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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.213『ガンバ大阪30年のものがたり』高村美砂/ベースボール・マガジン社

蔦屋書店・竺原のオススメ 『ガンバ大阪30年のものがたり』高村美砂/ベースボール・マガジン社
 
 
中学時代にサッカー部に所属していた私が、何故それまで未経験だったサッカーをやろうと思い立ったのかと言うと、仲の良かった同級生がサッカー部に入るという話を聞いての事であり、それは非常に安直な理由であった訳であるが、一方でこの時サッカーというスポーツに触れる事が出来たのは掛け替えのない出来事であったのだと、今になって感じている。
 
中学校に入学するまでも、例えばテレビで日本代表の試合があれば観る位にはサッカーに親しんでいた(と思う)のだが、実際に自分でプレーをする事になって「観る」方もより意識的にする様になった。
 
当時と言えばスペインの名門/レアル・マドリードが「銀河系軍団」と呼ばれていた全盛期。所属している選手全員がその時代を代表する様なスター選手だった訳であるが、その中でも特に光り輝いていて記憶に強く残っているのが、ジネディーヌ・ジダンである。
確か最初にそのプレーぶりを初めて目にしたのは2004年にレアル・マドリードが来日して、味の素スタジアムで東京ヴェルディと対戦した日だ。
試合開始早々、左サイドの元祖“フェノメノ(怪物)”ロナウドから横パスを受けたジダンはクルッと身体を回転させる代名詞の“マルセイユ・ターン”でディフェンス2枚を置き去りにし、キーパーと一対一。
そこから更に跨ぐフェイントでキーパーのタイミングを外してゴール。
この一連の、流れる様な動きは、サッカーという激しさを伴うスポーツの中において異質な、華麗さすら感じさせるプレーであり、今でも強く記憶に残っている。
そんな訳で、私の“観る”サッカー遍歴は海外サッカーからスタートしたのであった。
 
となると事の成り行きとして当然、国内のサッカーにも目が向く事となる。
時折しも2006年にドイツワールドカップが開催されんとしている時期で、その前年に当たる2005年に開催されたコンフェデレーションズカップ(ワールドカップの前年に、その開催国で行われるプレ大会の様なもの)で日本代表は、開催国兼世界でも有数の強豪国・ドイツと引き分けを演じる(この試合で2得点をマークした高原直泰は、それこそ当時ドイツでプレーしていた)など、前回の日韓ワールドカップ程ではないにせよ熱い盛り上がりを見せていた。
そんな代表の中で私の目を惹いたのは、不動の右サイドバックとしてジーコ政権下で躍動していたガンバ大阪・加地亮選手だった。
何に惹かれたのかと言うと、実を言うと単純に見た目が格好良かったからというのが真相になるのだが、ある意味私とガンバ大阪の出会いは加地選手がきっかけなのである。
 

そんな経緯でガンバ大阪を知るに至った私は、自分の好きな選手が所属しているチームだからという理由で、ガンバ大阪の事も好きになった。
著者の高村美砂さんはJリーグ開幕に合わせて発刊された関西サッカー応援誌『GAM』『KAPPOS』の発行・編集に携わった後、1998年からフリーライターとしてガンバ大阪を長く取材されて来られた経歴の持ち主。
本作はそんな氏の今までの取材ノートや録音テープ、あるいは個人的な思い出からガンバ大阪の1991年から2021年までの30年間の歩みを、これまで関わって来られた選手やスタッフの言葉と共に振り返る事が出来る内容になっているが、他ならぬ私自身も1991年生まれという事で、読んでいてガンバ大阪の歴史を辿りつつ、その時その時の私の人生をも振り返っている気分にさせてくれた。
 
近年日本サッカーは若手選手の台頭もあり賑わいを見せているが、その中においてガンバ大阪は重要な存在であることは間違いない。
30年というのは一つの節目であるが、またこの先の30年に向けても共に歩んで行きたいと思わせてくれる汗と涙のものがたりを、是非ご一読頂きたい。
 
 
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