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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.260『日本に住んでる世界のひと』金井真紀/大和書房

蔦屋書店・竺原のオススメ『日本に住んでる世界のひと』金井真紀/大和書房
 
 
「世間は狭いなぁ」なんて思わずにはいられなくなる様な出来事が、時にはある。
それと同時に「世界は広いなぁ」と思わずにはいられなくなる様な出来事も、これまたあったりする。
この本はそんな2つの相反する?感情を一度に味わえる、何ともおかしみを感じる一冊である。
 
本作はそのタイトル通り、世界中の様々な国から日本にやって来た人々(18組20人)に、著者である金井さんが、例えば「なぜ日本に来る事になったのか?」「母国ではどういう生活を送っていたのか?」といった話を聞いて行き、その人その人のこれまでの歴史を紐解いて行くという、一種のヒューマンドラマである。
 
家族の為に日本に来て日々忙しく働いている方。
宣教師として来日された方。
自身の母国で出会った日本人の女性(これは逆に「世界に住んでる日本の人」だ)と結婚してこっちにやって来た方。
…などなど、日本に来られたきっかけは千差万別で、且つ、勿論きっかけだけでなく日本に来る前と来た後のエピソードも深く掘り下げられているので、なんだかドキュメンタリー作品を鑑賞した様な満足感がある。
 
読んでいて思ったのは(当たり前の事ではあるが)「どんな人にでも、その人にしかないストーリーがあるなぁ」という事。
そしてそのストーリーが、誰かにとってかけがえのない勇気や助けになるのだろうなぁという事も、ぼんやりと連想された。
 
また、これは単なる偶然なのかも知れないが、取り上げられている全ての人に共通している(と私が感じた)事がある。
それは、みんなとても優しい人である事が文章から伝わって来る、という事である。
あくまで私の推測ではあるが、これは決して金井さんがインタビューした人がたまたまみんな優しかったという事ではなく、異国の地で暮らすという体験が、その人その人の心を寛く育てた結果なのではないかと思う。
 
作者である金井真紀さんはこれまでにも『パリのすてきなおじさん』(柏書房)や『マル農のひと』(左右社)といった数多くの名作を残して来られたが、そのプロフィールを見てみると、自身の任務として「多様性をおもしろがること」とある。
その意味で、本作はまさに、これ以上ないほどに多様性を面白がっている内容である為、任務は遂行されていると言う事が出来る。
 
この書籍の肝は、取材対象となった人たちの持つ極めてオリジナルなエピソードである訳だが、そのエピソードを話す相手が金井さんだったからこそ聞けた内容であるとも思うので、そのお人柄や“引き出す能力”にも想いを及ばす次第である。
 
 
 

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