【5周年特別企画】インタビュー企画 Life with Art
アートのある暮らしを体現する銀座蔦屋書店のお客様3名のインタビューをお届けします。
アートとの出会いや、作品をどのように楽しんでいらっしゃるか、実際に銀座蔦屋書店の展覧会でお求め頂いた作品を通してお話しいただきました。
5年間の展覧会のアーカイブと併せてご覧ください。
アートとの出会いや、作品をどのように楽しんでいらっしゃるか、実際に銀座蔦屋書店の展覧会でお求め頂いた作品を通してお話しいただきました。
5年間の展覧会のアーカイブと併せてご覧ください。
【目次】
▼振り返り
Life with Art アートのある暮らし お客様インタビュー:会社経営者・片山安茂様
都内で会社経営を営む片山安茂様。長年アートコレクションを行い、NYブルックリン在住のアーティスト・山口歴(やまぐち・めぐる)氏が2021年8月に銀座 蔦屋書店で開いた個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」にて、ご縁もあって作品「ENERGY FLOW」をお迎えしていただきました。そんな片山様に、アートとの付き合い方などをうかがいました。
高校時代から始まったコレクション人生
――これまでのアートとの触れ合いについて教えて下さい。
浦和に住んでいた幼い頃、母親が絵や音楽を鑑賞するのが好きで、よく兄弟四人で一緒に美術館へ行っていました。また、当時の浦和には戦中戦後に東京から避難してきた作家さんが多く、工房をかまえて自分で制作をする一方、近所の子供たちを呼んで絵を描かせたりしていました。私も模写をしたりしていました。
――アートとは身近に接しやすい環境だったのですね。
はい。学生時代に芸大を志望した時期もありましたが、長男だったことや時代もあり、アートとは別の仕事に携わるようになりました。それでも都内のギャラリーに足を運んだり、出張で地方に行ったら現地の美術館を訪れたりするなど、アートとは常に触れてきました。私の下の三兄弟もそうで、幼少期の影響は強いと思います。
――コレクションに目覚めたのはいつ頃ですか?
遡れば、高校生の頃からですね。お小遣いが少ないから、コレクションといってもちっぽけなものですけど。でも気に入ったものがあれば購入していました。学校卒業後も個人で少しずつコレクションを続けています。サラリーマンを何年か経験して、父の会社を手伝うようになり、会社の業績が順調に伸びてきた頃、オフィスに何のアートを飾るか任されるようになりました。その頃には使える予算も、高校生の頃より増えましたね(笑)。
――コレクションのポイントは?
「流行っている」「オークションにかかっている」「値上がりするから」とかいう世界とは無縁です。ただただ「この作家さんいいな」「この緑いいな」と気に入ったものをコレクションしています。高校生のときに買った絵は、今見返しても「なるほど、いいな」と思います。
「心をリセット」仕事とプライベートで異なるアートとの向き合い方
――銀座 蔦屋書店で実施された山口歴氏のトークショーならびに展示を御覧頂き、「ENERGY FLOW」をコレクションして頂きました。
作品自体が気に入ったというのもありますが、ニューヨークの学校に通う高校生の息子がたまたま帰省して一緒に歴さんのトークショーを見聞きした後、トイレ前の通路で歴さん本人にばったり出くわして自分の話をしたら、歴さんに「がんばれよ!」と肩を叩かれて元気をもらったそうです。「かっこいいな!」って言っていました。
――片山様は、会社とプライベートでコレクションしています。何か違いはありますか?
家内は音楽好きで絵画などの知識はくわしくありませんが、それでも家の中にアート作品があると「家の中に花があるようでホッと一息つける」と感じているようです。会社のオフィスにはスタッフが70〜80名いますが、作品や作家について知っている人はいません。でも作品を見せて、説明したら「なるほどなるほど」って興味を持ってくれます。
――予備知識がなくても、作品自体にエネルギーがあって人を惹きつけると。
そうですね。やっぱりこう、仕事で悩んでいる時とか、オフィスでふと作品と1分でも5分でも向き合っていると心をリセットできます。それは感じます。
――銀座 蔦屋書店の印象を教えて下さい。
他のギャラリーではなかなか置かない現代アートが目を引きました。現代のトレンドを把握していらっしゃるし、かといって20〜30代向けの若者だけではく、私のような50代やもっと年配の方でもじっくり鑑賞できます。中央のアート展示スペースには、老舗の百貨店で作品を展示する水準の作家さんの作品なんかが普通に展示されている。自然光も入って気持ちのいい空間です。
――片山様が感じる銀座 蔦屋書店ならではの特徴は?
