広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.38

【蔦屋書店・江藤のオススメ 『出版禁止 死刑囚の歌』長江俊和・新潮社】
 
 

今回の本を紹介する前に、著者の長江俊和さんについて紹介させてもらいます。

 

長江さんは映像作家でもあります。テレビ番組「奇跡体験!アンビリーバボー」のディレクターもされています。アンビリーバボーといえば、トラウマ回として有名な「エレナ 究極のラブストーリー」がマニアの間では有名です。

 

カール・フォン・コーゼルという医師が、結核患者のエレナに恋をして、エレナが亡くなった後も、遺体を修復したり防腐処理をしたりしながら7年間も一緒に暮らしていたという事件です。この回のプロデューサーが長江さんなのですが、この演出が秀逸というか凄まじかったので、私自身も忘れられない回として覚えています。

 

究極の愛という、美しい純愛を描いたドキュメンタリーという雰囲気で番組は進んでいき、見ている人達に良い話だと思わせておいて、最後の最後に一枚の写真を見せる。

その写真は、死後の修復を繰り返したエレナの本物の写真でした。

 

その写真の衝撃は一言では表現できません、全身の血が引いてしまうような、息が止まりそうになるほどのショック。この番組を見た後、恐怖でしばらく落ち込んでしまうほどでした。

検索すると今でも見ることはできるのですが、正直おすすめはしません。

 

他には、伝説の深夜番組「放送禁止」という番組も手がけています。

この番組は、ドキュメンタリー番組のように見せかけて実は脚本のあるドラマであるという、フェイクドキュメンタリーという手法を使っています。

 

失踪した大学生を追ったスタッフが、失踪した場所とされている廃ビルや関係者に取材をするという、実際にあった事件のドキュメンタリーという形で番組は進んでいきます。そして、失踪した大学生は見つからないままその取材は終わります。

 

一見するとそれだけのドキュメンタリー番組なのですが、実はその映像の中に、ところどころ不自然なところや、映ってはいけない物などが映りこんでいたりするのです。それを全てくまなくチェックすると、実はこの未解決の大学生の失踪事件の裏に隠されていた事実が見えてくる。という仕掛けになっていました。

 

しかし、番組の中ではそれら仕掛けの種明かしも説明も一切されないので、なにも知らずにそのまま見てしまうと、なんだかよく意味の分からないドキュメンタリー番組で、見終わった後に気持ち悪い思いだけが残るというものでした。

 

その長江俊和さんが書いた長編小説が「出版禁止 死刑囚の歌」です。

実はこの作品は出版禁止の2作目です。

 

1作目では、ある心中事件を取材したルポルタージュが著者のもとに送られてきます。その「カミュの刺客」というルポは雑誌に載る予定だったのですが、封印されていたものです。そのルポを紹介しながら、事件についても書いていく、ノンフィクションのような形で書かれています。そのノンフィクションも、事件自体も凄く不気味で、結局本編を全て読んでも真相は闇の中で、気持ちの悪い思いだけが残る作品です。

 

しかし、先に説明したように、著者の長江さんはあの「放送禁止」を作った人です。先入観を無くし、あらゆる箇所を疑い、また掟破りともいえるような読み方をすることで隠された真相が解ってくる、という仕組みになっています。

 

私自身この本を夜に読んでいて、よくわからないので真夜中までかかって読み返して、ある仕掛けが解ったときに、ぞっとして鳥肌が立ちました。

1作目はすでに文庫になっていますので、ぜひ挑戦してもらいたい作品です。

 

さあ、ここまで読んでくださった方にはもうこれ以上の解説は不要ですよね。

 

『出版禁止 死刑囚の歌』

 

1作目を遙かに上回る完成度。

さあ、あなたに真相は見破れるのか。

 
 
 
 

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