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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.267『エルマーのぼうけん』ルース・スタイルス・ガネット わたなべしげお訳/福音館書店

蔦屋書店・佐藤のオススメ『エルマーのぼうけん』ルース・スタイルス・ガネット わたなべしげお訳/福音館書店
 
 
幼年童話の名作『エルマーのぼうけん』は、1948年にアメリカで出版されて以来、広く読み継がれているロングセラーです。日本では1963年に渡辺茂男さんの訳で刊行されました。「子どもの頃読んだことがある」「懐かしい」という方もいらっしゃるかと思います。
 
今回は「誰かに絵本を読んでもらう」ことから、段々と文字を覚えるなどして「自分で本を読む」という習慣を身につけていく、移行期の段階にあるお子さまと、おうちの方に向けた内容になります。もしよろしければ、お子さまと一緒に本を選ぶときの、参考になさって頂ければと思います。
 

〈これから『エルマーのぼうけん』を読むあなたへ〉
 
もしあなたが、たった一人で冒険の旅に出かけることになったら、何を持っていきますか?
おうちの人に手伝ってもらうことは、できません。食べるものや、身を守るための道具など、いろいろ頭に浮かびますが、あなたは子どもなので、あまりたくさんのものは持てません。リュックサックに入るだけ。何を入れましょう?
 
どうすればいいか、迷ってしまいますが、『エルマーのぼうけん』の主人公のエルマー君も、同じように、たった一人であぶない旅に向かいます。エルマー君は、友達になったノラネコから、かわいそうなりゅうの子どもの話をきいて、助けに行くことにしたのです。
お母さんは大の猫ぎらいなので、このことはないしょです。ノラネコは、年を取っているので、一緒に行くことはできません。でもかしこいノラネコは、何を持っていけばいいのか、エルマー君に教えてくれたようですよ。エルマー君のリュックサック、何が入っているのでしょうか?ちょっとのぞいてみましょう。
 
チューインガム
ももいろの棒つきキャンディー(2ダース)
輪ゴム(1はこ)
虫めがね(6つ)
くし、ヘアブラシ…
 
ああ、こんなもので本当に、危険な冒険の旅がのりきれるのか、心配になってきます。エルマー君、だいじょうぶでしょうか?
はてさて、これらのなぞの品物を、エルマー君は、一体何につかうのでしょう?
そのことは、これから本を読んで、たしかめてみてくださいね。
 
ところで、この『エルマーのぼうけん』を読むときに、もうひとつ、あなたに試してみてもらいたいことがあります。本の表紙をはじめにひらいたところ、「見返し」といいますが、この部分に、地図がのっています。ぜひ、この地図といっしょに、おはなしを楽しんでほしいのです。
 
これは、冒険の旅の舞台となる、「みかん島」と「どうぶつ島」の地図です。
エルマー君は、まず「みかん島」に上陸し、そのあと「どうぶつ島」をめざします。おはなしのなかで、いまエルマー君がどこにいるのかを、この地図でたしかめながら、読み進めていってみてください。エルマー君の冒険のようすが、よりいっそう、よく分かると思います。
 
いまはまだ、この地図は、あなたにとって、ただの「知らない場所の地図」ですが、おはなしを読むうちに、それが、ガラッと変わって見えてくる、ということも、体験してほしいです。
おはなしを読んだあとには、まるで自分がほんとうに行ったことのある場所のような、思い出いっぱいの、おもしろい地図にみえますよ。エルマー君は、とても心がやさしくて、ゆうかんで、そして頭のよい、すてきな男の子ですので、あなたも、きっと好きになると思います。
エルマー君といっしょに、冒険の旅を楽しむ気分で、読んでみてくださいね。
以上お子さまに向けて、おすすめの本として『エルマーのぼうけん』をご紹介しました。
 
おうちの方にとって、子どもが一人で読書するまで成長した姿を見るのは、嬉しいもの。
こうした時期にさしかかってくると、そろそろ読み聞かせも卒業かな?というご家庭が多いかと思います。しかしわが家ではそのような時期を過ぎたあとも、時々子どもにお話を読むことを続けていました。私自身やめるのが少しさみしくて行っていたのですが、続けて良かったと感じることが何度もありました。以下は当時のことを振り返って思うことです。
 
私が読んでいたのは、子どもが自分からは手に取ることがなさそうな本。いわゆる定番の児童文学の名作と呼ばれる作品でした。長いお話を音読するのは、喉も疲れますし少し大変です。けれどそうして一字一句声に出して読んだものを、共に聴くというそのことは、豊かな物語の世界をより細やかに味わうことに、確かにつながっていたように思います。
お互い自由に思ったことを伝え合いながら、物語の世界を共有した体験は、子どもにとっても、私自身にとっても、心から楽しいと感じる実り多いものでした。
今思えば、そうしてお話を読むなかでのやりとりを通して、子どもは自分なりの読書の楽しみ方を、少しずつ身につけていっていたような気もします。
幼少時の読み聞かせとは異なり、いろいろなことが理解できるようになってくる年代だからこそ、身近な大人と一緒に本を読むことによって、その子に伝えられることや、感じることもあるのではないでしょうか。
もしよろしければ、これからお子さまがご自分で本を読めるようになっても、時にはおうちの方がお話を読んであげるということを、試してみていただければと思います。
 
そして最後にもう少し付け加えるなら、一冊の本の世界を誰かと分かち合うというそのようなやりとりが、親密で幸せなものであるということに、年齢は関係ないように思います。
同じ本をお互い別々に読んだ後に感想を話し合うのも、もちろん楽しいものですが、子どもでなくても、時には大切な人と過ごす時間に一緒にひとつの本を読んでみるというのも、思いのほか、わるくないかもしれません。
 
 
 
 

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