ギャラリーだと、入る前に「よしっ」と気合を入れないといけないし、週に何回も足を運ぶと顔を覚えられたりして「あっ、あの人また来たわ」みたいになっちゃいます(笑)。銀座蔦屋書店さんはふらっと入って、ふらっと見られる。時間があればじっくり見る。利便性も良くていい空間ですよね。そしてスタッフさんも素晴らしいです。これまでにも色んな知らない作家さんの作品を数多くご紹介頂いていて、本当に勉強になりますし、視野が広がりますね。銀座に食事に行ったら、ついでにちょっと行こうかな、という場所になっていますね。
――最後に、今後の銀座 蔦屋書店にメッセージを一言お願いします。
五周年おめでとうございます。何よりスタッフの方がフレンドリーで、色んな知らない作家さんの作品をご紹介頂いて、いつも勉強になります。これからも、身近にアートに触れられる機会をぜひよろしくお願いします。
(インタビュー・撮影:銀座 蔦屋書店)
今回、作家様ご本人よりコメントをいただきました。
「五周年おめでとうございます。銀座蔦屋書店での昨年の個展は自分らにとって大きなターニングポイントになりました。また楽しいプロジェクトをご一緒したいです!」山口歴
▼2021年後半にATRIUMで開催された展覧会一覧はこちら▼
Life with Art アートのある暮らし お客様インタビュー:経営者・上島 亨様
東京都在住の上島様。インスタグラムで若手作家の作品などを紹介し、様々な支援も行なっています。2020年8月には、銀座 蔦屋書店を通じて川内理香子氏の100号サイズの絵画作品「denotation」をコレクションいただきました。そんなカミシマ様に、若手作家との交流やアートとの向き合い方などを語ってもらいました。
コレクションのきっかけは画家の祖母と過ごした日々
――上島様がアートを集めるようになったきっかけを教えて下さい。
7年前に家を建てたタイミングで、せっかくだから一点でも二点でもアートを飾って素敵にしたいという思いがありました。あと私の祖母が生前、日動画廊さんで油絵を扱って頂いていた画家で、物心ついた頃からほぼ毎日油絵を描く様を眺めていました。それでアートが自然と好きになりました。描く才能はありませんが、アートを集めて綺麗に飾りたいと思ったのがきっかけです。
――上島様は、一般のアートコレクターの域を超え、若手作家の支援をしている印象を受けます。支援をしようと思った動機は?
コレクションを始めてまもない頃は、草間彌生さんのシルクとかエッチングとかをコレクションしていました。価値が定まっているものでないと怖くて(笑)。でも次第に若い作家さんの作品を拝見するうちに、すごく素敵だなと感じる作品にめぐり逢うようになりました。値段も買いやすいですし、探せば数も多い。宝探しではないですけど、毎日そうやって探すのが楽しくなってきて、若手の作家さんと直接会うことが増えてきた時、彼らを応援してあげたいという気持ちが自然と芽生えました。
――Instagramでは、若い方の作品を多数紹介して注目を集めています。
ありがたいお話です。ただ、思わぬ形で注⽬が集まって逆に若⼿作家さんのご迷惑になってしまう恐れもあるため、紹介させていただく際は⽂章を事前に下書きして何度も⾒直したり、作品画像も可能な限り綺麗なものをアップしたりとすごく気を遣っています。特にまだ学⽣さんの場合は、匿名で作品だけをアップすることもあります。
――ご自身が作品をコレクションするポイントは?
コレクションを始めた当初、どれが高値だとか知識は全くなかったですし、ただただ直感で見て、家に合うものを買おうというそれだけでした。今も「人気だからこの作品を買おう」という気持ちはなくて、マネーゲームに陥らないよう気をつけています。どこかのタイミングで作品を置き換えるかもしれませんが、今のところ、コレクションした作品を手放したことは一度もないです。
あと、初めてコレクションさせていただく作家さんは可能な限り実際の作品を拝見し、作家さんともお会いすることを大事にしています。
――川内理香子氏の「denotation」は玄関に飾って頂いております。すごい迫力ですね。
100号がギリギリ入るスペースでしたが、なんとか収まっています(笑)。
この作品は300点以上作品をコレクションしてきた中でも⼀番気に⼊っています。
この作品は300点以上作品をコレクションしてきた中でも⼀番気に⼊っています。
――上島様にとって、アートは今どのような存在ですか?
