある意味、革命的な作品であることは間違いありません。今リアルタイムで読むべきマンガのひとつだと思います。
ぜひ!体感してみてください。
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