広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.138

蔦屋書店・江藤のオススメ『死亡通知書 暗黒者』周 浩暉 著/早川書房
 
 
みなさん、ここを読んでくださってありがとうございます。
本当にこの文章を読んで頂けるのは嬉しくて、読んで下さる方々がいらっしゃるから、それが励みになって毎回苦労しつつも書いているのです。
それに加えて、今回はある目的もあってこの文章を書いています。
 
さて、身も蓋もないことを言ってもいいですか?
 
ここを読む時間があるとすれば、その時間を使って少しでも早く『死亡通知書 暗黒者』を読んでください! そう、できれば今すぐに!
 
どうでしょうか。
もう誰も居なくなりましたかね。
今回に関してはそれでもいいんです。
しかし、あれだけ言ったのにまだここを読んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
では、それらの方が少しでも早くここを離脱して『死亡通知書 暗黒者』を買いに走ってくれるように、もう少しだけ説明させてもらいますね。
 
まず、この作品は中国の作家が書いた、いわゆる華文ミステリ(中国ミステリ)です。
少し前に読んだ『黄』という華文ミステリが凄まじく面白くて、これはやばいぞと最近注目していたのですが、ここに来て最強を引き当てました。
 
物語は、あるベテランの刑事が過去の事件を調べているところから始まります。
彼がこの物語の主人公なのかなと思いながら読み進めていると、、、
 

さて、この辺でどうですか?
もう本を買いに行きますか?
まだもう少し説明しましょうか?
ちょっと説明が進んじゃうので、このへんでやめようと思った人は離脱してください。
 

なんと、そのベテラン刑事の死体が発見されてしまいます。
ここから物語は本格的に始まるのです。
ここで、正体不明の別地域の若い刑事、羅飛(ら・ひ/ルオ・フェイ)が突然現れ、その敏腕ぶりを発揮するのですが、なんともいい難い正体不明さなんですね。
彼は本当にすごくいいです。
 
そのベテラン刑事に死をもたらした事件というのは、18年前の事件と繋がっているということがわかってきます。
しかもその18年前の事件は、ただの単独の事件ではないようなのです。
 

どうでしょうか?
もうそろそろ、ここを読んでいる場合じゃない気がしてきませんか?
もう少し知りたい人のためにもうちょっとだけ説明してもいいのですが、離脱したほうがいいかもですよ。
 

ベテラン刑事を殺害した犯人は、ギリシャ神話の復讐の女神「エウメニデス」を名乗って、次なる処刑対象者の名前と実行の日付を指定して、警察に挑戦してくるのです。
 
この犯行予告ですが、よくマンガの中で怪盗〇〇とかがやりますよね。そして見事に美術館からダイヤを騙し取ることに成功しちゃいます。
でも、マンガだと結構面白いし、見せ所となったりするのですが、シリアスな本格ミステリではなかなかこんな演出は無いですよ。
しかも、ダイヤを盗むとかじゃなくて、処刑対象者を殺すという予告です。
相手の名前、犯行日時を知らせるんですよ。まともじゃないですよね。犯人がというか、作者が。下手したら、すごく陳腐なお話になってしまいそうな危険もあります。
 
ミステリ読みとしては、大丈夫かなと思いながら読んだのですが、度肝を抜かれました。
 

そろそろ離脱したほうがいいのではないでしょうか。
軽くネタバレ的な話になってしまいますよ、、、
 

さて、その犯行予告なのですが。
完璧にやってのけます。しびれますよ。
 
ここからさらにこの物語は加速していきますから、振り落とされないようにしてくださいね。犯人と警察の駆け引きが凄まじいです。凄まじき暗黒の執念との知恵比べです。ギリギリでヒリヒリです。
 
もうここから先の最高に面白くて複雑で美しくもあり残酷な知恵比べ展開は説明をやめておきます。もったいないですからね。
 
しかし、加えて説明しておかなければいけないことがあります。
この本の最後では、すべての謎は解けて、このエウメニデスとの対決も一応の区切りは付きます。
でもですね、読んだ人は「だよね~!」って言ってくれると思うのですが、これだけでは終わらないんですよ。
私も読み終わって、これはこれはもしかして!?とあとがきを読んだところ、なんと「死亡通知書」は3部作だと書いてあるじゃないですか!
続編では、もっと多層的な物語になっていくということまで書いてある!
 
それだけにとどまらないのが、この本をおすすめする理由でもあるのですが、本作の中で、知らない事件についてちょこちょこと言及されるんですね。
気にはなっていたのですが、実は中国では、この作品の登場人物が活躍する長編が3作も出ているんですって!
 
さらにさらに、「死亡通知書」の外伝も出ていると、そして「死亡通知書」3部作のあとにも新たな3部作も書いているんですってよ!!!
 
なんということでしょう。
早川書房様、どうかお願いですから、サクサクと続編を出してください。
それだけじゃないですよ、周浩暉の作品をできればすべて翻訳してください。
頑張りますから!頑張って売りますし、宣伝します。
お店の公式フェイスブックでも紹介します。(モウヤリマシタ)
お店の公式HPでも本の紹介をします(イマココ)
チャンスがあればいろいろなところで広めていきますから!

はやく、すこしでもはやく、続編を読ませてください。
でないと、、、
 
 
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