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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.276『ホシノカケラ』稲葉なおと/講談社文庫

蔦屋書店・古河のオススメ『ホシノカケラ』稲葉なおと/講談社文庫
 
 
読了した!旅の移動中、再読した本書。
『ホシノカケラ』は、著者が15年かけて書きあげ、2019年4月に執筆、刊行。本年3月に文庫化された。
 
著者の稲葉なおとさんは、岡山県津山市出身。建築家を経て、写真家・作家として幅広く活躍され、日本建築学会文化賞、JTB紀行文学大賞奨励賞を受賞されている。
 
児童小説『サクラの川とミライの道』(講談社)では、津山を舞台に、自然と人間との共存を通し、小学生の友情を繊細な心で描いている、津山弁も読み手に温かみを感じさせる。
 
また、写真集『津山 美しい建築の街』(山陽新聞社)では、歴史を紐解き、生まれ育った視点から覗いたであろう選りすぐりの1枚1枚が映し出されている。著者が、人と人との繋がりを大切にし、活動されていることに納得する。
 
そして本書『ホシノカケラ』では、ライブという輝かしい舞台や、ミュージシャンを支える多くの人たちの熱い思い、意気込み、悩み、葛藤が、五日間を中心として描かれている。
素人には想像すらできない時空が、事細かく描写され、各章の登場人物、言葉一つ一つにエネルギーを感じる。また、それだけに留まらず、親子愛も描かれた作品である。
 
父親と絶縁しながらも舞台裏で働く、青年の葛藤を描いたシーン。(抜粋)
「自分の道をどうやって決めたのか?」とミュージシャンに問う。
「取捨選択しながらも確実に言えることは三つある。一つは、一歩前に進みだすこと。もう一つはそういう自分を信じること。最後にもう一つ、これが大事だけれども。もし道選びを失敗したと思うことがあっても、歩んできた道が間違いなのではなく、新たな成功につながる新しい道へと足を進める助走になっている、と思うよ。」と。
 
ミュージシャンの気持ち、何万人というファンの気持ちに立ち、作り上げていく舞台裏の壮絶な戦いを知れば知るほど、ライブに参加する気持ちが上がるだろう。
そして、書名である『ホシノカケラ』。欠けた星の小さな部分が集まり、一つの星になるように、舞台裏の一人一人の力が集結して、ライブという星の輝きを放つのだと思う。
 
旅と読書。本書と共に名建築の宿を訪れ贅沢な時間を頂いた。この贅沢な1冊をぜひお薦めしたい。
 
 
 
 

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