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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.330『難問の多い料理店』結城真一郎/集英社

蔦屋書店・江藤のオススメ『難問の多い料理店』 結城真一郎/集英社
 
 
名探偵は常に絶対的に正しい真相を提示するとも限らないし、清廉潔白な存在でもない

今回、おすすめしたいのは結城真一郎さんの『難問の多い料理店』という小説です。
こちらはいわゆる名探偵もののミステリ小説ですが、ちょっと今までの探偵小説とは違います。殺人事件があって、警察も来て、そこへ颯爽と現れる名探偵。見事な状況把握能力と名推理で犯人をあぶり出す。というお話ではないのです。
 
この本で登場する探偵役は、とある料理店のシェフです。この料理店はいわゆるゴーストレストラン、厨房だけで営業していて、中華料理店やイタリア料理店、タイ料理店、などの屋号を持っているのですが、ひとりで調理をしていて、さまざまな料理に対応します。厨房だけしかありませんので、配達専門です。ウーバーイーツのような配達業者を使って商売をしています。
 
通常のレストランとしても営業はしているのですが、その料理人には、様々な事件解決の依頼が来ます。どうやって依頼が来るかといえば、ある特別なメニューの組み合わせの注文をすることで、それが事件解決の依頼であるとわかるようになっているのです。
 
事件解決の依頼が来るとシェフは配達員におつかいをさせます。特別な報酬を払って配達員に情報を集めさせるのです。その情報をつなぎ合わせてシェフは現地の調査や聞き込みなどを一切せずに事件を解決して、お店にまた特別なメニューを表示させます。それは10万円だったりと非常に高額なので、間違っても普通の人が注文するはずはありません。事件解決を依頼した者はそのメニューが表示されると、そのメニューを注文することで、事件についての説明を知ることができる。という仕組みです。
 
この調査せずに事件を解決する形式の探偵は、いわゆる安楽椅子探偵と呼ばれるようなミステリの種類ですが、このシェフには名探偵としての高潔な想いなどは特にないのです。あくまで商売、お金儲けのためにしていることであって、困っている人を助けたい。事件の真相、真実を明らかにしたい。というわけではありません。
 
シェフは限られた手がかりを元に「依頼人」が「望む解決」を与えるのです。
たとえそれが真実でなかったとしても求められている答えを与えるのがシェフの仕事なのです。名探偵らしからぬキャラクターです。そのようなシェフですから、証拠集めをさせる配達員に対しても、ある約束をさせます。
 
シェフは配達員に報酬を与えておつかいをさせるのですが、もしそのことを他の配達員に口外したら命はない、という約束です。
配達員はおつかいをすると報酬をもらえるので、ぜひそれはしたい。でも口外すると命はない。ある意味その料理店は魅力的ですが、入り浸るのは非常に危険です。
依頼人は高額な料金を払って、事件解決を依頼します。しかし、依頼人は本当の真実を伝えられているとは限らないのです。
 
なんて厄介で危険な料理店なのでしょう。
 
あれ、そういえばこの小説のタイトル。
なにかに似ていませんか?
ほら~あの、みなさんよくご存知の童話の、、、、
 
 

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