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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.249『心をととのえるスヌーピー』チャールズM.シュルツ 枡野俊明 監修 谷川俊太郎 訳/光文社

蔦屋書店・古河のオススメ『心をととのえるスヌーピー』チャールズM.シュルツ 枡野俊明 監修 谷川俊太郎 訳/光文社
 
 
日常に追われ、ざわめいている心、落ち着かない自分がいます。
スピードを求められ、自由の中にも制限のある世の中。
一年の中で、一瞬でも自分に向き合える時間を作りたいものです。
 
日本の心の原点である京都から生まれた禅の教え。
心をととのえるとは?
 
本書では、スヌーピーの産みの親、チャールズM.シュルツ氏が描いたPEANUTSシリーズコミックの名言を、枡野俊明さんが禅の教えと融合させています。
アメリカの思想と日本の心が作り上げる意外な世界観は、心をととのえるためのヒントを読み解いていきます。
 
監修を務められた枡野俊明さんは、庭園デザイナーでもあり、曹洞宗・徳雄山・建功寺第18代住職でもあります。
開き直る思考、折れない心を育てる、放っておく力、心配事の9割は~などなど、多々ある著書を読み、気持ちが軽くなった方もいらっしゃると思います。
共通していることは、鎌倉時代初期に宗派として広まった禅の教えが礎になっている、ということです。
昔から伝わる禅語は変わらないのに、時代の流れとともに人の価値観や環境が変わることで、人の悩みが変化します。枡野さんは、今必要な禅語を用い、その時代に合う生き方を導いています。
 

そもそも禅語はどこか遠い存在ではなく、わりと身近なところで目にします。
ご親戚やお友達のお家に招かれた和室や、旅館で通して頂いた和室(床の間)に飾られた掛軸に、筆で書かれた言葉を見たことがあるのでは?
 
茶の湯と禅は繋がりが深く、この掛軸にも通じます。
茶道では、亭主(賓客を迎える側)がどのような想いを込めたのか、その謎解きの鍵になるのが、床の間に飾られた掛軸の禅語です。
 
茶会に招かれた賓客は、茶室に入ると、まず床の間の掛軸に向かい、禅語を鑑賞します。
今日の茶席に、亭主の込めた思いが記されているからです。
言葉の意味については、お茶会の席で正客(賓客のリーダー的存在)が亭主にお尋ねします。
禅語は、茶の湯のベースにある禅の精神や、亭主のもてなしの心をあらわすものとして、千利休以降大切に考えられてきました。

例えば、本書に出てくる禅語(禅の言葉)。
 
「和敬清寂」(わけいせいじゃく)
亭主と賓客が、互いにの心を和らげ慎み敬い、茶会の雰囲気を清らかな状態に保つことを意味します。
同じ時間、空間を共有するスヌーピー、ウッドストックのように、ありのままを尊重することで、心地良い関係性が保てることがコミックの一コマから読み取れます。
敬う心が、温かい人間関係を生み出すのでしょうね。

「花枝自短長」(かしおのずからたんちょうあり)
自然の摂理の中に真実の声を聴くこと。そして、同じように育てた花も、つけた枝には長短あり、全体のバランスや美が保たれることを意味します。
人の個性も十人十色です。
コミックでは、チャーリーブラウンとライナス、スヌーピーの涼みかたの違いから、「人それぞれのやり方ってものがあるさ」と。あなたはこの世でたった一つの存在、自分だけの個性を失うことはもったいない、と説いています。
 

また、スヌーピーに纏わる本は多々発刊されていますが、翻訳に携わっている詩人の谷川俊太郎さんは、シュルツ氏の描いた当時の世界情勢も加味していることがうかがえます。
 
実は谷川俊太郎さんのお父様は、哲学者の谷川徹三さんです。
カントの翻訳や、文芸、美術、宗教、思想など幅広い評論活動を行っていました。
若い時から研鑽を重ねた茶道についても、終戦直後昭和20年に「茶の美学」を発刊し、禅と密接な関係にある茶道を、誰にでも理解できるよう解説しています。
 
谷川俊太郎さんは、コミックの優しい言葉や、「…」などの“間”を大切に、余白の部分は読み手側に委ねるような、そんな無の空間を作り出しています。
 
禅の心を持つピーナッツキャラクタたち。
本書と出会える縁と時間が、心をととのえ、日本の心の原点に立ち返るきっかけになると思います。
 
 
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