広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.113

蔦屋書店・神崎のオススメ自殺会議』末井昭/朝日出版社

 

 

 

すべての人間の死因は、生まれたことである。池田晶子

 

人間は必ず死にます。科学が発達して不老不死の薬が発明されれば別ですが、オギャーと生まれた瞬間が死へ向かう第一歩なのです。その道のりが長いか短いかは、その人の運命なのかもしれません。その道のりに自ら終止符を打つ場合があります。「自殺」です。

 

『自殺会議』は、母親が愛人とダイナマイトで心中した体験を持つ著者の末井昭氏と、死を身近に感じている人たち、自分または誰かの死を背負って生きている人たちとの対話によって構成されたノンフィクションです。

 

身近な人の自殺に向き合い、時を重ねてきた遺された者の葛藤。全力で、生活の全てを注ぎ込んで、自殺志願者を救おう、護ろうとする人たちの「死なせない」ことへの強い思い。自殺者が日本一少ない町とそこに住む人々の生活。病気や障害のため動かない体でも生きることの希望を失わず、前へ進もうとする人。11章の中で、それぞれの「死ぬこと」への思い、そして「生きること」への思いが語られます。

 

本書では「自殺」がいいか悪いか、正しいのか間違っているのかについては言及されません。それは誰にも、自殺した当事者でさへ、きっとわからないことでしょうから。ただ登場する人たちは皆、著者の末井氏も含めて、強く訴えかけます。「生きてください」「生きていてください」と。

 

生きるのは大変です。もがいて、苦しんで、のたうちまわって。頑張っても「自殺」が頭をよぎったら、この本を手に取ってください。そして、生きてください。

 

末井氏は「まえがき」で次のように書いています。

 

生きてることに意味はないかもしれないけど、あなたが生きているだけで意味が生まれるのです。

 

 

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