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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.277『ゴリラ裁判の日』須藤古都離/講談社

蔦屋書店・江藤のオススメ『ゴリラ裁判の日』須藤古都離/講談社
 
 
まずこのタイトルである『ゴリラ裁判の日』
なんだ?「ゴリラ裁判」なんて言葉があったのか?「ゲリラ裁判」の間違えではないのか?いや違う、表紙には立派なゴリラの絵が書いてある。背表紙にもゴリラがいる。ああ、なるほど、ゴリラを擬人化して、ゴリラの群れのなかでの物語なのかな『ライオンキング』『銀牙―流れ星銀―』的な?うんうん、それなら知っているしわかる。なるほどな、と裏の帯を読んでみるとこう書いてある。
 
「ローズはとても賢く、特別なゴリラだ。言葉を理解し人間と「会話」ができる。~中略~人間の子供を助けるために、という理由で、夫ゴリラが、突然、射殺される。許せない。そしてローズは、人間に戦いを挑む。力ではなく、知恵と勇気を武器に。法廷で。」
 
あ、やばい、これは読まないといけないやつだ。めっちゃ面白そう。直感が働いた私はすぐさま本を手に取った。一気に読んだ。素晴らしかった。
 
主人公のローズは、非常に賢いゴリラである。彼女の母親は研究所でその知力の高さからさまざまなテストを受けて、研究員を驚愕させていた。そして、研究員はその娘であるローズにさらに期待を感じていた。
 
研究員の予想通り、ローズの能力はずば抜けていた。手話を使って人間と完全にコミュニケーションができた。さらに、手話をすると音声を発するグローブが開発されたことで、ローズは声も手に入れた。そしてローズは生まれ育ったジャングルを出て、ニューヨークへ行く。
 
ローズはニューヨークの動物園で夫となるゴリラと出会うのである。ローズは言葉を使い人間と話ができる。そしてゴリラとももちろんコミュニケーションができる。もちろんゴリラとの生活のほうが馴染みが良いが、人間の生活にも馴染むことが、ある程度はできる。人間とゴリラの間のようなところを生きる。
 
しかし、ローズにとって、その運命を変えるような出来事が起こってしまう。
動物園の柵を子供が越えてしまい、その子供をローズの夫はおそらく助けようと手を伸ばす。人間たちはパニックになり悲鳴を上げ大声を張り上げる。ローズの夫はその騒ぎに興奮してしまい、子供を引きずって移動してしまう。ゴリラの力は人間の比ではない。もし子供が叩きつけられたら一瞬で命は失われてしまう。園長は苦渋の決断をする。ローズの夫は射殺されてしまうのだ。
 
こんなのおかしい!なぜゴリラよりも人間の命が優先されるの?なぜゴリラは殺されても仕方ないって言えるの?
 
怒りに燃えるローズは法廷で人間と戦うことを決意する。
 
いや、ここまででも最高におもしろい小説ですよ。めちゃくちゃ読ませる。新人とは思えないほど小説を書くのがうまい。
 
さて、裁判ですが、一度は負けてしまいます。
 
しかし、もう一度ローズは立ち上がります。
最強の敏腕弁護士とタッグを組んでの法廷劇はとてもスリリングではったりとカマシと驚きのロジックで、陪審員、そして、読んでいる私たちの価値観をひっくり返してきます。
 
さて、2度目の裁判ではどのような結果となるのか。
 
ぜひご自身の目で確認してください。
今まで読んだゴリラ小説の中で最も素晴らしい作品なのは間違いないです!
 
 
 
 

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