広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.51

【蔦屋書店・丑番のオススメ 『湯遊ワンダーランド』まんしゅうきつこ・扶桑社】

 

 

自分が好きなもの、気に入ったものは他の人にも興味をもってほしいと思う。可能であれば、好きになってくれたら、うれしい。そんな性格だから、書店で働いているのかもしれない。これいいですよ、とおすすめができるから。

 

唐突ではあるが、サウナが好きだ。いや、淫しているといってもいいかもしれない。できれば、週7でサウナに行きたいと思っている。行くのは、もっぱら最寄りの銭湯である。銭湯にほぼ毎日行くんですよ、と言うと、「お風呂ないの?」と聞かれる。このご時世に、なかなか、内風呂のない物件に住んでるひとはいないだろう。しかも妻帯者なのに。アホなのかな?と言いたくなる気持ちをぐっとおさえ、「いやいや、もちろん家に風呂はありますよ。サウナが好きなんですよ。サウナ・水風呂・休憩を3セットくらい繰り返すとトランス状態になって。すごい多幸感があるんですよ。宗教的恍惚ってこんな感じじゃないのかな?って思ってます。ぜひ行ってください。」

 

と、おすすめをするのだが、水風呂が苦手で入れない、と言われたら、もう言葉に窮していた。必死に説明をくりかえすほど、相手は、死んだ目になっていた。一刻も早くこの場を離れたがっているのが、伝わってきた。そんなわたしに味方があらわれた。それが今回紹介する『湯遊ワンダーランド』だ。

 

本書は、邪気や妄想にとらわれる、まんしゅうきつこ先生が、サウナにハマっていく日々を描いたエッセイマンガである。弟のやっちゃんからサウナに行って汗をかき、毒を抜け、とすすめられるきつこ先生。お風呂は気持ちがいいんだけど、水風呂には入れない。冷たいから。心臓麻痺するのでは?という恐怖感。連載15話目!にして初水風呂に入るきつこ先生。その過程と見開きページの描写がすばらしい。水風呂って苦手なの、という人にも、ここまででいいから読んでいただきたい。

 

初水風呂のあと、きつこ先生のサウナ好きが加速していく。サウナ後には世界がすこしだけよいものに感じられる。

 

サウナに入った帰り道の風の気持ちよさ。

思わず、「生まれてよかった…」と考えてしまうきつこ先生。

おそばを食べて「うんまーい」と声に出してしまう。

仕事にもいつもより集中できてしまう。

 

そう。サウナの後には世界がすこしだけよいものに感じられるのだ。ただ、持続時間が半日ほどなので、サウナに中毒する恐れはあるが。サウナおすすめです。

 

 

 

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