広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.27

【蔦屋書店・犬丸のオススメ 『へんな星たち 天文物理学者が挑んだ10の恒星鳴沢真也/講談社BLUE BACKS

 

 

夜空を見上げると星たちは、今夜も静かに瞬いています。そんな星を見つめて、美しいと思い、願い事をひとつ…。

でも、ちょっと待ってください。あの星、実はあなたの願い事なんて聞いていられないくらい忙しくて、ダイナミックな生涯をおくっているのです。

 

計算によると、わたしたちの地球は、太陽のまわりを秒速28キロメートルで公転しているのです。その、太陽もじっとしているのではなく、太陽系の惑星をひきつれて、天の川銀河のなかを秒速217キロメートルで公転しています。

目を閉じて想像してみましょう。1秒間に28キロメートル地球が太陽の周りを移動している間に、太陽は銀河系のなかを1秒間に217キロメートルも進んでいるのです。当然、太陽以外の銀河系の何千億もの星たちが、それぞれ、グングンと公転していきます。その銀河自体も、宇宙空間をガンガン移動しているのです。それだけでも、目が回りそうな忙しさですね。

 

数え切れない星たちは、その上、とっても個性的。そんな、星たちを紹介しているのが本書です。この中には、数多くの星から選抜された10個が載っているのです。巻頭ページには、最新の技術で捉えた、カラー画像。この画像を見ているだけでも「なんで、こんな姿になっちゃたの?」と言わずにはいられないでしょう。

 

ここで、ひとつだけ紹介してみましょう。

第4章に出てくる、「かんむり座R星」。深海のたこが墨を吐いて姿をくらますように、宇宙にも墨を吐く星がいるというのです。かんむり座は、春から夏にかけての星座です。7月の中旬には、日本では夜8時頃、頭の真上にあります。R星はその中のひとつ6等星の星ですが、小さな双眼鏡でも見ることができます。この、6等星の星が、14~15等星まで暗くなるというのです。それも、突然に。

 

暗くなるのを観測できる身近な現象といえば、日食でしょうか。太陽が月の陰に隠れ、光がさえぎられ暗く見える。R星もなにか他の星などにさえぎられ暗く見えるのでしょうか。でも、それなら周期的に暗くなるはず。いつ暗くなるか予測できないとは、いったいなにがこの星に起こっているのでしょう。

その理由のひとつは、この星がなにで出来ているかに関係しているのです。基本となる星は、水素がかなり多めで、ちょっとのヘリウム、ほんのチョビットのその他の元素からなっています。

周期表の1番目と2番目です。

R星は、異質です。水素はほんのチョビットでヘリウム多め。そこそこの炭素と、その他が少し。この「ヘリウム多め」と「そこそこの炭素」の量が関係してきます。このR星、なぜか自らガスを噴き上げているというのです。ガスには炭素が含まれていて、宇宙空間で冷却され、さらに凝縮されダスト(固体)になります。ダストとなった炭素の微粒子、まさに墨。この、墨の雲に隠れ光がさえぎられるために、暗くなっていたのです。

だから、この星が、いつ明るくなって、いつ暗くなるのか予測できないのです。

この星を観測するには、今ピッタリの季節です。明るさが変わるのを期待しながら、星を観測するのも楽しいでしょう。

 

そして、本書を読み終え、不思議な星たちを知ったあなたは、星を見上げ思うかもしれません。

「先輩、今日もお疲れ様でした。いえいえ、お忙しいのに願い事なんてとんでもない。先輩を見習って、わたしも頑張ります。」と…。

 

 


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