include file not found:TS_style_custom.html

広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.222『「一万円選書」でつながる架け橋 北海道の小さな町の本屋・いわた書店』岩田徹/竹書房

蔦屋書店・竺原のオススメ『「一万円選書」でつながる架け橋 北海道の小さな町の本屋・いわた書店』岩田徹/竹書房
 
 
いわた書店は北海道砂川市にある、いわゆる町の本屋さん。
砂川市と言えば札幌からだと電車で一時間程度の距離に位置するが、周りは個人の商店などが並ぶ立地に居を構える緑色の外壁が印象的なお店だ。
 
岩田徹さんはこのお店の二代目。
先代のお父様は炭鉱のお仕事をされていたそうだが、それを辞してこのいわた書店を開業されたとの事である。
 
タイトルにもある「1万円選書」というのは、岩田さんが昔、高校時代の先輩から「これで適当な本を選んでよ」と言われて1万円を渡された事がきっかけとなって生まれたサービス。
現在では年に数回応募を受け付けての抽選制の形を摂っており、今でも非常に多くの方が岩田さんの選書を待っている程の大人気企画となっている。
当選した人には「カルテ」と呼ばれる、職業や読書歴などの選書に際して必要となる事項を記入してもらい、岩田さんはそれに基づきその人に合った本を選ぶという寸法だから、選ばれる側としてもある意味参加型のワクワクの体験である。
 
本作はそんな「1万円選書」にまつわるエピソードが第1章として、これまで本屋を続けて来られた岩田さんが経験された“いわた書店の歴史”が第2章、全国の本屋がこの先生き残る為には?という問いに対するアイデアが第3章としてまとめられている。
 
第1章は企画や発想力の源泉として気付きをもたらしてくれ、第2章は岩田さんやそのご家族、周りの方々とのドラマとして楽しむ事が出来、第3章は自分自身一書店員として考えさせられる部分もありつつ、岩田さんの長年のご経験やお人柄から出た言葉に身につまされる思いがあった。
 
一番感じたのは岩田さんの真心や誠意といった想いの部分。
それはお客様に対しても、出版社に対しても、同業者に対しても、あるいは本そのものに対しても。
「本が売れない」と言われて久しいが、そんな状況でも“売れない理由”を外に求めるのではないその姿勢というのは学ばなければいけない点であると痛感する。
そんな意味で第3章の“苦言を呈します”の項は、改めて背筋を正してくれるメッセージとして特に心に響いた。
 
“小さな町の本屋”という事だけれど、その志やこれまで岩田さんが身を粉にして活動されて来た歴史を知ると、いわた書店はとんでもなく大きな存在であると言えると思う。
本気で本を愛する一人の人間の歩みを知る事が出来る、情熱と思いやりに溢れた一冊である。

 
 
 
 
 
【Vol.221 蔦屋書店・江藤のオススメ『図書室のはこぶね』】
【Vol.220 蔦屋書店・犬丸のオススメ『燃える音』】
【Vol.219 蔦屋書店・丑番のオススメ『VIP グローバル・パーティーサーキットの社会学』】
【Vol.218 蔦屋書店・佐藤のオススメ『からすたろう』】
【Vol.217 蔦屋書店・竺原のオススメ『『ニューヨーク・タイムズ』のドナルド・キーン』】
【Vol.216 蔦屋書店・江藤のオススメ『我が友、スミス』】
【Vol.215 蔦屋書店・丑番のオススメ『どうで死ぬ身の一踊り』】
【Vol.214 蔦屋書店・佐藤のオススメ『ぽんちうた』】
【Vol.213 蔦屋書店・竺原のオススメ『ガンバ大阪30年のものがたり』】
【Vol.212 蔦屋書店・江藤のオススメ『プロジェクト・ヘイル・メアリー 上・下』】 
【Vol.211 蔦屋書店・丑番のオススメ『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』】
【Vol.210 蔦屋書店・竺原のオススメ『人は聞き方が9割』】
【Vol.209 蔦屋書店・江藤のオススメ 『思いがけず利他』】
【Vol.208 蔦屋書店・丑番のオススメ 『何もしない』】
【Vol.207 蔦屋書店・竺原のオススメ 『道具と料理』】

【Vol.206 蔦屋書店・江藤のオススメ 『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』】
【Vol.205 蔦屋書店・作田のオススメ 『私のカレーを食べてください』】
【Vol.204 蔦屋書店・丑番のオススメ 『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』】
【Vol.203 蔦屋書店・竺原のオススメ 『新装版 ペーパームービー』】
【Vol.202 蔦屋書店・江藤のオススメ 『雨はこれから』】
【Vol.201 蔦屋書店・犬丸のオススメ 『ステレオタイプの科学―「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか』】
【Vol.151〜Vol.200 2020年11月16日 - 2021年10月25日】
【Vol.101〜Vol.150 2019年12月2日 - 2020年11月9日】
【Vol.51〜Vol.100 2018年12月17日 - 2019年11月25日】
【Vol.1〜Vol.50 2018年1月15日 - 12月10日】
 
 

SHARE

一覧に戻る