広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.90

蔦屋書店・神崎のオススメ『「カッコいい」とは何か』 平野啓一郎著/講談社現代新書

 

 

カッコいい!

 

すれ違った人や偶然入り込んだ空間、何気なく手にしたものに、思わずこう呟いてしまうことありますよね。でも「どこが?」「何が?」と同意を得られないことが結構あります。

「カッコいい」って一体、何でしょう。普段、何気なく使っていますが、人によって感じ方は違います。基準や定義はあるのでしょうか。

 

この疑問に真正面から切り込んだのが小説家の平野啓一郎氏です。本書ではまず、「カッコいい」の言葉の歴史を紐解くことから始まります。そして音楽やアート、文学、ファッションなど、さまざまな分野について検証・考察が重ねられていきます。

 

子どもの頃、悪役を倒すヒーローに憧れ、真似をした記憶がありますか。本書では「カッコいい」の条件の一つに対象への同化・模倣願望が挙げられています。

さらに鳥肌が立つなど、非日常的な生理的興奮としての「しびれる」という体感がそこに加わることが重要としています。

 

何に「しびれる」か一人一人違うように、何を「カッコいい」と感じるかも千差万別です。平野氏は次のように記しています。

 

誰を「カッコいい」と思うかこそが私たち一人一人の個性となる。

「カッコいい」人を探すというのは、「自分探し」である。

 

「あ、カッコいい!」の呟きには、こうありたい願う自分の本質が隠れているのかもしれません。そんな経験を繰り返しながら自分探しを続け、いつかゾクゾクするような、鳥肌が立つような「しびれる」対象に出会います。そこからその対象に同化するための努力、自分磨きが始まるのでしょう。

 

読み終えて、「これって一歩間違えば自己満足では」と感じました。

けれど、自分が本当になりたい「カッコいい」を見つけ、その対象に近づき、同化するために努力して磨き上げた「カッコいい」自分は、きっと最高に「カッコいい!」に違いありません。

 

 

 

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