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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.269『K-POP時代を航海するコンサート演出記』キム・サンウク/小学館

蔦屋書店・野津のオススメ『K-POP時代を航海するコンサート演出記』キム・サンウク/小学館
 
 
ここは書評のコーナーだということはもちろん承知しています。映画の話をするのは場違いなこともわかっています。でもちょっとだけお話しさせてください。
先日、BTSが2022年10月に韓国・釜山で開催し全世界が熱狂したコンサートを記録した映画『BTS: Yet To Come in Cinemas』を鑑賞しました。もともとこのコンサートは『2030釜山国際博覧会』誘致の成功を祈願して無料で開催されたものでした。しかしこれが無料でいいのかと戸惑うほど、パフォーマンス、舞台装置、演出のどれをとっても素晴らしいものでした。そして兵役履行前最後となるBTSメンバーにとってもARMY(BTSのファン)にとっても思い入れのあるコンサートとなりました。そのコンサートが映画化され、熱狂的ARMYである私はさっそく公開初日に観に行き、最初から最後まで大号泣しながら鑑賞したことをここにご報告させていただきます。
 
映画を観て読みたくなったのが『K-POP時代を航海するコンサート演出記』。BTSがデビューからこれまで開催した多くのコンサートを記録した本です。ソウルの小さな劇場からロンドンのウェンブリー・スタジアムまで、彼らの成功の軌跡とK-POPコンサート演出のビハインドストーリーが、演出家のキム・サンウクによって綴られています。
 
キム・サンウク氏は、音楽専門チャンネルMnetのコンサートPD等として勤務後、独立し2010年にPLAN Aを設立。以降、BTSをはじめ多くのK-POPワールドツアーコンサートとファンミーティングの総演出を務められています。
 
本著は、著者キム・サンウク氏はどのようにしてコンサートの演出家になったのかという話から始まり、コンサートの演出に関する様々な事柄が語られています。例えば、セットリストはどんな基準で決めるのか、アーティストが見せたい世界をどのように実現させていくのか、大規模な舞台装置を海外ツアーではどのように移動させるのか、バックステージでは何が起きているのか、公演中に起こるアクシデントをどう乗り切るのか、といったことがこれまでのBTSコンサートを通して綴られています。なので読み方としては、BTSのこれまでのコンサートを見た上で本著を読むのが一番面白いと思います。実際にBTSのコンサートに参加したことがなくてもDVDや様々なコンテンツで映像がたくさん残っているので、それらを見てから読むと、「あの時の演出はこういう意図があったのか」とか「あのステージの装置はこんな風になっていたのか」と演出の答え合わせが楽しめます。そして、ARMYなら「リハーサルでメンバーはこんなことを言っていたのか」とか「こんなハプニングがあったよね」と、彼らのプロフェッショナル姿だけでなく、いつものあの可愛らしい姿を想像しながら読むことができます。
BTSやK-POPには興味がなくても、世界中を駆け回ったコンサートの裏側を知ることは、これからエンタメ業界で働きたいと思っている人やエンタメ業界に興味がある人、また、企画等の場面においても参考になるのではないでしょうか。テーマやコンセプトを決め、それに沿った演出を考え、演者の意見をまとめ、アクシデントに対処する。それら演出のあらゆる場面が記されていて、ビジネスや社会で参考になることがたくさん見つかると思います。
 
やっとまたコンサートができるようになり、日本でもたくさんのK-POPアーティストが公演を行ってくれるようになりました。徐々に声出しもできるようになってきました。
BTSというグループはしばらくお休みしていますが、エンターテイメントはわたしたちの生き甲斐であり、無くてはならないものだと思います。この本で、大きな成功を裏で支える人たちの思いを感じると、今までとはコンサートの見方が違ってくるかもしれません。
 
 
 

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