広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.108

蔦屋書店・神崎のオススメ『三つ編みレティシア・コロンバニ著 齋藤可津子訳/早川書房

 

#MeToo
2019年、多くの女性たちがこのハッシュタグとともに声を上げた。
「私たちはもう黙ってはいない」「もう我慢はしない」「女性は不当に扱われている、虐げられている」と。
セクハラや性被害の告白で始まった#MeTooは、女性の生き辛さを象徴する言葉となった。
 
『三つ編み』は、住んでいる場所も境遇も違う3人の女性の物語だ。
 
スミタはインドで不可触民として他人の排泄物を拾い集めることを生業としている。彼女の夢は美しい髪を持つ娘ラリータを学校に通わせること。娘にこの仕事はさせない。しかしその夢は無残に打ち砕かれる。
 
シチリアのジュリアは20歳。父親が経営する毛髪加工所で働いている。父親の交通事故から加工所の経営が危機的状況であることを知る。会社の存亡と働く人たちの生活が彼女にのしかかってくる。
 
サラはモントリオールで3人の子どもを育てながら弁護士としてがむしゃらに働き、40歳にして地位と名声を手に入れた。順風満帆に思えた人生が乳癌になったことで崩れ始める。
 
スミタ、ジュリア、サラ。この3人の物語が編み込まれるように交互に描かれ、やがて〝髪〟で繋がり、一つになる。まるで美しく強い〝三つ編み〟のように。それは3人の新しい人生、新たな闘いの始まりでもある。
 
本書はフェミニズム文学として世界で高く評価されている。それは#MeToo運動と重なったこともある。が、ただ男性や社会に対峙する女性の物語として読んでほしくはない。なぜなら登場する3人の女性は胸を張り、顔を上げて前を、未来を見つめているから。
 
「女性は生き辛い」のか。YESかNOか。その答えを導き出すのは女性自身の生き方かもしれない。読み終えてそう感じた。
 
 
 

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