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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.185

蔦屋書店・竺原のオススメ 『会いたくて、食べたくて』野村友里/マガジンハウス
 

 
渋谷区神宮前に居を構えるレストラン「eatrip」の主宰であり、自身も料理人として活動するのと並行してイベントの演出やラジオのパーソナリティ、映画監督まで多岐に渡る活動をされている野村友里さんが雑誌『Hanako』で連載を続けて来た連載をまとめたのが本作『会いたくて、食べたくて』である(この連載自体は現在8年目を迎えている)。
 
野村さんが現在に至るまでずっと愛食/愛飲し、通ったり取り寄せたりし続けて来た「食」にまつわるあれやこれやを写真と文章で紹介しつつ、またその生産者の方々にも焦点を当てた内容になっているのだが、とにかくどれも一見してその素敵な味わいが感じられる事この上なく、是非とも一度試してみたくなる。
この「試してみたくなる」という感覚に関しては(例えば本作中には豆腐があり、卵があり、チーズがありといった具合に実に多様なものが取り上げられているのだが)、勿論食欲をそそられて食べてみたくなる気持ちもあるのだが、一方で「身近に置いて、じっくり見てみたい」という、ある種アートを鑑賞する時の様な気分にもさせられるのが不思議である(これは写真を長島有里枝さんが担当されている事が影響しているのかと思う)。

※長島有里枝…1973年東京都生まれ。1993年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科在学中に「アーバナート #2」展でパルコ賞を受賞。2001年には蜷川実花、HIROMIXらとともに第26回木村伊兵衛写真賞を受賞する等の活動がある。
 
また「生産者の方々」について触れているのが良い。
このお蔭で、単純な「美味しそう」という感想からの興味だけでなく「作り手」という人からの興味でその食べ物/飲み物を口にしてみたくなるし、その人に会いに行きたくなったり、直接お話を伺ってみたくなったりする。
食というのは「美味しさ」が大事な要素ではあるが、その背景を掘り下げると必ず生産者の方々の信念に行き当たる。
食事の際の「いただきます」は、食材そのものに向けた言葉であるだけではなく、そうした人々の想いに向けての感謝でもあるのかも知れない、という事にまで考えが及ぶ。
 
そうした意味で、この作品は決してただの「カタログ」ではない。
しっかりとストーリーが付随した物語である(この「物語」が全部で101項収録されている)。
 
最後に、我らが広島からも2つのお店/生産者さんが紹介されている。
「どこの何てお店?」という疑問に関しては、是非とも中身をチェックしてみて頂ければと思う。

 
 
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