人生の一部になっていますね。お金がなくなってコレクションできなくなったとしても、ずっと好きだと思います。そして、アートに寄り添うことで気持ちが豊かになりますし、若々しい気持ちを保てる存在です。
若手作家を積極支援「趣味の域を超えています(笑)」
若手作家を積極支援「趣味の域を超えています(笑)」
――コレクションに対する家族のご反応は?
妻は良い意味で、正直何も思っていないかと(笑)。ただインテリアとして日々飾っているので、そこに対して「2つ⼀緒に飾った⽅がいいんじゃない」とか「この作品はやめたほうがいいんじゃない」とかアドバイスを受けることはあります。
――コレクションを飾る際のポイントは?
家ではあらゆる場所に作品を飾っています。それは子供のためというのが一番大きいです。本来なら、大型作品1点をシンプルに飾ったりするのが部屋として綺麗だと思いますが、あえて⼈気作家さんの作品と⼀緒に息⼦が描いた恐竜の絵を一緒に飾ったりしています。私と祖母の関係ではないですが、小さい頃から絵に触れるのはすごく大事だと思っています。私の⼦供は今4歳ですが、⼩さい頃から⾊々な展⽰に連れて⾏っているので、最近では作品を⾒ると作家さんの名前が分かったりします。
――初めて銀座 蔦屋書店にご来店した時の印象を教えて下さい。
仕事で銀座に行くことがよくあって、GINZA SIXのスターバックスなどにも通っていました。そうしたら、凄い素敵な空間に絵が飾ってある蔦屋さんがあるのだなと思って見に行くようになりました。川内さんの100号の作品も、銀座 蔦屋書店さんに出しますと個展会場で偶然にお会いできた川内さんご本⼈から伺い、グループ展初⽇に開店30分前から並んでコレクションさせていただくことができました。
最近も銀座 蔦屋書店さんには仕事の打ち合わせの度に寄らせてもらっているので、かなりの頻度でいると思いますよ(笑)。
――今後、銀座 蔦屋書店に求めることは?
今時点で素晴らしい取り組みをされていらっしゃいますが、若手作家さんの展示がより増えると、業界としてはさらに盛り上がる気がします。特に美⼤⽣の⽅々と話すと、お世辞抜きで「⽬標は銀座 蔦屋書店で展⽰をやることです!」と⾔う⽅が本当に多く、銀座 蔦屋書店さんの展⽰を⾒にきている⽅もとても多いと思います。才能はあるけれど、どうやって⾃分の作品を展⽰したりアピールしたりすればいいのかわからないまま卒業を迎えてしまう子たち向けに、年に1、2回コンペティションか何か企画してもらえれば、若手の登竜門のような存在になるかもしれません。
(インタビュー:銀座 蔦屋書店、撮影:桜井恒二)
今回、作家様ご本人よりコメントをいただきました。
「昨年、グループ展で初めて銀座蔦屋書店のアトリウムで展示しました。書店の本達に囲まれ、本に出会うように作品に出会える空間で、本の中に無限の時間と空間が存在するように、作品の奥行きと心酔にすっと繋がれる空間だなと思います。」川内理香子
展覧会リンク:展覧会 Input/Output
▼2020年にATRIUMで開催された展覧会一覧はこちら▼
Life with Art アートのある暮らし お客様インタビュー:神職・西邑清志様
平日は一日平均8千人、土日祝日は1万人以上来店する 銀座 蔦屋書店には、2017年春のGINZA SIXプレオープン時からほぼ毎日来店してくださるお客様がいます。聞けば、お仕事は神職。千年以上の歴史を持つ由緒正しき家柄です。そんな銀座 蔦屋書店の五年間を見守ってきた西邑様にお話をうかがいました。
レコード会社デザイナーから神職へ 異色の経歴
――これまでのアートとの関わりを教えて下さい。
物心ついた3歳の頃から絵を描き、中学では漫画を模写したり横尾忠則さんの作品のシルクスクリーンを買ったりしていました。高校はデザイン科がある本郷高校に通っていました。先輩には村上隆さん、デザイン科の先輩には漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の秋元治先生がいます。神職に従事する前には、東芝EMIというレコード会社のデザイン部でレコードやCDのデザインを担当していました。ビートルズの帯のデザインなど著名なミュージシャンのデザインを手がけています。
