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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.193 『アメリカの<周縁>をあるく』中村 寛 松尾 眞/平凡社

蔦屋書店・竺原のオススメ『アメリカの<周縁>をあるく』中村 寛   松尾 眞/平凡社
 
 
下調べもなく、地図も持たず、手ぶらで歩くフィールドワーク。
舞台となるのは“周縁”のアメリカ。
旅するのは、文化人類学者とアーティストのコンビである。
 
文化人類学者/中村寛氏は多摩美術大学教授でもあり、また「人間学工房」という文化の担い手が集まる“場”の代表でもある。いくつもの著作があるが、「周縁」という言葉を一つのキーワードとして、そこにおける反暴力/脱暴力の試みや芸術/文化運動/ソーシャル・デザインなどのテーマに取り組まれている。
※「人間学工房」を通じた文化運動については下記リンクをご参照下さい
https://www.ningengakukobo.com/
 
アーティスト/松尾眞氏は、現在ニューヨークを拠点に写真家/映像作家/音楽家といった多面的な活動をされており、直近では2021年のサンダンス映画祭(アメリカ/ユタ州で毎年1月頃に行われる、俳優のロバート・レッドフォードが開始した映画祭)のアルフレッド・P・スローン賞を受賞した『Son of Monarchs』に、照明技師として参加されたそうだ。
 
そんなお二人が2011年から2018年まで、アメリカのストリートをはじめとした実に様々な場所で出会った現地の方々との対話を通じて得た紀行とスナップで構成されているのが本作である。
 
いわゆる“フィールドワーク”が基になった読み物というのは数多くある。
一方でこの作品の特徴は、まず本作が上述のお二人による作品であるという点だ。
一人で歩いただけでは(もしかしたら)目が向かないないかも知れない、そしてもっと多い人数だと(やはりもしかすると)見落としてしまうかも知れない事柄に、実に丁度良く反応出来るのが二人という人数なのかも、と思わせてくれる。
そんな痒い所に手が届く感覚が文章から感ぜられる。
 
本作で語られているのは決して楽しかったり嬉しかったりするトピックばかりではない。
けれどもこのお二人に拠って捉えられ、語られる事でそれらの問題が実に前向きに、触れやすい形で顕在化されている様に感じる(それだけに、読者である我々にとってすれば自分の中で噛み砕いて昇華し易くもなり、読み進める上で有難い事この上ない訳である)。
またお二人のお力に拠る所は勿論あるにせよ、そもそも話を伺った現地の人々の人間性もその一因となっているのではないかと思う。
つまり、実に様々な社会的な問題を抱えつつも、それも受け容れて日々を過ごしているからこそ、そうした話題も悲壮感が漂う事なく我々の心に届くのではないか、という事である。
 
この一冊は、アメリカ(と言っても非常に広域ではあるが)が孕む多くの問題を即時に解決に導いてくれる訳ではないだろう。
しかし、アメリカの紛う方なきリアルな姿を提示し、それに対して考えるきっかけを与えてくれる事は間違いない。
皆様に於かれても、そうした視点で本作をご一読頂ければ幸いに思う。
 
 
 
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