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広島 蔦屋書店が選ぶ本 VOL.300『よしろう、かつき、なみ、うらら、』北原千代/思潮社

蔦屋書店・植野のオススメ『よしろう、かつき、なみ、うらら、』北原千代/思潮社
 
 
すきな詩集がもうひとつふえました。 『よしろう、かつき、なみ、うらら、』 唄っているような、ひとりごとのような、 遠くから名前を呼んでるみたいな、そんなタイトルの詩集です。
 
その人の見ている風景は、ゆるゆると陽炎のようにつかみどころのなく、ちょうど人肌くらいのあたたかさ。
たゆたう言葉に身をまかせていると ざらざらとした気持ちは泡になり 心の底に柔らかい光が射してゆきます。

 
弱い者への慈しみ、
愛しい人への一途な想いは絶えることなく
傍にある死を静かに見つめながら、それでも生きることへの希望をひそやかに持ち続けようと編まれたうたは美しい。

 
詩集は2章に分かれています。
どちらも北原さんの歩んできた道。
咲き誇る花の香り、青空、遠くから聞こえる声 弦の冷たさ、干し草の匂い、老いてゆく母。 寂しさも愛しさも傷みもすべて感じるままを言葉に置き換えて、感情をこのように言葉 にするしかなかったのだと... 言葉に救いを求めるような、研ぎ澄まされた感性に、私もそこに立ち同じ風景の中で見 ているような経験をするのです。
それは清々しく、優しい時間。 放たれた言葉たちはページをめくるたびにきらきらと私の心に降り注ぎます。

 
すべてのことをあるがままに、そこにいることが決まっていたことみたいに自然に、 時々どうにもならないことは、詩人のように言葉に託してみよう。 読み終わると、心も身体もふわりとする。 また明日、またね、と唄うような声が聞こえてきそうな、そんな詩集です。
 
 

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