――仕事柄、アートに対する思いが強かったんですね。
そうですね。あとは國學院大學の神道文化学部出身で、大学に芸術の授業があったのですが、「神に一番近いものが芸術である」と、ある哲学者でもある宗教家が言った言葉を学びました。芸術には秘めたる力があります。
――西邑様はご自身の輝かしいキャリアのみならず、千年以上続く神職のお家柄だと聞いています。
はい。先祖の文献では、神社ができたのは西暦859年、平安時代の貞観元年から代々続く神職です。
――銀座ともなじみが深いと聞いています。
私の祖父と祖母が戦前出会ったのが銀座なんです。銀座がなければ親父も私も生まれなかったと言って過言ではないです。銀座はビルの広告ポスターにしても「顔写真を大きくし過ぎてはいけない。銀座のデザインに反するから」など約束事があります。街の景観を大事にする銀座という街が好きです。
――これまでに西邑様は、アンディー・ウォーホルのポップアップブックや奈良美智氏のポスター、名和晃平氏の作品「METAMORPHOSIS COLLECTION COLLECTOR’S EDITION」 をお迎えされております。
そうですね。名和さんに関しては銀座 蔦屋書店さんを通じて知ることができました。今まで、立体の作品は置く場所がないといけないと思っていました。ですが立体の良さを教えてくださったのが銀座 蔦屋書店さんです。
――今後コレクションしたいものは?
興味があるのは仏師で彫刻家の加藤巍⼭(かとう・ぎざん)さんの作品です。私自身、中学生の頃からすでに、修学旅行で京都・奈良へ行った際に月光菩薩や弥勒菩薩の仏像を買っていましたし、大学では仏像の授業も受講していました。銀座 蔦屋書店さんでも巍⼭さんの作品など仏像の新たな魅力を感じ、再び仏像収集への興味が湧きました。
銀座 蔦屋書店は「良い気が流れている」
――西邑様が思う銀座 蔦屋書店の印象について教えて下さい。
色んな興味を起こさせてくれる場所ですね。画廊さんの作品も取り扱っていながら、非常に立ち寄りやすい・アートに触れやすい。新しい作品が常に登場し、イベントも次々企画されていらっしゃる。お店によく足を運ばせてもらっているのは、それらをチェックする意味合いもございます。
――西邑様は、銀座 蔦屋書店にほぼ毎日お越しくださります。その所以は?
雰囲気ですかね。我々神職は特に、気を感じ取るところがあります。明治神宮の(当時の)権宮司から「私たち神職は神が見えるとか、神の声が聞こえるなどと言っては駄目ですからね」と言われたことがあります。見える、聞こえるというのは違う世界の話です。神とは見るものではなく聞くものではなく、感じるものだからね、と教えられました。くれぐれも、見える、聞こえると言う者がいるような悪しき気が溜まっている場所などへは行くなと。私自身、気が悪いところは好きではありません。
――銀座 蔦屋書店は良い気が流れている?
そうですね。運気を上げるには、やはり運気のいい場所に行かないといけません。銀座 蔦屋書店さんは中央のアトリウムを始めとして色んなスポットで多数の作品が展示され、さらにイベントにはアート業界でご活躍される著名な方がいらっしゃったりしていて、良い気が流れていると思います。
――西邑様にそう言って頂けますと心強いです。おかげさまで五周年を迎えます。
五という奇数の数字は、数霊としてもいい数字です。四本柱だと倒れやすい。中央に柱を追加した五柱にすると倒れづらくなります。奇数数字の五周年を迎えて、さらに佳き方に派生拡張するのではないでしょうか。
――最後に、今後の銀座 蔦屋書店に一言お願いします。
元禄時代や室町時代には、舞踊や茶の湯や華道などの文化が確立しています。そして今、現代日本人は芸術に目覚めるときであり、令和時代の文化が花開くのではないでしょうか。銀座 蔦屋書店さんには「芸術は素晴らしいものだ」ということを、そして素晴らしい作品や作家さんのことを現代日本人にぜひ広めてほしいです。
(インタビュー:銀座 蔦屋書店、撮影:桜井恒二)
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