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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.189 『ミズノ本』村尾 隆介/ワニブックス

蔦屋書店・竺原のオススメ『ミズノ本』村尾 隆介/ワニブックス
 
 
運動用品でお馴染みの「ミズノ」こと美津濃株式会社。
特にスポーツに親しむ事がなくても、日本の日常に広く浸透したこの企業の製品は、皆さんのご家庭のどこかに一つ二つあるのではないだろうか。
 
本作ではそんなミズノの成り立ちから現在に至るまでの実に様々な取り組みの数々、それによって生まれたモノやコト、またミズノのプロダクトを愛用す(あるいはミズノという企業自体を愛す)る関係者とのエピソード等々が紹介されており、この会社による貢献や、人柄ならぬ会社柄を大いに窺い知れる内容になっている。
一企業にまつわる本というといわゆる「ビジネス書」的な効用を想像してしまいがちだが、
こちらの一冊は(勿論そうした側面もありつつも)ミズノという会社の知られざる魅力を、より多くの方々に親しみ易い表現と共に楽しんで頂けるものであると思う。
 
…まず目につくのはその表紙だ。
ミズノカラーと言っても良い程に印象のある濃いブルーに、ブランドロゴである「ランバード」マークが白抜きで飛び込んで来る(ちなみにランバードは、かつてシューズ製品のブランドとして独立して存在していたが、その後スポーツ製品のブランドマークとして統一されたそうだ。そんな細かな歴史のエピソード等も散りばめられている点が、本作を読み進める上で目の運びを軽やかにしてくれる)。
過去、クラブや部活動で野球やサッカーといったスポーツに触れて来た身としては、このロゴにはある種の格好良さめいた感覚を抱く部分もあり、思わず手に取らざるを得なかった次第である。
※余談だが、世に「文武両道」という言葉がある。
一般に学生に対する評価として使われる言葉ではあるが、「文」が勉強で「武」がスポーツという分け方だ。
ミズノはスポーツブランドなのでこれで言うと「武」に当たるが、一方でこの『ミズノ本』はその名の通り「本」であり、本は文武で言うと「文」に当たると思う。
そんな「文」である本の顔役とも呼べる表紙に「武」の象徴とも言えるミズノのロゴがデザインされている点に得も言われぬ特別感みたいなものを感じて、堪らなくなる所がある(2017年に日本語版が出版された同じくスポーツブランドとして知られる「NIKE」の創業者であるPhil Knightによる著作『SHOE DOG』も表紙にかの有名な「Swoosh」をあしらっていたが、その時にも同じ感覚を覚えた記憶がある。ちなみに『SHOE DOG』は通常版である黒色表紙版の他に限定版として白色表紙/グレー色表紙のものも販売していたが、これは良かった)。
 
ミズノの仕事は、何も自社のスポーツ用品だけではないという事を知れたのは嬉しかった。
運送会社のユニフォームをつくる、りんご農家専用の作業着をつくる、椅子やクッション等のインテリアをつくる、行政と連携して「まち」をつくる、ベトナムの学校に「体育」の文化をつくる。
 
垣根を超えた活動の数々が生み出す功績と人の輪が、これからも素晴らしい未来を生み出してくれるであろう事を予感させてくれた。
 
 
 
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