広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.67

蔦屋書店・犬丸のオススメ 『天然知能』郡司ペギオ幸男 / 講談社選書メチエ

 

 

表紙がわたし好みだ。

『天然知能』と書かれた下には、エラからぶつ切りにされた横向きの青魚の頭。その下にカエルの下半身。さも嬉しそうな調子の二足歩行で、青魚の頭を持ち上げ運んでいる。カエルの顔は青魚で見えないが、きっと、ちょっと上を向きながら鼻歌まじりなのだろう。音符でも描き込みたい。なんだかわからないけど、わからなくて「うへへ」となる。

 

裏表紙を読む。

「考えるな、感じろ」

とブルース・リーは言った。

計算を間違い、

マニュアルを守れず、

ふと何かが降りてくる。

それらすべて知性の賜物である。

今こそ天然知能を解放しよう。

人工知能と対立するのではなく、

想像もつかない「外部」と邂逅するために。

なんなのだ。へらへら笑ってしまう。買うしかない。

 

わたしたちは溢れんばかりの自分の経験(蓄積された知識)や世界とつながるデータにまみれている。縛られていると言ってもいいかもしれない。それによって、いつの間にか決まりきった見方しかできなくなってはいないだろうか。グニャリと、曲がったスプーンは、経験やデータで判断すれば、どこまでいっても不必要で使えない曲がったスプーンでしかない。だが、経験やデータにとらわれず「何かあるんじゃないか」と感じる。

するととたんに、曲がったスプーンをアートだと叫ぶのかもしれないし髪の毛にクルクルと巻いてアクセサリーにすると素敵と思うかもしれない。もしくは、思いもよらない全く関係のない鰯の大群などを想像し、それを見るだけで面白さが身体の内から沸いてきて「うへへ」となっていくのだ。

 

天然知能。それは、「知覚されないものに対しても、存在を許容する能力」だという。

常にオープンなこころが遊びを創り出し、経験やデータでは気づかない面白みを感じていくのだ。

 

 

 

 

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