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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.235『ディズニーキャストざわざわ日記』笠原一郎/フォレスト出版

蔦屋書店・古河のオススメ『ディズニーキャストざわざわ日記』笠原一郎/フォレスト出版
 
 
非日常の世界にも、日常がありました。
 
今回ご紹介したい本は、『ディズニーキャストざわざわ日記』笠原一郎著(フォレスト出版)です。
 
ディズニーが大好きな著者=キャスト(働いている人)が経験し、キャストからの目線で感じた、ディズニーリゾートの日常が記録されています。
思わず微笑んでしまう県民の日エピソード、電車内で読んだらニヤっとしてしまう迷子の話まで、兎に角ありのままです。
 
一般的にゲスト(お客様)として過ごす私たちは、ディズニーリゾートで夢の国を体感し、現実から離れる満足度100%、テンション高めなまま帰路に着きます。
しかし、キャスト(働いている人)の立場になれば、それはそれは大変な毎日で夢の国とは程遠い。裏方の仕事は掃除から始まり、体調不良に陥ったお客様対応、クレームなど、暑い日も寒い日も根気が必要だそうです。

―何をしているんですか?―
「?」ゲストからの質問。掃除をしていることは見たらわかるだろうと思ったが、質問の意図がわからないまま、とりあえずこう答えた。
「ゴミを集めているんですよ。ポップコーンなんかがあちこちに落ちていますからね」
それをきいた彼女たちは怪訝そうに顔を見合わせると、そのまま無言で立ち去っていった。
しばらくして、
「何を集めているんですか?」
「ええ、ポップコーンなどが落ちていますから…」
「‥あぁ、そうなんですか。すみません」なぜだか今度は親子でがっかりされてしまった。
さすがにこれは変だと思い、ベテランキャストに尋ねてみた。
「その質問、一番オーソドックスな返答としては「夢のカケラを集めています!」ですかね。
で、笠原さんはなんて答えたんですか?」
「………」
キャストデビューを果たして二日目のことだった。

皆さんご存じかと思いますが、千葉県浦安市に建設された「東京ディズニーランド」は、1983年4月15日に開業。
約3000人のゲストとともに、“夢と魔法の王国の扉”が開かれました。
当時の社長は「私たちのやろうとしていることは、いわばサービス業です。この商売で一番大切なことは大衆の利益に合致すること、お客様に喜んでいただくことです。この気持ちがなければこの商売は決して成り立ちません。」と述べられました。
 
そういえば、私が初めてディズニーランド(TDL)へ行ったのは小学生の頃。
近所の小さな時計屋さんで買ってもらった、ミッキーマウスの腕時計に応募はがきが入っていて、なんとそれに当選したのです。
開業当時、チケットは簡単に入手できるわけもなく、非常にラッキーでした。 
当日は地下鉄東西線浦安駅からバスに乗り、ディズニーランドへ。
今のように便利な交通手段はありませんでした。
初めて見るシンデレラ城、ミッキーマウスにドナルドダック、、未だに大好きな“It’s A Small World”。最後の打上げ花火は圧巻、まさに夢と魔法の国でした。

本書に興味をお持ち頂けたら、今までのシリーズも是非ご紹介したいと思います。
2019年、シリーズ一作目『交通誘導員ヨレヨレ日記』柏耕一著では、交通誘導員の世界で体験した涙あり笑いあり。この仕事の現状を世に知らしめた勇気に拍手を送りたい。
 
また『派遣添乗員ヘトヘト日記』梅村達著では、旅行会社に日雇いされる添乗員が綴る裏話、トラブル、時にはお客様から感謝される感動話など、旅行業界に興味ある人にも読んでいただきたいです。
最近の新刊『住宅営業マンぺこぺこ日記』屋敷康蔵著の他にも、テゲテゲ、オロオロ、ヨボヨボ、はらはら、ぐるぐる、ヨレヨレ…と表装からもイメージできる、実話の職業エッセイ本が続いています。
どんな仕事にも裏方がいて、影の存在が表舞台を輝かせていることが、顕著に書かれています。
 
最後になりますが『ディズニーキャストざわざわ日記』を鞄に忍ばせ、次の旅行先へ行ったら、私はキャストに聞いてみたいです。
「何を集めているのですか?」
きっと答えは「…」。
この夏は、東京ディズニーリゾートへ!
 
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