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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.320『シャーロック・ホームズの凱旋』森見登美彦/中央公論新社

蔦屋書店・江藤のオススメ『シャーロック・ホームズの凱旋』森見登美彦/中央公論新社
 
 
シミュレーション仮説ってご存知ですか?
私たちが今生活しているこの世界は、実はもっと上位の存在によって作られた仮想空間の中であって、私たちはその作られた世界で作られたパーツとして生活しているという仮説です。
哲学者であるニック・ボストロムによって提唱された仮説なのですが、そう考えるといろいろと想像が巡って面白いことなど浮かんできます。
例えば、生物の進化について、なんでこんな進化をしたのか?ちょっと不明な生き物、昆虫などもそうですが、いますよね。あまりにも葉っぱに似ている昆虫。象の鼻がなんで長いのか、キリンの首はどうしてあんなに長いのか。それも上位存在が勝手に作ったということで解決します。モンスターや幽霊、心霊現象のたぐいも、仮想空間のバグだと思えば特に不思議もありません。VRのゲームでもバグが起こればそのような現象は起きますからね。
そして神の存在、すべての創造主ということですが、もちろんこのシミュレーション空間を作った上位存在がそれに当たりますので、これも解決。と、考えれば考えるほど、これはあり得るのではないかと思ってしまいます。
では、強引に設定を変えることも、リセットされることも、、、
 
今回紹介する本は、森見登美彦さんの最新作『シャーロック・ホームズの凱旋』という本です。森見さんは独特の世界観で、ちょっと不思議な世界のお話なども書かれる、ファンタジー寄りの小説も書ける小説家です。そんな森見登美彦版シャーロック・ホームズがどんなお話になるのか、とても興味があって手に取ってみました。
 
本の中のシャーロック・ホームズはヴィクトリア朝京都というまさに摩訶不思議な世界に存在します。舞台は京都に間違いないのですが、シャーロック・ホームズやワトソンが普通に住んでいて、モリアーティ教授も(ちょっと役割が違ったりしますが)います。そしてもちろん名探偵としてホームズは京都の街で活躍しているわけです。
 
そんなホームズですが、大変なスランプに陥ってしまいます。全く事件解決のための能力が発揮出来ないのです。
そしてホームズは部屋に引きこもって事件の依頼なども受けなくなってしまうのです。困るのは、ホームズの相棒であるワトソンです。彼は、ホームズのお話を小説にして、それを発表することで大人気小説家となっていますので、小説雑誌からも依頼がきますし、それを書くためのネタが無くなってしまうからです。
 
こまったワトソンはホームズをなんとか立ち直らせようとします。
そんな折、ホームズのライバル探偵といえるアイリーン・アドラーがホームズの事務所の向かい側で探偵業を始めるのです。ホームズを復活させたいワトソンとそして実はホームズの復活を願っているアイリーンは探偵対決をすることになるのですが、ホームズはそれでも散々な結果で、ついには世捨て人のようになって、竹林に籠もって探偵を引退すると言い始めます。
 
ですが、ホームズが過去に関わった、とても不思議な事件。ある人物が不思議な部屋で不思議な現象に巻き込まれて、消失してしまうという謎。それに挑戦するものの、その謎は解けぬまま終わった過去の事件、それにまた挑戦することになるのです。
 
アイリーンも巻き込んでその謎に挑戦するのですが、そこから物語は驚天動地の展開を見せます。
 
一体この、ヴィクトリア朝京都とは何なのか。本当はホームズはロンドンに居るはずではないのか。モリアーティ教授がちょっと違うキャラになっているのはなぜなのか。起こるはずのない謎が起こってしまったのはなぜなのか。それは心霊現象なのか。
 
ホームズは言い張ります。この事件に解かれるべき謎などはないと。
 
さてそれは一体どういうことなのでしょうか。
 
私たちは、この本を読み終わってからふと思うでしょう。
私が冒頭に書いた不思議な考え方を
小説世界というのは○○○◯◯
 
すいません、余計なことを言ってしまいました。
今みなさんが読んだことはすべて余計な知識であり、この本を読むのに必要のないことです。
 
全て忘れて森見登美彦版シャーロック・ホームズの冒険を思う存分楽しんでくださいね。
 
 
 

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