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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.287『まちがいまちにようこそ』斉藤倫・うきまる 及川賢治 絵 /小峰書房

蔦屋書店・佐藤のオススメ『まちがいまちにようこそ』斉藤倫・うきまる  及川賢治 絵/小峰書房
 
 
当店児童書フロアには、お子さまに贈るプレゼントとして絵本をお求めになるお客様が、毎日何人もいらっしゃいます。
プレゼント選びは楽しいものですが、迷ってなかなか決められないということも、時にはあると思います。ご自身のお子さんやお孫さんであれば好みも分かりますが、たとえば相手のお子さんのことをよく知らない場合などは、特に悩ましいのではないでしょうか。
先方に喜んでもらえるものをと考える一方で、私たち店員としましては、贈り主であるお客さまご自身にも気に入ってもらえる作品を、ぜひ選んでいただきたい。その方がきっと気持ちのこもった贈りものになるように思うからです。
 
選ぶ基準に決まりはありませんが、迷うときにはまずはやはり、子どもが読んで笑顔になるような、楽しい絵本というのが良いのではないでしょうか。贈るからにはその子自身に喜んでもらうことが大事ではないかと思います。
さらにお子さん本人だけでなく、お家の方の反応というのも、気になるところかもしれません。せっかくの贈りものであるならば、出来れば、ラッピングを開けた瞬間心がときめくような、大人の目線で見てもちょっといいなと思うくらいのおしゃれなビジュアルのほうが望ましい。
それから、大人気のタイトルや定番のロングセラーは、もう読んでいたり持っていたりする可能性もあるので避けたほうが無難かも…。
 
少し前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する『まちがいまちにようこそ』は、そうしたプレゼントを選ぶ際に気になるあれこれの条件を、満たしてくれそうな作品のひとつとしても、ご提案したい絵本です。
 
テキストの作者は、詩人で児童文学作家でもある斉藤倫さんと、うきまるさんのお二人。『はるとあき』(小学館) 『のせのせせーの!』(ブロンズ新社) 『レミーさんのひきだし』(小学館)など、絵本ファンの心を掴む素敵な作品を、近年次々と手掛けておられる今注目のコンビです。
そして絵を担当されている及川賢治さんは、100%ORANGEの名義で絵本のほかイラスト・マンガと幅広く活躍されている人気の作家さん。ご存知のかたも多いのではないでしょうか。
 
「ああ なんて いい てんき いよいよ きょうは おひっこしです おとうさんと おかあさん いぬの ころと ぼく これから あたらしく すむ まちは「まちがいまち」って いうんだって!…」
 
『まちがいまちにようこそ』は、言葉あそびの絵本です。
ぼくが引っ越してきた町は、変なところがいっぱい。「えんとつ」が「えんびつ」になっていたり、「ホテル」が「ホタル」になっていたり…一文字違いのまちがいが、まちがいまちでは本当のことになってしまう。そのヘンテコでどこか楽しそうな町の様子が、及川賢治さんのポップな絵柄で遊び心いっぱいに描かれます。少し昔の海外絵本のような、ちょっとレトロな雰囲気を持つイラストがとてもかわいい。
 
言葉あそびの絵本は他にもいろいろ出版されていますが、例えば、ページごとに、だじゃれ言葉とそれが示す内容を一つ一つ絵で表すような、比較的シンプルな作品が多いように思います。『まちがいまちにようこそ』は、ストーリー仕立てになっていて、さらに一文字違いのまちがいの正解を当てるクイズとしても楽しめるのが特徴的。
また、絵本の形式として、言葉あそびの本でありながら、絵の面白さを楽しむことに重点を置いた作りになっているというところがとても目新しく感じます。
 
作者である斉藤倫さんとうきまるさんのコンビが作る絵本は、どれも今までなかったような柔軟な視点や着想が光っています。ああ面白いな素敵だなと、気持ちがパッと明るくなるような感動を与えてくれるこうした作品に触れることは、私たちの心をより生き生きとやわらかなものにしてくれるのではないでしょうか。そうした感動が心の中に蓄えられて栄養となり、子ども自身がワクワクするような発想を生む土壌を造るような気がします。
 
最後に、この絵本を実際読んでみてお伝えしたいと思ったことをひとつ。
「りす」と「いす」、「まくら」と「さくら」など、一文字違いのまちがいが全部で25個も出てきます。巻末に答え合わせのための表もありますが、はじめ文章を読んだだけでは、そのまちがいが、どういう言葉のだじゃれなのかということを、続けて全部推理するのはなかなか大変です。
そこでおすすめしたいのが、文章を読むより先に絵を見ること。各ページ青色の文字で記されているまちがい言葉について、何が一文字ちがいで間違われているのか、まずは描かれている絵をヒントにして答えを考えてから、お話を読んでみてください。楽しいですよ。プレゼントされる場合は、お子さんにそのことを言い添えてあげてみられては。詩人である斉藤倫さんの愉快で軽やかな文章も、そのほうがたっぷり味わえるように思います。
 
 

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